春のお楽しみ
6月に入り、少しインバウンドの流れも落ち着いたように感じる飛騨高山。先日、山菜採りツァーが開かれ参加させていただきました。
高山市街地の標高は570m、お酒と共にいただく山菜は4月頭にふきのとうでふき味噌、春の高山祭り(4月中旬)が終わるころにあずきなの天ぷらやこごみの胡麻和え、タラの芽、こしあぶらなどは5月に入ってからでしょうか。どれも本当に美味しくて長く辛い冬を乗り切ったご褒美のように感じます。
ところが、今回のツァーは5月中旬~6月初旬の計5回の企画、こんな遅い時期にどこで何を採取するのだろう?と高山育ちの私も不思議に思いました。
集合場所がすでに標高1200m
集合場所は市街地から車で40分ほどにある<朴の木平スキー場>。近隣では初心者はもちろんですが、上級者が楽しめるスキー場として有名です。このスキ-場内のロッジに8:30集合。
今回の参加者は10名ほどでしょうか。美しく、遮るもの無く広がる緑一色のゲレンデと青い空、もうこの風景を見ることができただけでもやってきた甲斐があると思えるほど気持ち良く、幸せな気分になりました。
その後、ツァーの説明を乗鞍岳で自然案内人を務めているという山菜取りの先生から受けました。
「山ウドとワラビがどんなものかはわかりますよね?」
「参加者のみんなである程度固まっていれば、熊は大丈夫です」
「山菜は下から見た方がみつけやすいですよ」
「山菜取り用のカマはありますか?無い方はお貸ししますのでどうぞ」
ゆるーく、自由度の高いアクティビティ
スマートにこなさなくてはといつもどこか自分を追い詰めているからでしょうかうまく言えないのですが、良い意味で企画側のゆるい、どこか寛げるようなのんびりとした感じがとても心地よいものでした。
そういえば地元向けに出された募集記事も同様で、例えば、持ち物の記載も無い。なんとなく必要だろうと長靴、軍手、帽子、山菜を入れるカゴなどは持参してきたのです。しかし、慣れた参加者は、クマよけの鈴、水分、予備のカゴなど用意周到でした。
そして、「ここは標高1200mです。今から300mほど車で登り、その後山菜を採りながら下山してください」と言われて気付きました。そうだ、標高1200mだからこの時期に山菜が採れるのですね。
軽トラの荷台に乗るというアクティビティ
その後、一台の軽トラの荷台に脚立をはしご代わりにして参加者が乗り込みます。軽トラに乗るなんて都会の女性はもちろん、田舎に住む私もなかなか無い。しかも、荷台に乗れるなんて感激です。
アニメ<となりのトトロ>でのそんなシーンを思い出しながら、大人が落ちないようにと荷台のへりを懸命に掴んで、標高1500mまでガタゴトと移動する様子を映像で見ることが出来たら、滑稽でたいそう愉快なものだっただろうなと思いました。
登ること15分ほどで頂上に到着すると、あまつばめが飛んでいました。飛びながら眠るほど飛ぶことに特化した鳥だそうで、この鳥に出会えた私達はかなりラッキーだと先生は話されました。
いよいよ山菜採りスタート
スキーで訪れた時にはとても滑り降りてこれなかった急斜面を一歩一歩踏みしめ、後ろ向きに降りて行きながら山菜を探します。手にはカマを持っていますから、軽く緊張感が走ります。
私は40年ぶりの山菜取り、よく似た植物があり間違えて食べると危険そうな山菜は、最初から諦めてわかりやすい<山うど>と<わらび>の二種に絞り込んで採取することにしました。
面白いものでだんだんと目が慣れてくると、まるでここは育てている畑ではないかと思うほど、固まって見つけられるようになりました。そうなると、もう欲が出るばかり、持参したカゴに隙間なく詰め込んで採り続ける事2時間、ようやく標高1200mの出発ロッジまで下山することができました。
ツァーのお楽しみ 温泉と山菜の天ぷら
募集の案内には、「下山後、山菜の天ぷらを食べる」とありました。当然、それぞれが採った山菜をみんなで調理するのだろうと思っていました。ところが、驚いたことにロッジ内には予想をはるかに超えた<山菜天ぷら定食>がありました。企画者側が採ってきたという山菜の天ぷらも愛おしくて、美味しく大満足なランチとなりました。
この山菜採りツァー、検索して比較しても破格の参加費だとつくづく思います。
参加費用は3,000円、これには、温泉の入浴券 600円、片道の山までの軽トラ代 600円、入山料 600円が含まれています。そして、定食、自然のプロのガイドがついて採った山菜はすべて持ち帰れるという内容です。
今年が初めての企画ということですが、おそらく来年からは参加者も増えて価格も上がるのではないかと予想しています。地元の私達がこんなに喜ぶほどだから、観光客はさぞかし感激されるのではないでしょうか。
愉しい採取後の手間ひま
そして、帰宅後、新聞紙を広げて山菜を並べ整理をします。わらびは高さごとに、山うどはなんとなく分けてまた少しづつ包み、ご近所や知人、ショップスタッフに届けたところ皆さん、大喜びして下さりました。
なにより山で山菜を採ってきた私に驚かれたようで、新しい事を試みて、少し自分が人として大きくなったような得意げな気持ちになりました。 自宅でいただく分は重曹であく抜きをして一晩置き、翌朝いただいたわらびの美味しさは格別。この手間ひまもなかなか愉しいものでした。
たった半日でこんなに有意義な時間を過ごせるなんて、まさに、山菜取りツァ-は「衝撃のアクテビィティ」。帰りがけに駐車場で出会った70代の女性4名は、毎年入山料と軽トラ往復で1,800円を払って名古屋からここに山菜を採りにきていると話していらっしゃいました。
足腰が元気なうちにぜひ皆さん、参加して見られてはいかがでしょうか?
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=25
(すみやのHPは、こちらです) https://www.sumiya-villa.com/
寄稿者 住百合子(すみ・ゆりこ) AO STYLE インテリアデザイナー・コーディネーター