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【レポート】初公開品など再現模造を展示、「正倉院宝物を受け継ぐ」展 明治神宮ミュージアムで24年2月25日まで

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 明治神宮は12月23日、明治神宮ミュージアムで「正倉院宝物を受け継ぐ―明治天皇に始まる宝物模造の歴史―」展(主催:「正倉院宝物を受け継ぐ」展実行委員会、特別協力:明治神宮、監修:宮内庁正倉院事務所、後援:国土交通省関東運輸局、東京都)を東京・渋谷の明治神宮ミュージアムで開く。模造品は、8年の歳月を通じて近年完成した世界に唯一の琵琶を再現する「模造 螺鈿紫壇五絃琵琶」や、初公開となるガラス製品である「模造 瑠璃魚形」など36点を公開。模造品を通じて、宝物を守り伝える大切さ、再現するための技術や最新の研究成果を紹介する。明治神宮の九条道成宮司は「正倉院宝物の再現模造品を見てもらうことが、御物を守り伝えることにつながる。また、再現する技術の伝承を大切にするという国柄を国内外の拝観者に感じてほしい」と話す。2024年2月25日まで。

模造 螺鈿紫壇五絃琵琶
模造 螺鈿紫壇五絃琵琶

 同展は、観光庁が2023年度に推進する「観光再始動事業」への協力の一環として実施。正倉院宝物は、奈良時代に聖武天皇御遺愛品を東大寺の廬舎那仏に捧げたことに始まる。正倉院は、品々が東西アジアの文化交流が色濃く反映されていることから「シルクロードの終着点」とも言われ、またその保存状態の素晴らしさから、世界的にも奇跡と呼ばれている。しかしながら約1300年以上たった宝物は脆弱で、1877年(明治10年)の明治天皇奈良行幸を機に天皇により整理・修復が命じられた。これが現代まで続く正倉院宝物の修理や模造製作の第一歩とされている。模造事業では、これまでに約50点を製作している。

再現模造品は36点展示
再現模造品は36点展示

 同展では、明治天皇に始まる宝物の模造の歴史とともに、伝統を再現する叡智の技が詰まった品々が鑑賞できる。展示作品は、①世界に唯一の琵琶を再現する「模造 螺鈿紫壇五絃琵琶」②失われた技法を再現する「模造 紅牙撥鏤撥」③仏前に捧げられた美の形容「模造 漆彩絵花形皿」③工芸技法の粋を集めた唐風大刀「模造 金銀鈿荘唐大刀」④古代人の腰回りを飾った色ガラス「模造 瑠璃魚形」⑤シルクロードゆかりの伎楽の面「模造 酔胡王面」⑥奈良時代の漆芸技法の粋「模造 螺鈿箱」⑦大仏開眼会で演奏した楽人の衣装「模造 呉楽 笛吹襪」―など計36点。会場では、スマートフォンで無料で聴ける音声ガイドが用意されている。また、外国人にも対応するため、英訳した解説が併記されている。

鑑賞が理解を深め、本体を守ることに直結

開会式の様子
開会式の様子

 12月22日には開会式が開かれた。冒頭、明治神宮の九条宮司は、明治神宮の宝物展示や正倉院とのつながりについて「明治神宮では、明治天皇、昭憲皇太后の両御祭神の御物を最新の設備で保存展示している。1921年(大正10年)に建設された宝物殿は、正倉院の校倉造りを模した校倉風大床造りという様式で作られ、奈良時代から続く我が時代の文化・技術の保存伝統に対する思想が強く受け継がれている」と紹介。明治神宮ミュージアムについては、「鎮座100年祭を記念して、2つ目の保存展示施設として建築された。日本建築の伝統美を意識するとともに最新設備を設けている。御物を守る点においては、正倉院の延長線上にある施設として考えられる」と役割を説明した。

明治神宮の九条宮司
明治神宮の九条宮司

 宮内庁正倉院事務所の飯田剛彦所長は、模造事業について「正倉院事務所では戦後、科学的調査に基づき宝物の素材、構造、技法の再現にこだわった模造の制作に取り組んできた。目的として脆弱な宝物に替えて遠方でも素晴らしさを楽しんでもらうこと、いざという時の宝物のスペアの役割を担っている」と説明した。注目のポイントとして、人間国宝をはじめとした現在の一流の工芸作家の渾身の逸品であること、奈良時代の仕事を再現を通して宝物の製作の姿を味わえることを挙げた。

宮内庁正倉院事務所の飯田所長
宮内庁正倉院事務所の飯田所長

 神社本庁の藤江正謹常務理事は「シルクロードを渡ってきた文化の結晶が、時代を超えて模造の製作によって素材や技術が蘇り、文化の継承につながっている。宝物の美しさはもとより、歴史的意義や日本人の精神性にも触れてほしい」と話した。

神社本庁の藤江常務理事
神社本庁の藤江常務理事

 関東運輸局の勝山潔局長は、昨今の観光誘客事情について「本展は、観光再始動事業を活用したものである。この事業はアフターコロナにインバウンドの本格的な回復に伴う特別な体験や期間限定の取り組みなど、全世界に発信して誘客につなげるもの。12月20日に発表された2023年の訪日外国人旅行者数は2233万2000人であり、2千万人を突破した。日本のインバウンド需要がカ急速に回復しているといえる」と述べた。同展については、「私は約20年前に奈良県庁に3年間出向していたが、当時から正倉院にある貴重な宝物の魅力に魅せられていた。今回は、正倉院から遠く離れた東京で再現模造品が見られる特別な体験ができる機会だ。インバウンドを含む多くの人に日本が誇る歴史・文化など魅力に触れてほしい」と来訪を呼び掛けた。

関東運輸局の勝山局長
関東運輸局の勝山局長

 このほか、関係者やメディアを対象とした内覧会が行われた。宮内庁正倉院事務所保存課の佐々田悠室長は多くの作品を紹介しながら、展示について「実際に見てもらうことが、理解を深めて本体を守ることに直結する」と意義を説明。同展の魅力については、「今回は模造品の良いものを集めたベスト盤と言える。製作には現代の名工たちが携わっており、細かな技法や作品のおもしろさを身近に触れてほしい。海外からの観光客を含めて、まずは見て興味を持ってもらい、次は実際に正倉院がある奈良を訪れる機会へとつなげたい」と語った。

 同展の開館時間は午前10時~午後4時30分、休刊日が木曜日(1月4日は開館)、観覧料金が一般1500円、高大学生1000円、中学生以下無料。

外国人にも対応し、英文でも解説
外国人向けに英訳した解説を併記
展示室の様子
展示室の様子
展示室の様子
展示室の様子
「模造 螺鈿紫壇五絃琵琶」の製作行程を紹介する動画を公開
「模造 螺鈿紫壇五絃琵琶」の製作行程を紹介する動画を公開

取材 ツーリズムメディアサービス編集部 長木利通

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