久しぶりに新宿ゴールデン街に立ち寄った。ご存じない向きのために記すと、ここは新宿駅から徒歩7,8分の歌舞伎町の一角に位置し、10人も入れば満員となるような小さなスナックやバー、小料理屋がひしめいている。学生運動がはなやかりし頃は、映画・演劇関係者や俳優の卵、小説家、画家、ミュージシャンらが集い談論風発、時には議論が沸騰し、殴り合いなども生じることも頻発した。
それが様変わりしていた。狭い路地も店内も外国人観光客であふれているのだ。子供連れもいて、かっての「ちょっと危ない飲み屋街、新宿ゴールデン街」からは想像できない。こうした外国人観光客の姿は同じ新宿や上野、新橋の飲み屋街でも目にする。コロナ禍で大打撃を受けた飲食店にとり、国籍を問わず歓迎する向きもある。
日本の居酒屋、赤ちょうちんで一杯やりたい
ただ、こうした光景は東京や大阪など大都市に限られているようだ。外国人観光客からは、こんな声が漏れてくる。「日本は女性が一人で夜道を歩けるほど安全で、かつ清潔。しかし、夜の遊び方がよくわからない」
地方の温泉地など場合、日本旅館で部屋食を試したいと望む一方で、東京や大阪では宿泊のみのホテル利用が多い。
おのずと夕食はホテル外の飲食店でということになる。そんな時、どこに行ったらいいか迷ようという。一時期に比べれば、スマホで検索して店探しもできるだろうが、やはり「軽く飲みながら、うまい料理が納得いく価格で食べられる店に行きたい」との思うのは当然だろう。
食べたり、飲んだりするだけでなく、健全なナイトライフを楽しみたいとの思いも強いのだ。そうした面で、日本のナイトライフ観光は貧弱ではないだろうか。観光庁も「文化・経済の両面でまちを活性化させ、今後の経済を支える重要なテーマ」と位置付けている。
夜の街に繰り出せば経済も潤すナイトライフ観光
そうしたナイトライフ観光に風穴を開けようとしたのが、少し古くなるが2013年にインバウンドを対象にした東京観光財団の企画だ。その名も「TOKYO YOKOCHO WEEK」。
東京・有楽町のガード下の飲食街などを対象に、日本の赤提灯文化を知ってもらう試みだった。日比谷などのホテルに宿泊する外国人に「パスポート」を配布。これを持参して企画に参加した居酒屋などを訪れると、外国人向けにお酒付きの1000円の特別メニューが提供される。追加注文は別だが、1000円と決まっていて安心このうえない。その後、2019年のラグビーW杯日本大会でも訪日外国人を対象に「吉祥寺酒場札所めぐり」事業を行った。吉祥寺の夜の楽しみ方を伝えた。
日本人も含め、旅先の夜の過ごし方は、少し寂しい。温泉に浸かって夕食をとり、再び温泉に入り、早めに寝てしまう。ナイトライフ観光は経済活性化にも貢献する。
取材者 神崎公一