フィジーの観光産業は、観光客数の回復を背景に「量」から「質」への転換を加速させている。リゾート施設の大規模投資や体験コンテンツの高度化、サステナビリティを軸とした施策を通じ、高付加価値型観光へのシフトが進んでいる。
2025年の年間訪問者数は前年比4%増の約93万人と過去最高を更新。旅行消費額は33億フィジー・ドルに達し、今年も年初から堅調な成長を維持している。
市場戦略としては、グローバル向けに「幸せあふれるフィジーへ」、日本市場では「Be Fiji」など感情価値に訴えるブランド施策を展開。旅行業界向けには120万人の旅行代理店にリーチするプロモーションを実施し、販売基盤の強化を図っている。
観光分野では、MICE需要が前年比15%増と大きく伸長したほか、ウェディングやハネムーン、ラグジュアリー層の需要も堅調に推移。平均滞在日数も9.2泊に延びており、滞在型観光の深化が進んでいる。一方で、閑散期(2~5月、10~11月)の需要創出や新興市場の開拓が課題とされており、年間を通じた収益最大化に向けた取り組みが求められている。
供給面では、デナラウ島を中心に数千万ドル規模のホテル拡張や新規開発が進行。ウェルネス施設の刷新やエコリゾート、グランピングなど、多様な滞在ニーズに対応する施設整備が進んでいる。また、電動ボートによる低環境負荷型ツアーや養蜂体験施設の整備など、環境配慮型の新体験も拡充。地域コミュニティと連携した観光開発やサンゴ保全、植林活動など、観光と環境・社会価値を両立させる取り組みも広がっている。
航空分野では、フィジー航空が国際入国者の7割以上を担い、国内線の機材更新により離島アクセスの向上も進むなど、インフラ面でも受入体制の強化が図られている。
フィジーは今後、観光による経済効果を地域全体に波及させる持続可能なモデルを構築しながら、世界市場における競争力の強化を目指す。高付加価値化とサステナビリティを軸とした同国の観光戦略は、成熟市場における新たな方向性として注目される。