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【レポート】花巻の宝を「通い神楽」で継承 世界遺産指定の「早池峰大償神楽」を商品化

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 花巻温泉㈱は、岩手県花巻市の宝であり500年以上の伝統を持つ、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録された早池峰大償(おおつぐない)神楽」の持続的な伝承につなげる持続可能なインバウンド向けコンテンツ造成事業に取り組んでいる。観光庁の補助事業の一環として行われ、産官学が事業に参画。人口減で存続の危機にある神楽を「通い」をキーワードに、再構築モデルの確立や公演鑑賞だけでない商品化、国内外からの誘客拡大で課題解決につなげる。今回は事業の概要や、国内外向けに販売した旅行商品の成果などを紹介する。

参加者が稽古の成果を披露
参加者が稽古の成果を披露

 同事業は、花巻市と慶應義塾大学SFC研究所の連携による「花巻市地域おこし研究所」や、大償神楽保存会、花巻観光協会、JR東日本盛岡支社、JR東日本びゅうツーリズム&セールス(VTS)、創造旅行社(台湾)、慶應義塾大学SFC研究所、観光産業メディア「ツーリズムメディアサービス」を運営するツーリンクス、トラベルニュース社が連携して実施。

 事業では、花巻市の民俗芸能で、ユネスコ無形文化遺産である「早池峰(はやちね)神楽/大償神楽」の観光コンテンツ化や、民俗芸能の存続、後継者の育成を行う神楽体験ツアーの造成などを行っている。

 旅行商品は、花巻市地域おこし研究所が研究開発した民俗芸能の新たな演者確保の形である集落外から通い大償神楽の習得・演者確保を目指す「通い神楽」の概念を商品化し、個人プラン、団体ツアーを用意した。
 本事業は、観光庁が23年度に行う「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の一環として実施している。

個人型旅行「通い神楽体験プラン」 参加者が後継者不足を理解

 JR東日本びゅうツーリズム&セールス(VTS)は10月27~28日、12月8~9日、個人型旅行プラン「ユネスコ無形文化遺産『大償神楽』を通って体験プラン」を催行した。10月は台湾から2人、12月は8人(台湾2人、国内6人)が参加。

 ツアーは、JR東日本びゅうダイナミックレールパック商品で、往復JRと花巻温泉宿泊、大償神楽体験、タクシー送迎(一部)がセットになったプラン。

 参加者は、50歳以上が多かった。告知は主に首都圏で行われたが、青森県からの参加者もいた。台湾人と日本人が混在した回では、参加組ごとに保存会員による個別指導を受けながら通しでの稽古も一緒に行い、言葉の壁を超えて体験時間を楽しんでいた。

大償神楽講座
大償神楽講座

 ツアーでは、権現様へのお参りをした後に保存会による説明、大償神楽講座などを実施。神楽体験は3時間半行われた。参加者は、大償神楽の後継者不足の現状や、「通い神楽」という概念を研究して後継者不足解消に努めていることへの理解を深めた。

楽器体験
楽器体験

 VTS担当者は、「保存会との交流で『民俗芸能=敷居が高い』という印象を打ち壊せた」と手応えを話す。今後は言語対応、周知方法の見直しに取り組む。

大償神楽のお手本を鑑賞
大償神楽のお手本を鑑賞

団体ツアー「舞体験+公演鑑賞2日間」 一気通貫で神楽を体験

 JR東日本びゅうツーリズム&セールス(VTS)は11月11、12日、団体ツアー「花巻市ユネスコ無形文化遺産 500年以上の歴史を持つ『大償神楽』の舞体験と『大迫神楽の日』公演観賞2日間」を催行した。国内から12人が参加。大償神楽を①学ぶ②実践③鑑賞―の一気通貫の体験で理解や関心の深度化を図るとともに大償神楽との関係性継続のきっかけを作った。

参加者は大償神楽保存会員に合わせて舞を披露
参加者は大償神楽保存会員に合わせて舞を披露

 ツアーは、民俗芸能の後継者不足の解決を目指す「通い神楽」という概念を大償神楽に実装し、旅行商品化したもの。大償神楽の基礎を専門家が教える講座のほか、保存会員が教える神楽(しんがく)体験、「神楽の日」での大償神楽鑑賞を行った。このほか、地域が誇る温泉地である花巻温泉郷・ホテル花巻での宿泊や、地元ワイナリー「エーデルワイン」に立ち寄った。

「大迫神楽の日」を鑑賞
「大迫神楽の日」を鑑賞

 参加者は、60歳以上の1人参加が多く、テーマに関心を持った人が多かった。VTS担当者は、「大償神楽など民俗芸能が持つ後継者不足の課題に理解をいただけた」と話す。

ワイン工場を見学
ワイン工場を見学

 今後は、継続的な交流への仕組みづくりや受け入れ体制整備、インバウンドや若年層へのアプローチを検討する。

ホテル花巻で宿泊
ホテル花巻で宿泊

「大償神楽」ユネスコ無形文化遺産 500年以上前から伝わる民俗芸能

 大償(おおつぐない)神楽は、岩手県花巻市大迫町の大償地区に伝承する神楽で、集落内の大償神社の例祭に奉納されている。早池峰神社の奉納神楽である岳(たけ)神楽と同じ起源を持つと言われ、二つを総称して「早池峰神楽」と呼ばれている。

大償神楽
大償神楽

 早池峰神楽の伝承由来は、残された伝授書などから、500年以上の伝統を持つ古い神楽と言われている。早池峰山を霊場とする山伏が代々舞い継ぎ、祈祷の型などを神楽の中に取り入れていることから「山伏神楽」とも呼ばれている。岳と大償は「表裏一体」の兄弟神楽と言われ、大償の山神面は口を開けた「ア」、岳の面が口を閉じた「ウン」の型をしている。

 早池峰神楽は、舞の中に「能」大成以前の古い民間芸能の要素を残すことから、中世芸能の香りを伝える稀有な神楽として、1976年には国の重要無形民俗文化遺産、2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録されている。

 大償神楽の演目は40番以上から成り立ち、最後には必ず「権現舞」を舞う。

 公演は、大償神社例大祭(9月)、舞納め(12月)、舞初め(1月)などで鑑賞できる。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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