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旅を作る仕事 ~やすらぎの空間は一夜の眠りを約束してくれます~

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<一枚の和紙の放つ、障子ごしの月明りの美しさ。優しさを包み込むように、やすらぎの空間は一夜の眠りを約束してくれます。私たちはモダンというエッセンスを無理なく溶け込ませ、美しい空間づくりのお手伝いをいたします>

これは私達<AO STYLE>公式WEBサイトにある冒頭の一文です。

 主に宿泊業のインテリアデザインを行っているためでしょうか。どことなく旅館をイメージさせるこの文を久しぶりに読んでみて、旅に出かけたくなってきました。

(見出しの画像:高野山・山荘 天の里)

 私達は<旅を作る仕事>をしています。

 かなりざっくりとした言い方ですが(笑)、旅の中で<宿泊する>という項目はとても大切だと感じています。また<宿泊>ほどお手頃で特別な体験はなかなか無いのではとも思います。

 宿は、その宿の考える最高の<衣・食・住>をお客様に提供し喜んでいただく。

 そんな宿を作る私の仕事は、旅を作る仕事だと思うのです。

 仕事をご依頼いただくのが全国の宿泊施設のため、年間200日以上は旅をする生活です。

 しかし少しも飽きることはありません。車窓から眺める風景や各地の駅弁など楽しみは尽きませんが、やはり私の興味は<宿>

 仕事先はもちろん、合間を見つけてはさまざま宿に宿泊します。ゲストハウスやカプセルホテル、外資系ホテル、グランピング、そして旅館、、、どの宿も<衣・食・住>において必ず得るものがあり、仕事の糧となります。

             (金澤湯涌温泉・百楽荘)

 宿の<>は浴衣や館内着はもちろん、広い意味ではリネンやお座布団など肌で触れるもの全般でしょうか。夕食に出されたお品書きの紙の質感、ボディソープの柔らかな泡やしっとりとしたお湯、スリッパの履き心地など無意識のうちに心地よい滞在だったという感情に導いてくれる大切な存在です。

 <>はいうまでもなく、誰もが楽しめる大きな要素です。舌で味わい、目で味わう、できればその季節のその土地のものを、郷土の調理法でいただきたい。泊食分離が進んでも、日本人は食事付きの宿を好む傾向が強くあり、宿を構成する大きな柱のひとつです。

 ダイニングなどの建築デザイン以外に、テーブルコーディネート、メニューの組み立て、器の選定などのお手伝いも私達の仕事です。

(天童温泉・ほほえみの宿 滝の湯)

 そして<>は住む、暮らすを広く捉えると<居心地よく過ごせる空間>のこと。

 快適な機能はもちろんですが、異国のホテルの水回りが少し不自由でも、それが可愛らしく感じて魅力となるように、この居心地の良さは人によってさまざまです。

 障子を通すことで気づく柔らかな光、風の流れ方、目が覚めた時に最初に目にする天井の意匠、ずっと眺めていたい優しい庭。

 その土地の文化、芸能や工芸・民芸を生かし、コンセプトに合わせて空間を作り上げていく。

 正解のない仕事ですが、たくさんの宿のご依頼を頂き、現在に至っています。

 この旅を作る私の仕事を通して感じたこと、私の住む飛騨高山や、運営する小さな宿のこと、などのんびり綴っていきたいと思います。

(つづく)

寄稿者 住百合子(すみ・ゆりこ)AO STYLEコーディネーター

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