高貴な色と言われる紫、江戸時代後期、現在の堀切菖蒲園周辺で再現された花菖蒲にも、その色が取り入れられている。京都を中心に流行した赤みのある「京紫」に対して「江戸紫」は青みを含む色だ。江戸百景にも数えられる花菖蒲は、発祥の地と言われる葛飾区の堀切菖蒲園が特に有名である。また、葛飾区と埼玉県の都県境の水元公園、江東区の清澄公園や文京区の小石川後楽園なども多くのお客さまが訪れる名所である。
しかし、今回は、編集部が独断と偏見で選定した入場無料の東京三大花菖蒲園をご紹介する。
葛飾区「堀切水辺公園」
堀切菖蒲園から荒川土手に上がると、河川敷の一角に花菖蒲が咲く。数はさほど多くはないが、そばには、堀切菖蒲園船着場もある。そのため、川からやって来るお客さまも増えている。

葛飾区は、「あらかわ花いっぱい運動」という取り組みを進めている自治体だ。区内には花菖蒲田をはじめ、さまざまな花畑がある。その一つがこの堀切水辺公園の花菖蒲田だ。そして、継続して地元の方が大切に管理している。毎年5月の終わりから6月中旬まで花菖蒲が目を楽しませてくれる。
また、川越しに東京スカイツリーも見えるために、菖蒲の花々からスカイツリーが咲いているような映え方もSNSでにぎわいを見せている。

足立区「しょうぶ沼公園」
かつて、花菖蒲の群生地だった足立区谷中2丁目周辺、ここにしょうぶ沼公園は位置している。これまで、東京メトロ千代田線の車庫はあった。しかし、駅がなかったために、この公園に赴くお客さまは、地元住民のみであった。

北綾瀬駅は1979年に開業するが、2019年に輸送密度を高め、駅が改装された。人口密度が高まったことを相まって、この周辺は一躍人気となっている。
園内に約140品種8,100株の花菖蒲が植栽。6月初旬の週末には、見頃の時期に合わせて「しょうぶまつり」(2025年は6月7日と8日)や夜間ライトアップが行われる。
また、6月24日には、「環七」をはさんだ向かい側に三井ショッピングパークららテラス北綾瀬も開業する。新たな改札口は、しょうぶ沼公園に直結している。交通至便であり、ほのぼのとした菖蒲田は、とても楽しみな場所に変化していくように思える。

江戸川区「小岩菖蒲園」
都県境を流れる江戸川は、その河川敷が広大である。かつては、野球やサッカーなどの競技場として活用されていた。しかし、1982年に区民から寄贈された花菖蒲を植栽し、江戸川区は回遊式の庭園を作った。

約4,900㎡の菖蒲田には、約50,000本の花菖蒲が咲き誇る。こちらも5月から6月にかけて、あじさいなどの花々も同時に咲く。京成電車の江戸川駅にも近く、都会のオアシスとして名所の一つになり始めた。
京成電車の橋梁やJR総武線の橋梁も江戸川を渡る場所、列車の音が軽やかに流れると時間もゆっくりと感じるから不思議である。

6月の声を聞くと、一気に夏の天候となる。湿気や暑さに負けそうになるが、花菖蒲やあじさいなど、初夏の花々も目に麗しいものだ。来週には、梅雨入りとも伝わってくるが、是非とも、その前に訪れてもらいたい東京の景観だ。週末は良い天気のようだ。
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長