日本観光振興協会(日観振)、日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)は10月26~29日、観光総合見本市「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2023 大阪・関西」をインテックス大阪(大阪市住之江区)で開いた。大阪で開かれるのは4年ぶり。テーマは、「未来に出会える旅の祭典」で、会場では世界70カ国以上のブースが設けられるほか、2025に開かれる大阪・関西万博に向けた企画やイベントなどを実施。会場には業界人や最新の旅情報を求めた一般客など、4日間で14万8062人が訪れた。TEJ実行委員長でJATAの髙橋広行会長は「2025年に開かれる大阪・関西万博につなぐイベントとして、TEJからワールドエキスポにつなぐ流れが関西からできた」と話した。
TEJは、世界中の国・地域、日本全国の観光地が集結する年に1度の世界最大級の旅の祭典。今すぐ旅立ちたくなる海外・国内の旅の最新情報や、華やかな民族衣装、ご当地グルメ、ステージパフォーマンスなどが楽しめる旅の見本市として定着している。
今回は、未来に出会える旅の祭典をテーマに、社会や環境に配慮する持続可能性への取り組みが一人ひとりのウェルネスにもつながるさまざまなサービスやコンテンツが紹介された。未来を見据えるものとして、宇宙旅行や海外の新たな旅をひとあし早く疑似体験するネクストデスティネーションの紹介、2025年大阪・関西万博が垣間見える体験などが行われた。学べる場として、セミナーやシンポジウム、ツーリズム・プロフェッショナル・セミナーも開かれ、観光の持続可能性など次世代を見据えた活発な議論や意見交換が行われた。
日観振・山西会長「未来を見据えた旅を提供」
オープニングセレモニーの冒頭、TEJ組織委員長で日観振の山西健一郎会長が「インバウンドが急速に回復する一方、アウトバウンドは円安などの影響で大きく遅れている。海外旅行復活なくして旅行業界の復活はない。今後は、観光産業に携わる人たちが一体となりながら、未来を見据えた旅の形を提供し、復活を成し遂げたい」とあいさつした。
来賓として参加した観光庁の石塚智之審議官は、「9月の訪日外国人旅行者数は218万人で、コロナ禍前の96%まで回復するなど、旅行需要は回復傾向にある。TEJをきっかけにさらなる機運を高めていく。われわれも、今年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画で掲げた持続可能な観光、インバウンド拡大、国内交流拡大の3つ掲げた目標を早期に達成するため、観光立国の復活に向けてまい進する」と話した。国連世界観光機関(UNWTO)エグゼクティブディレクターのゾリティサ・ウロシェヴィッチ氏は、大阪・関西万博の開催に触れ、「日本の観光産業の官民連携は高いレベルにある。TEJの成功が大阪・関西万博の万全の体制、成功につながる」と評価した。
ビデオメッセージを寄せた岸田文雄首相は、「オーバーツーリズム問題に対応しながら、持続可能な形で地方誘客に取り組む。海外旅行の復活にも全力を挙げていく」と、業界を後押しした。
国土交通大臣賞に「過疎高齢地域での『沿線まるごとホテル』」
オープニングセレモニーでは、第7回「ジャパン・ツーリズム・アワード」表彰式が行われ、国土大臣賞には、沿線まるごとの「過疎高齢地域での『沿線まるごとホテル』プロジェクト」、観光庁長官賞にはコラレアルチザンジャパンの「『観光客と職人の新たな付き合い方』による伝統工芸の再興」、かまいしDMCの「震災復興とゼロからの持続可能な観光地域づくりの実践~まち全体を屋根のない博物館に~」、トラべリエンスの「世界中の旅行者と世界中のツアーガイドをマッチングする観光ツアーマーケットプレイス『GoWithGuide.com』」が表彰された。
JATA髙橋会長「新しい旅の形に合った商品で世界の潮流に乗る」
主催者会見では、TEJ実行委員長でJATAの髙橋広行会長が、「TEJが新しい時代にふさわしい商品やサービス、情報、イノベーションを関西から発信へとつながる」と開催の意義を述べた。海外旅行の回復がコロナ禍前と比べて現在5割と途上である中、出展者数が大きく上回ったことについては、「インド、サウジアラビアを始め、多くの国から日本の観光にかける期待の大きさを感じている。日本のアウトバウンドを一刻も早く回復して期待に応えたい」と語った。また、2024年度の早い段階でコロナ禍前まで戻す決意を語った。今後の業界での取り組みについては、「SDGsなど新しい旅の形に合った商品を展開するなど世界の潮流に乗った取り組みを進めていく。また、業界では人手不足も課題だが、観光DXでカバーしていきたい」と話した。
持続可能なツーリズムや万博を見据えた議論が展開
フォーラム&セミナーは、「Open the Door to the Future」をテーマに実施。民間部門における世界観光倫理憲章署名式や、第6回TEJ観光大臣会合、テーマ別シンポジウムが開かれ、活発な議論が交わされた。基調講演では、2025年日本国際博覧会協会の石川勝会場運営プロデューサーが「新たな時代の万博を共に創ろう」をテーマに、草創期以降の万博の歴史や役割をひも解きながら、会場での「万博DX」などの取り組みを披露した。石川プロデューサーは、万博の意義について、「時代の合わせ鏡」であり、初期の国家の繁栄を示すものから、課題解決への道を示すものとなったと解説。大阪・関西万博では、DXを使った並ばされない、快適な万博を目指すとともにキャッシュレス決済の導入や未来社会ショーケース事業を通じて、新技術の紹介などを行うことを説明した。
10月26日に開かれた世界観光倫理憲章署名式では、世界観光倫理憲を遵守し、取り入れることを通じて持続可能な観光を促進する企業として、①Discoer Walks②北原(旅館こうろ)③こはく④ライダス⑤スピリット・オブ・ジャパン・トラベルーの5者が署名した
TEJ観光大臣会合は、「未来のためにツーリズムを『再考(Rethink)』する」をテーマに開催。日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の友好協力50周年を契機とし、ASEAN所属国の観光大臣や観光行政のトップ、UNWTO、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)など5団体の代表が参加した。日本からは国土交通大臣政務官の加藤竜祥氏が参加。加藤大臣政務官は、コロナから回復しつつある現状を踏まえて「人手不足が深刻化するほか、収益性、生産性、給与が低く、構造的に問題がある」と課題を指摘し、地域一体となった観光地、地域産業の再生、高付加価値として宿泊施設の改修、観光地の面的DX化の支援などに力を入れていく方針を示した。会議では、コロナ後の世界の中でのツーリズムの再構築や、持続可能性ある観光であるために何をすべきかなどが議論された。
夕刻に開かれたウェルカムレセプションには、政財界から多くの来賓が来場した。冒頭、主催者代表として、JNTOの蒲生篤実理事長が「TEJでは、観光が地域の持続可能な発展に貢献することを目指し、旅の未来像を発信する。アジアのゲートウェイである大阪から世界に向けて新しい旅の魅力を伝えるきっかけとなった」とあいさつした。
来賓からは、加藤大臣政務官が「コロナ禍以降、インバウンドは激減したが、昨秋の水際対策の緩和から課観光は回復基調となっている。TEJは、平和産業である観光を通じた国際相互理解のさらなる促進や国際交流の拡大、国や地域間における経済の活性化が図られ、万博への機運醸成につながるものだ」と評価した。
前首相の菅義偉氏衆議院議員は、「観光は成長戦略の柱であり、地方創生の切り札だ。観光を通じて、言語を越えて相互理解を深めることは、国家間の平和的な関係の強化につながる。私が総理の時には、コロナ禍であってもわが国の気候や自然、食、文化は決して失われるものでないとの考えのもと、コロナ後を見据えて観光地のリニューアルを行い、全国各地、観光資源の磨き上げに取り組んできた。今こそ磨き上げた観光資源を発信する機会だ」と呼び掛けた。
全国旅行業協会(ANTA)会長の二階俊博衆議院議員が「観光は平和産業だ。平和の地にのみしか存在しない事業である。われわれは観光産業を推進することで、平和を推進することにつながる。互いに旅行、観光を通じて相手の国、地域、人を知ることで、心が通じる」とTEJを通じたさらなる交流を呼びかけた。
観光立国調査会会長の林幹雄衆議院議員が「今年は観光庁発足15年の節目の時であり、この時を経て観光は国の柱となった。観光はさまざまな国や地域を行き来しての交流を繰り返すことが重要。日本には自然や文化、気候、食と言った観光振興に必要な4つの条件を兼ね備えた地域がたくさんある。観光立国調査会としても、共に手を取り合いながら取り組みを推進していきたい」と訴えた。
大阪府の吉村洋文知事が「観光は力のあるものであり、そして国を、人種を、言語を超えるもの。今はネット社会で色々な見れると言うが、観光は人間の本質的な欲求である。大阪をはじめ日本においては歴史と文化に裏打ちされた素晴らしい魅力があると確信している。力のある観光を大阪でも伸ばしていきたい」と話した。
このほか、世界盆踊り連盟による万博応援音頭の披露や、インドのボリウッドダンスやジャズ100周年記念ライブや、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン特別公園などが行われた。
10月27日に開かれたテーマ別シンポジウムは、「日本人の海外旅行促進に関するシンポジウム」「万博×観光シンポジウム」「アドベンチャーツーリズムシンポジウム」の3つをテーマに取り上げて開催。万博×観光シンポジウムは、「万博を契機とした国際交流による持続可能な観光とは」をテーマに開かれ、基調講演を行った関西観光本部の東井芳隆専務理事が「スプリングボードとしての大阪・関西万博」を題に、拠点観光から広域観光に向けた新たな8本の観光ルートや、万博プラス関西観光として万博会場と地域を結んだ周遊促進策、万博への受け入れ整備としてEXPO関西旅行商品造成やプロモーション、旅ナカ・安心サポートなどを説明した。東井専務理事は、地域を巻き込んだ「拡張万博」の経済効果について、「基準ケースより約4~5千億程度の上振れが見込める」と述べた。
会場には70カ国・地域、1275企業団体のブースが展開
会場には、国内外から70カ国・地域、1275企業団体によるブースが並び 日本からは、観光関連として日本遺産ツーリズムや日本遺産、環境省 日本の国立公園、農泊~Countryside Stay~、国土交通省 海事局、日本酒蔵ツーリズム推進協議会といったテーマを打ち出したブースが出展された。
新しい旅に会える場所としては、特集エリアでは「ワーケーション」「星空ツーリズム」「ドライブツーリズム」、特別コーナーとして「アカデミー」「アドベンチャーツーリズム」「観光SDGs」「クルーズ」「スポーツツーリズム」「旅の広場」のブースが設けられた。
「大阪・関西万博PRステージ」では、2025年4月13日から10月13日までの183日開かれる大阪・関西万博の民間パビリオン構想発表会や、11月30日から開始される前売りチケットの概要、テーマ事業「シグネチャープロジェクト」の説明などが行われた。
また、グルメを楽しめるものとして、串かつやお好み焼きなど関西の名店や国内外の食が楽しめるフードコートが設けられるほか、全国のご当地どんぶりを堪能できる「全国ご当地どんぶり選手権~番外編~」が開かれた。
10月26、27日には併催として、TEJと日本経済新聞社が主催し、観光関連企業やIT・通信企業が自治体やDMO,宿泊・交通事業者向けに観光分野に特化したDXソリューションの提案を行う「トラベルソリューション店2023」が開かれた。
TEJは来年、9月26~29日に東京・東京ビッグサイトで開かれる予定(9月26、27日は業界日、9月28、29日は一般日)。
ツーリズムEXPOジャパン公式サイトでは、会場の熱気が伝わる写真ギャラリー(https://www.t-expo.jp/biz/press/gallery)を公開している。