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越境ECでの送料の決め方にはマリーシアが必要

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 越境ECで多く方が悩むのが配送関係です。配送は国内ECでも越境ECでも「購入 → 決済 → 発送」のように、最後の段階になるため、つい後からゆっくり考えようとなりがちです。そうしてのんびりしていると、非常に複雑でややこしく、国内ECにはない、覚えておかないといけないことなどがあるため、意外と時間を取られてしまい、配送がしっかり固められないために越境ECのスタートが出遅れるというケースが散見されます。

送料の決め方は神経質な人には向かない

 国内ECの場合、購入者の住むエリアごとに送料を設定し、1円たりとも損しないで済むように設定すると思います。例えば、北海道:1,500円、東北:800円、関東:600円・・・というように。

 越境ECでもエリアごとに送料を設定することはできます。例えば、北米:3,400円、欧州:3,200円、アジア:1,100円、南米:4,500円・・・というように。

 しかし、この国内ECと同じようなエリア別送料設定をすると、少し面倒なことが起きます。

 「私はイリノイに住んでいますが、送料はいくらですか?」

 こういった問い合わせです。イリノイといえばアメリカ合衆国の州の一つですから、北米であるということが分かります。したがって、北米向け送料が表示されているはずですから、そこを見れば分かるはずです。この、問い合わせをしてきた人は、単に料金表を見落としていたのでしょうか? 確かにその可能性もあります。しかし、似たような問い合わせが他にも来るようになると、あることに気づきます。

 問い合わせてきた人は、料金表を見落としたのではなく、「イリノイに住んでいるが、北米に住んでいるとは思っていない」と考えている人だということに。

 こうした問い合わせにいちいち対応していると、時間の無駄になります。そこでこうした現象の対策としては、次のようにすることが大切です。

 「はじめから、この手の質問をさせない」

 では、どのようにすると良いのでしょうか。それは、次の通りです。

・世界のどこでも一律料金で送る

 または、次の方法が便利です。

・その一律料金を原価に含んでしまって、WEB上では送料無料と見せる

 これは、何より楽です。そもそも地理的知識がない人が、世界地図と料金表を見させられても、複雑すぎて買う気が失せてしまいます。

 また、こうした設定にしたほうが売り上げにつながりやすいという側面もあります。それは、越境ECの場合、送料を無料に設定しておく方がアルゴリズム的に優位に働くケースが多いからです。こういったアルゴリズムが働くのも、海外のユーザーが送料無料を望むからです。(出典:LaserShip study highlights consumers need for free delivery. By Enterprize Times, 2022)

 下の画像は、出処がよくわからないミーム(ネット上のネタ画像)ですが、上のパターンでも下のパターンでも購入者が最終的に払う金額は同じなのに、行動パターンが明らかに違うことを表現しています。

 ここで最大の問題です。例えば、一律1000円で世界中送るとします。しかし、実際は、アジアは800円、アメリカは1000円、ブラジルは1300円かかるとします。この場合、アジアやアメリカに売れる分には送料が損することはありません。しかし、ブラジルに売れてしまったら送料が300円の赤字です。こうなる可能性はあるのではないか?

 もちろんそうなります。しかし、(商品によって一概には言えませんが)実際は南米やアフリカからの注文は多くなく、それにもまして北米やアジアからの注文のほうが多いです。そのため、年間で均してみれば、送料は黒字かトントンで収まっていることのほうが多いです。小見出しで神経質な人には向かないと書いたのはそういう理由です。越境ECではすこし大雑把にとらえるマインドセットも必要です。

 少し始めてみて、一番購入者が多そうなところに照準を定め、その地域の送料で世界中送るように設定する。こうするやり方が結果的にはうまくいくと思います。どうしても赤字幅が大きくて受け入れられなければ、送ったら赤字になってしまう地域を売らないように除外してしまえばいいだけのことです。

配送方法を一つに絞らず複数用意し、購入者に選択させる場合

 例えば、日本郵便のEMSで送ることも、国際クーリエ(DHL、FedEx、UPSなどの民間輸送業者)で送ることもできるようにし、購入者に選択させたいという場合、どのように設定すると良いでしょうか。

 この場合、一番安く送れる方法の送料を原価に含み、WEB上では送料無料と見せます。普通に購入ボタンを押しただけの場合は、自動的に一番安く送れる方法で送ります。

 もし、購入者が少し早く送れる別の輸送方法を選択した場合、一番安く送れる輸送方法の送料との差額を請求するようにすればOKです。これで少し割高な輸送方法の送料も捻出できます。

 こうしておくと、オプションで選んだ早く送れる輸送方法の送料が、業者が公開している料金より安く見えるので(差額しか請求しないから)、企業努力をしているように見せる事もできるというおまけ付きです。

商品代金と送料が釣り合わない場合

 これと関連して、商品代金が2000円で、送料が3000円かかってしまうものがあるとします。普通は送料が商品代金より高いと買われにくいです。しかし、先程のミームを思い出してください。ECは商品代金と送料を払わなければほしい物が手に入らないのです。したがって、こういったケースの場合、最終的に5000円払ってもらえばいいわけですから、商品代金を3000円にして、送料を2000円にするなど、内訳をひっくり返してもいいと思います。

 越境ECは国内と違って真面目にやっていればいいという世界ではありません。最近サッカー日本代表は強いですが、勝てない時代には「マリーシア(ずる賢さ)」が足りないからだとよく言われていました。越境ECでもマリーシアが必要です。とにかく柔軟に物事を考えられる人が成功します。

寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役

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