この年6月22日からはじまった「音楽(おと)のある東北」は、東北6県を巡りました。そして、秋田県能代市の「金勇」という料亭が最終ステージとなりました。いずれのステージも、初めてコンサートを行なう場所。今回も手作り感満載の設えが用意されていました。
木都・能代の迎賓館
能代は、最近ではバスケットボールの聖地とも言われています。また、秋田杉の産地としても知られ、木都・能代と言われていました。地域行政の方々と名刺交換をすると、杉材で作られた名刺を頂戴することも多く、その香りはいつまで経っても消えることはありません。
「金勇」は、その木材と北前船によって栄えたこの街の迎賓館。1890年(明治23年)に創業され、2000年に国の登録有形文化財に登録されました。しかし、諸般の事情で2008年に廃業、ちょうどこの年が、観光交流施設としてリニューアルオープンの準備をしている時でした。
枯山水の中庭を囲む建物は、昔ながらの波打つガラス窓が張り巡らされており、160畳の大広間には秋田杉全面杢四畳半仕切り格天井。日本海の海運業の栄華を見ることができる施設です。
この大広間で、今夜はコンサートが行われます。アーティストは、因幡晃さんです。
わかってください
因幡晃さんは秋田県大館市の出身。能代はいわば隣町です。1975年にアマチュアの登竜門と言われる、第10回ヤマハポプコンに出場し、「わかってください」を歌い、優秀曲賞を受賞しました。ちなみに、この時のグランプリは中島みゆきさんの「時代」でした。
翌年、ヤマハ音楽振興会からデビューし、フォークソング、シンガーソングライターとして、一世を風靡しました。
いわば地元で、なおかつ、誰もやったことのない会場でのコンサートは、因幡さんにとっても感慨深いものだったと思います。
最後の曲は、1985年リリースの「忍冬(すいかずら)」、
~♬ 忍ぶという字は難しい 心に刃(やいば)を乗せるのね
時々心がいたむのは 刃(やいば)が暴れるせいなのね ♪~
忍冬~因幡晃~
秋田県北部の繁栄を懐かしむかのように、お客様が大広間と一体となって、コンサートは幕を閉じました。
後ろ髪をひかれつつ・・・
コンサートの翌日、大館能代空港へ、ご一緒しました。途中、二ツ井には熊肉チャーシュー麺を出す中華料理屋があるといった情報。空港レストランにもあることを期待しつつ、ラーメンと餃子で昼飲みをしたことを思い出します。(残念ながら、熊肉ラーメンはメニューにはありませんでした!)
因幡さん、長いこと実家に帰っていないとのこと。今回も故郷に立ち寄る時間もなく、後ろ髪をひかれつつ、東京に戻ることとなりました。
来年も新しいステージを探してくれている人たちがいます。僕は、その場を盛り上げてくれるアーティストを探すこととなります。
楽しみは倍加しています!
(つづく)
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寄稿者 荒木伸泰(あらき・のぶやす) 株式会社キャピタルヴィレッジ 代表取締役