Act.7「ファッショナブルな旅で豊かになる」
JRの前身、当時の国鉄が1970年10月からはじめた「ディスカバー・ジャパン」は今も日本の観光の歴史に語り続けられるキャンペーンだ。大阪万博後の旅行需要低迷を避けるべく、「日本を発見し、自分自身を再発見する」をキャッチフレーズにした、本格的な初の個人旅行拡大キャンペーンだった。
ターゲットは若い女性。発刊したばかりのファッション雑誌「an・an」「non no」とタイアップし、宣伝ポスターは小京都と呼ばれる日本の地方の古い町並みを旅する、まるでモデルのようなファッショナブルな衣装に身を包んだ若い女性のビジュアルを中心に展開。観光地を自由に旅するミニ周遊券もこのころ発売され、アンノン族なる言葉まで生み出し、女性が地方を旅する大ムーブメントを起こした。
ハレの日こそ、ファッショナブルに!
旅とファッションは無関係かもしれない。でも、せっかくのハレの日、旅に出るために少し旅先をイメージする衣装?をまとう自分を意識するのは悪くない。荷物をできるだけ小さくしよう、と機能重視でモノを考えがち。だが、機能性とオシャレは両立できる。
洋服をコンパクトに収納できる衣類圧縮パックは100円ショップの定番品だ。最近ではランドリー併設のホテルも増えてきた。旅先で洗濯はちょっと無粋だが、昔と違って全自動。アンダーウェアを放り込んでおけば外出中に仕事をきちんとしてくれる。お気に入りの1着の代わりに、少し何かを減らす。そんなプロセスを考えるのも旅マエでの豊かな時間の始まりだ。
荷物こそ、大きな問題!?
新幹線にも荷物置き場ができたり、その予約ができるようになったり、少しづつ荷物に関わるサービスは改善されている。でも、大きな荷物を大きな駅で携えて歩くのは想像以上に厄介だ。ターミナル駅のコインロッカーは遅い時間には満杯、手荷物預かり所は長蛇の列。旅行の計画時には想定されていなかった難題が当日に襲いかかる。観光地の駅から温泉街までの微妙な距離、スマホのマップでは表示されない階段や坂道、体力と気力で乗り超えようと最初は思うのだが、やがてへこたれる。人の移動のスムーズさに比べれば、荷物はかなり邪険にされている感がある。
必要な時に必要な人に・・・さまざまなレンタルサービス
いっそ旅先に送ってしまえばいいのでは。ゴルフバックなら当たり前なのに。宿泊先まで必要の無い荷物はたくさんあるはずだ。東京駅や京都駅など、駅で荷物を預けて宿まで運んでくれるサービスもある。最近では日時を予約できるコインロッカーも登場した。とっさの雨に、のために傘を持つのはおっくうな人のためにはレンタル傘サービス「アイカサ」や、家から満員電車に乗ってターミナルまでいくのは…とためらうお母さんには予約できるベビーカーレンタルサービス「ベビカル」もある。一眼レフのカメラもレンタルできるのはご存じだろうか。ほとんどスマホで済ます私も、これは、という時にだけ旅行中に借りている。
あれ、そう考えると旅がどんどん身軽になっていく。そうなったら、お気に入りの1着を探しに行こう。出会う風景や人々、愉しむ酒と食べ物、それに合う服はなんだろう。そう考える時間は、もうあなたの旅を豊かにしている。
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=19
寄稿者 高橋敦司(たかはし・あつし) ㈱ジェイアール東日本企画 常務取締役CDO