沖縄本島から411km台湾までは277kmと、国内より異国の方が近い八重山諸島の中心が石垣島だ。周囲には、西表島や竹富島、小浜島などの県内でも有数のリゾート島が周りを囲む。そのため、石垣島は扇の要に位置する。
離島観光は、発着点が限られるため、「要」部分のオペレーションが命と言われる。本州内の離島はそのほとんどが、船や航空機、道路といった多岐に渡る方法で入島できる。一方、ここ八重山は、石垣港がすべての発着点だ。それ故、西表島などの行政機関である竹富町役場は石垣市内に立地する。
海外の離島観光地は、「要」となる「ハブ」が明確であり、オペレーションも最適化されている。しかし、石垣島は、海上輸送を行なう会社が乱立していた。その結果、各社の観光船が同時刻に出発するといった無意味な戦いが繰り返されていた。
インフラの変化が、経営の効率化につながる
2013年3月に石垣島に新しい空港が供用開始される。滑走路が長くなり航空機の大型化が進められた。輸送能力が高まると同時に、海上輸送力のコントロールが必要となった。そのため、乱立していた船会社による共同運航による効率化が実現する。乗船効率が高まり、各社の経営改善につながるという副産物も生まれた。また、海外からのクルーズ船の来航数も急上昇。2024年には、寄港数は年間120回、約30万人の外国人が入島している。こちらも入港後の貸切バスなどの交通機関操配も重要になっている。
昨今「ワン・ストップ・オペレーション」が重要とされるようになった。お客さまにとっての利便性が高まるだけでなく、受け入れる側にもメリットは大きい。自社だけが儲かるのではなく、重きを置くべきことは地域全体が潤うこと。この仕組みが成り立つのは、日本では唯一、石垣港から発着する八重山諸島だけだ。
この場所で、そこに従事する人々と語り合えたことは、学びの深いモノ・コトに触れる経験となった。
(2014.04.19.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長