オーバーツーリズムの話題をテレビのニュースでもよく見るようになった。先日のワイドショーでは、代表的な観光地で起きていることについて解説していた。
京都市内を循環する路線バスは慢性的に混みあっている。特に、有名観光スポットを経由する路線は大型の荷物を抱えたインバウンドが目立つ。そして、画面では市民らしき人がマイクに向かって「迷惑だ」と怒っている。
また、スラムダンクの聖地として有名な「鎌倉高校前」の踏切は、昔に比べて「ファン」が増え過ぎたようだ。小生は10年前に神奈川県庁の観光課に居て、この聖地巡りのことを知った時は微笑ましさを感じた。しかし、電車が通過するタイミングに合わせて写真を撮ろうと、車道に飛び出す今の彼らには危なさを感じてしまう。
番組は、インバウンドが増え過ぎて、地域に弊害が起き始めている、そのため、早急に「観光公害」の対策を打たねばならない、という分りやすい結論で終わった。
しかしながら、オーバーツーリズムの問題は「誘客」か「規制」かの2択の議論ではない。地域のマネジメント(合意形成)をいかにして実現するかが大切なのだ。
合意なきまま進む、イベントの有料催事化
最近、本質的によく似ているなぁと思ったのが花火大会の有料化がもたらした議論だ。
今年の夏、私が現在住んでいる山陰で開催された「松江水郷祭2023」など、全国各地で花火大会を有料化する取組みが堰を切ったように始まった。主催する市町が決断した理由はほぼ同様だ。
それは、観光連盟等の従来からの地元スポンサー頼みでは、大会の運営に掛かる資金を確保することが年々厳しくなっているとのこと。
地元メディアがニュースとしてとりあげたところ、早速、上ってきたのが「住んでいる自分たちがゆっくりいい場所で見れないのはおかしい」という地元住民の声。一方で、お金を払って見に来た観光客は当然の権利を主張しているだけなので咬み合うはずもない。
花火大会はあっという間に終わり、地元新聞が話題として取り上げることもなくなった。
花火大会をこれまで通りの郷土の「お祭り」と捉えて地元で支えていくのか、全部とは言わないまでも外貨を獲得するための「イベント」として割り切っていくのか。
観光を「地域の宝」として活かすのは、住民の覚悟次第なのだと思う。
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=31
寄稿者 福井善朗(ふくい・よしろう) 山陰インバウンド機構 前 代表理事