我が国は広い国土に多様な風土を持ち、さまざまな地域で育まれてきた食文化があります。この食文化に対する国内外からの関心の高まり等を踏まえ、食文化の保護・振興を図る部署として、令和2年4月、文化庁は食文化の担当部署を設置しました。
文化庁では、令和3年度から、地域の食文化の調査研究により文化的価値を明確化し、文化的背景を分かりやすく伝える「食文化ストーリーの構築・発信」を支援しています。毎年10件程度、新規案件を採択・支援しており、本日はその中から2件、ご紹介します。
まめぶ 岩手県久慈市
しょうゆ味のだしにクルミや黒砂糖が入った「まめぶ」という団子を入れた汁物料理で、年取り、正月、結婚式などの慶弔時に欠かせない行事食です。集落ごとに異なる具材や味付けを持ち、関係者が集まった「まめぶ」継承講座での食べ比べ企画は好評だったようです。凶作が続いた江戸時代に、「ハレの食事」の麺類に代わる代用食として、小麦粉にくるみの実を包んだ団子を食べていたのではないかというストーリーに思いを馳せ、地元でまめぶを作り続けている方々のお話を聞きながら、味わってみたくなります。
いしる・いしり (一社)能登半島広域観光協会
能登近海でとれる魚介類を塩漬けにし、発酵と熟成を進めることによって作られる調味料で、秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油とともに、我が国における代表的な魚醤の一つです。いしる・いしりは、本事業での調査も踏まえ、令和4年度に国の民俗無形文化財として登録されました。地元の七尾市でオーベルジュを営むシェフは、「いしりに出会って旨味を足すのに、能登のものだけで料理が完結しやすくなったので、使える食材の幅がかなり広がった」とコメントしています。どのようなお味なのか、確かめてみたくなります。
地域のさまざまな食文化は、温故知新で新たな価値を生みながら継承されており、観光コンテンツとしても重要なものであると思います。
【写真提供 文化庁HP】
令和3年度「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業 各地域の食文化の概要及び活動実績一覧
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/joseishien/syokubunka_story/93727701.html