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「斜陽産業+英語ダメ」でも越境ECで生き残れた企業の話

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 今年に入り、世界中がポストコロナに舵を切り、人の移動が活発になってきました。しかし、コロナ禍の最中にEC(電子商取引、ネット通販)は、世界的に軒並み3割近い成長率を叩き出しました。これは、コロナ以前の成長率で計算したら5~6年かかったはずの世界中のネット総売上を、コロナ禍のたった数ヶ月で達成させてしまったということになります(※)。

※Adobe’s Digital Economy Index analyzes

 そうした勢いのあるECですが、日本の場合はコロナ以外にも、海外に向けてネットで販売するという選択肢を真剣に考えねばならない理由があります。

 少子高齢化による人口減少(正確には労働者人口の減少)に伴う、さまざまな場面の縮小化がそうです。

 実は日本がこうなることは、人口ピラミッドなどを見知っていれば、30~40年前からわかっていたことです。ついにその時が来たに過ぎません。

出典:厚生労働白書

 現在の日本の人口構成は、人口の3割が高齢者であるとされ、また、あと数年で日本の全世帯の4割は単身者世帯になると予想されています。単身者が全員独身貴族を謳歌するわけではありませんから、国内市場にこだわってばかりだと、なかなか明るい材料が見当たりません。

 そうした経済の落ち込みを穴埋めするもののひとつにインバウンドがありますが、YouTubeなどで日本旅行する外国人のVlogなどを見ていると、ほとんどの人が同じような所にしか行かないので、都市部でもインバウンド需要の恩恵に直接あずかれる人は限られるのではないかと思います。

 そこで、日本経済の落ち込み、インバウンドの恩恵を受けにくい事業者は、その落ち込む売上を外貨で穴埋めする手段として、海外にネットを使って販売する「越境EC」を検討する必要がでてきます。

 そこで今回から12回に分けて越境ECの基礎を書いていこうと思います。初回はプロローグです。

越境ECを決意するのに立ちはだかる壁とは?

 越境ECの必要性が分かっても、実行を決意するにはいくつかハードルがあります。

・どう始めたらいいのかわからない(どういう方法があるのかわからない)

・法や税についてわからない

・外国語ができない

・外国人が怖い(どうコミュニケーションを取ればいいかわからない)

などなどでしょう。

 私は現在、越境ECのコンサルタントとして日本の皆様のサポートをしていますが、実は上に挙げたのは、私が20年以上前に外資の越境ECプラットフォーム企業に勤めていたときに、日本の事業者に越境ECを勧めた際に断られた理由として多かったものです。現在も日本人の本音はそれほど変わっていないと思います。

ほとんどの不安は杞憂に終わる

 不安に感じることは良くわかりますが、これらの不安はまったくと言っていいほど杞憂に終わるということを、実際の事例を挙げながらお伝えしたいと思います。

 大阪にある畳屋さんがございます。

 畳は日本を代表する伝統的な家具であると同時に、本格的なものは職人が手作りで作る伝統工芸品でもあります。

 しかし、特に都市部では住宅事情の変化、ライフスタイルの変化に伴い、畳のある部屋は減っています。つまり、畳は完全な斜陽産業化しているのです。

 一方で、インバウンドで日本旅行を楽しんだ人たちは旅館で畳の温もりを知ったり、武道や茶道などで畳を知った方など、数の上では多くはないですが、畳を理解できる外国人は数十年前と比べたら確実に増えています。

 そこで、海外に賭けてみたのです。

 どうやればいいのかわからないまま。言葉もわからないまま。

 でも、結果的に現在では累計で6万枚もの畳を外国に出荷するまでになっています。

 努力すれば、高いと思われたハードルもそれほど高くはないということです。

 今回は、越境ECに不安を感じることはないということをお伝えしました。次回は、先駆者ほど苦しみながらやらなくても済むように、いくつかのヒントをまとめていきたいと思います。

寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役

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