こんにちは。東京山側DMC みちくさの達人サクちゃんです。
今回(7月10-11日)訪れたのは、東京都の「誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業ワークショップ・モニターツアー」の島しょ部開催地、八丈島。昨年の新島開催に続いて、2回目の参加です。
滞在した八丈ビューホテル(https://www.hachijo-v.co.jp/)は客室45部屋中なんと20部屋がバリアフリー対応ということで、アクセシブルツーリズムにも力を入れた施設でした。ワークショップ・モニターツアーの詳細はユニバーサルツーリズムアドバイザー・渕山知弘氏のレポートをご覧ください。 👉 渕山氏レポートはこちら
さて、プログラムが行われるのは日中ですが、私の“みちくさ時間”はその外。夜21時から翌朝9時までの自由時間をフル活用し、EVカーを無人レンタルして、夜と夜明け前に八丈島の東側を巡りました。今回もみちくさの達人目線で見た島の記録(log)をお伝えします。
🔥 八丈島は「海だけじゃない」、“二つの火山が出会った島”
この島、じつは二つの異なる火山によってできているんです。
- 東側:三原山火山(標高701m) → 約10万年前に活動を開始。最後の噴火は約3,700年前。現在は深く浸食が進み、谷・滝・温泉が点在。
- 西側:八丈富士(標高854m) → 比較的新しい成層火山。最終噴火は1605年。火山体は厚く、湧水や温泉は乏しい。
この“古い火山”と“新しい火山”の組み合わせこそが、八丈島の豊かな自然環境と多様な地形の秘密です。

詳しくは、産業技術総合研究所(AIST)による八丈島火山地質図(1:25,000)をご参照ください。
🌅 夜明けのフィールドワーク:東の火山をめぐる「鉱物と水の旅」
▶ 1. 石積ヶ鼻:火山の宝石が眠る海岸
最初に向かったのは、北西部の石積ヶ鼻。ここでは、玄武岩の溶岩中に埋もれた鉱物結晶が露出し、朝日に照らされてキラキラと輝きます。
- 黄緑のカンラン石(ペリドット)
- 赤みを帯びた灰長石(日長石/サンストーン)
- 黒曜石のような火山ガラス質の表面
一見すると黒い岩ばかりの海岸ですが、よく観察すれば、火山が生んだ天然の標本箱のような宝石のような断片が見つかる場所です。

▶ 2. 汐間の滝:最古の火山地層に落ちる滝
次に訪れたのは汐間の滝。高さは約70m。風に吹き上げられるような細い2本の水の筋が、古期東山火山の崖を海へと流れ落ちていきます。波の浸食が進む断崖と、滝の存在が際立つダイナミックな風景。サーファーの姿もあり、“海に落ちる滝”という表現がぴったりです。

▶ 3. 裏見ヶ滝:滝を裏から見るという体験
鬱蒼とした谷筋の奥にある裏見ヶ滝。その名の通り、滝の裏側を通ることができる珍しい構造で、さらに多段の流れが続いているようでした(全体で約35m)。
背後の崖では、火砕流やスコリア、火山灰などが複雑に堆積した火山堆積層が露出し、まさに旧三原火山の“断面”を歩いている感覚が得られます。
正体は解明できませんでしたが、森全体に淡い良い香りが漂っていました。

▶ 4. 硫黄沼と唐滝:地熱と湧水が息づく谷
最後に訪れたのは、硫黄に全体が着色された谷。完新世の中之郷溶岩流によって形成された比較的新しい地形です。
- 硫黄沼:茶褐色の湧水が溜まり、鉱物沈殿が見られる場所。
- 唐滝:約36mの直瀑。滝壺にはアカハライモリが多数生息。切り立った一枚岩の崖が美しく、火山の若さを感じる地形でした。

♨ 温泉の数が違うのは“火山の年齢差”から
八丈島では、東側(三原山)に温泉が集中し、西側(八丈富士)にはほとんど湧出していません。
- 東側:火山活動の終了から時間が経過 → 地熱が安定し、地下水が深部まで届く → 温泉が豊富
- 西側:火山が新しく、火山体が厚く浸透しにくいため、湧出しづらい構造
これは紀伊半島の川湯温泉や龍神温泉と同様、“静かな火山の余熱”が湯となって湧き出すしくみ。温泉は火山の“時間”がつくる贈りものでもあるのです。

🐦 足元の花、空からの声——八丈島の生きものたち
滝沿いにはアオノクマタケラン、ハナソウカ(花草果)、テイカカズラ、ヒオウギズイセンなど南国の花が咲き、甘い香りが谷を包んでいました(香りの正体は不明のまま…)。
空からは、ハチジョウメジロ、ハチジョウコマドリ、アカコッコ、アオバト、トラツグミ、ミソサザイなど、離島ならではの声が聞こえてきます。植生と野鳥が一体となった火山の森のサウンドスケープでした。

🚗 EVカー「eemo」で、静かな島の時間を楽しむ
滞在中の移動は、EVカーシェア「eemo」。 八丈ビューホテルには5台設置されていて、スマホで完結・充電無料・5000円以下と快適そのもの。坂の多い島でも静かに走り、早朝からの探検にぴったりでした。https://www.eemo-share.jp/

🏭 明日葉加工所と、廃墟の問い
途中立ち寄った明日葉加工直売所は、粉末が舞う静かな作業場。伝統というより日常の中に根づいた地域産業にふれることができました。スタッフの方の温かさが印象的です。
一方で島内には、旧八丈島観光ホテルや八丈オリエンタルホテルといった巨大な廃墟も。これらを「負の遺産」とせず、“風化していく物語”としてどう活かすか? 八丈島は、観光の未来を考える問いも与えてくれました。
✈ 都心から55分。地質、植物、温泉、文化が交差する“火山の教室”
羽田空港からわずか55分。八丈島は、海だけではない、“火山がつくった時間の物語”を味わえる場所。鉱物、温泉、滝、森、そして人々の暮らしが幾層にも重なっています。
次回はどこでみちくさしますか? それは、きっと“違いに気づく旅”の中にあります。

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