都会の冬は、乾いた空気が建物の輪郭を驚くほど鮮明に際立たせます。夕闇が迫る中、空を切り裂くようなビルの鋭角な稜線。この無機質でシャープな線の重なりに私はいつも都会の造形美を感じます。
若い頃大学に通うため初めて東京の土を踏んだ冬の記憶が鮮やかに蘇ります。見知らぬ街の冷たい風に吹かれながら歩いたあの感覚。厳しくも凛とした寒さは、これから始まる生活への期待と重なり不思議と心地よいものでした。 今も鋭角の稜線の中で冬の東京の都心を歩くのが好きです。肌を刺す冷気の中を歩くと自分が今東京にいるんだということを身体で再確認している感じがします。冬夕焼けに染まるビルは人工的ですが大自然に匹敵する美しさを持っていると思います。