日本旅行業協会(JATA)は2025年1月9日、新春記者会見を開き、髙橋広行会長(JTB会長)が24年の振り返りや25年の方針を語った。髙橋会長は24年を「旅行マーケットが大きく飛躍した一年だった」と振り返る一方で、海外旅行の回復が遅れ、コロナ禍前の7割弱に留まる現状に課題感を示した。2025年については、「今年こそ海外旅行完全復活」を掲げた。コロナ禍前のアウトバウンド2000万人を目指す。
髙橋会長は24年の旅行マーケットについて、訪日旅行が好調に推移し、コロナ禍前の2019年を人数・消費額ともに大きく上回る見込みであるほか、国内旅行も宿泊ベースでコロナ前の水準まで回復していることを報告。海外旅行は想定より回復が遅れていることから、25年は①高付加価値の商品展開・2国間の相互交流拡大②海外旅行販売拡大に向けた教育支援③若者の海外渡航促進―を3本柱に完全復活へ取り組みを加速する。
海外旅行の復活に向けては、若者の海外渡航増加に向けた支援が必要であることを訴えながら、政府への要望として、初めて海外旅行をする若者へのパスポート無料配布のほか、公立校の修学旅行代金の上限見直しなどを含めた要望書を、全国旅行業協会(ANTA)とともに提出したことを発表した。髙橋会長は、「国際舞台で活躍できる人材育成、国の国際競争力の観点からも国は問題として受け止めなければならない」と言及した。今後、JATAでは昨年も実施した「今こそ!海外キャンペーン」の第2弾を実施する予定。
国内旅行については、25年に2820万人の来場者が見込まれる大阪・関西万博が開かれることから、「千載一遇のビジネスチャンス」と捉えて万博に観光商品を組み込んだ商品展開を計画する。旅行者の地方分散の流れつくり、地域経済への貢献を目指す。
訪日旅行については、オーバーツーリズム対策に取り組む。対策としては、アドベンチャーツーリズムの普及や、地方分散に向けた新たな観光ルートの整備、平日に旅行ができるラーニングとバケーションを掛け合わせた「ラーケーション」制度の普及などを実施する。髙橋会長は、特にラーケーションの普及について、 「働き方改革の一環として、23年9月から導入されたラーケーション制度だが、全国の自治体に広まっている。平日の旅行需要が増加し、需要の分散化・平準化が図れ、雇用の拡大や安定化につながる。マーケットの拡大、地方活性化の起爆剤につながる」と強調した。
日本観光振興協会と日本政府観光局(JNTO)と毎年開催しているツーリズムEXPOジャパンについても紹介。25年は9月に初めて愛知県で「ツーリズムEXPOジャパン愛知・中部北陸」として開く。中部・北陸の魅力を国内外に発信しながら、アウトバウンド需要喚起、の北陸への人流創出、能登半島地震の被災地への支援へとつなげる。
このほか、コロナ禍後に続く旅行会社の不正問題に関連し、コンプライアンス遵守が不可欠であることを訴えた。
取材 ツーリズムメディアサービス編集部