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エーゲ海の真珠、ギリシア・サントリーニ島 白亜の館が紺碧の海原に映え、世界第1級の海洋リゾートに

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 エーゲ海に浮かぶギリシア・キクラデス諸島のサントリーニ島。海洋リゾートとして知られるが、はるか太古の時代、クレタ島クノッソスの海洋文明にも影響を与えたほど栄えた文明を有していた。プラトンが理想国家として描き、天変地異よって大西洋に沈んだとされる「アトランティス」は、実はサントリーニ島であったとみなす研究者もいる。

 実際、この島は、有史以来、繰り返し大災害に見舞われ、その度に断崖絶壁の上に新たな街を築き、復活を遂げてきた。最近では、1956年の大地震で島内全域が壊滅的な打撃を受け、島民はギリシア本土に避難を余儀なくされたが、いま、奇跡の復活を遂げた。

 現在のサントリーニ島を代表する市街は、南北に半月形の島中央に位置するフィラと北端のイアである。どちらの街にも夥しい数の白亜の館が、紺碧の大海原、群青の大空を背景に整然と美しく映える。

島内はクルマの乗り入れ禁止で、ロバがのんびりと行き交う

 それというのも、毎年5月に島民総出で館と小道のペンキを塗り直しているからである。市街地内は自動車の乗入れ禁止。ロバが輸送の主役を担う。溶岩の塊から形成された標高200㍍超の断崖の上に白亜の館が建ち並ぶ極めて人工的なリゾートと言えよう。その手作りの観光開発がサントリーニ島の海洋リゾートとしての価値を至上のものとしている。

溶岩台地の縁に連なる白亜の館、フィラ方面を望む

 最後の大災害以来、島民がギリシア政府の支援を受けながら、こつこつと白亜の観光宿泊施設の建設に勤しみ、いまや4つ星、5つ星など規格の高いホテルから家族経営のペンションに至るまで、大小様々な瀟洒な白亜館がフィラ地区とイア地区に並び建つ。飲料水はアテネからフェリー輸送で定時輸送される。もちろん、信心深い島民の祈りの場、青いドームのギリシア教会が随所にある。バザールもマーケットもある。最近は夜の観光のための歓楽街が細々と営業を始めた。

クルーズ船も寄港、人口1000人の島に年間700万人近い観光客

 島の南端のサントリーニ空港には、ギリシア本土に加え、欧州各都市、中東からの直行便が頻繁に入り、島へのリピート客の増加に寄与している。人口約1000人のサントリーニ島に、2017年には宿泊者数が550万人を超え、エーゲ海クルーズ船で寄港し島へ上陸を試みる観光客130万人を加えると、その数は年間680万人に達する。

左 ハネムーナーに大人気、白亜の小道を歩く男女。 中 Copy Right: FLYING DRESS SANTORINI、 ウェディングドレスがよく似合う 右 紺碧のエーゲ海に魅せられながら時を忘れ,島を巡る

 海洋リゾートと言えば、ビーチ・アクティビティからヨットクルージングまで楽しんで帰るのが一般的だ。ここサントリーニ島でのアクティビティは、標高200㍍超の溶岩台地の絶壁に建つ白亜館、青い丸屋根のギリシア教会、古代遺跡の壁画をモチーフにしたエーゲ海の土産品などを売るバザールの1つ1つを訪ねながら、刻々と変わる日差しの中に荒々しい大自然の造形と紺碧の海洋、そして人工の白亜館が創造する不思議な風景を楽しむことに尽きる。2大市街のフィラとイアは、歩いても数キロ、片道は島内循環バスを利用できる。絶壁を下って海岸まで下り、紺碧の海との触れ合いを楽しむことも出来る。ハネムーナーのみならず、「2人だけの不思議な世界」に長く居続けることになるだろう。

見所尽きない溶岩台地の絶壁、青い丸屋根のギリシア教会、バザール

イアの街のブルードームの青屋根。後方はフィラの街並み

 サントリーニ島を起点に古代遺跡の島デロス島(世界文化遺産)への日帰りツアーを楽しむこともできる。「ビーチ・パラダイス」の異名を持つ、欧州で超人気のミコノス島への連絡船も頻繁に出る。エーゲ海の快い潮風を浴びて思う存分ビーチ・アクティビティを楽しむ若者世代のエネルギーに心打たれることであろう。サントリーニ島のエーゲ海における観光拠点化が、輸送手段の多角化、迅速化に伴い、ここに来て一気に加速している。

古代遺跡の島、デロス島(世界遺産)

夏季のオーバーツーリズムを避けるのが賢い旅

 世界一級の海洋リゾートに成長したサントリーニ島。このエーゲ海の孤島にも夏季のバカンス時期には「オーバーツーリズム」の波が押し寄せている。ハイシーズンには、島の宿泊施設は予約が全く望めない。欧州のバカンスの始まる直前の6月、ないしバカンス後の10月が日本人旅行者の受け入れ可能な時期になろう。この島の観光には、これほど制約が強くなった。

aegean sea-Santorini
断崖にせり出して建つホテル・レストラン エーゲ海を眺望するホテル群     夕陽を浴びて夕食を楽しむ人々

 超円安時代、日本からアテネへの国際航空便の選択にも留意が必要だ。時間はかかるが乗り継ぎ便の中に、航空運賃の負担感の少ない便が出始めている。アテネからサントリーニ島へは、直行の航空便が出るが、時間に余裕があれば、アテネから出港する高速船の旅がお薦めだ。エーゲ海の青い潮、紺碧の大空に終始接しながら1歩1歩夢の島に近づく船旅は、生涯忘れることのない旅のプレリュードとなるだろう。荒々しい溶岩の塊り、高さ200㍍米超の断崖の上に建つ1つ1つが個性的な白亜の館群、眼下に見渡す紺碧の大海原、島のどこに佇もうとホスピタリティ溢れるギリシアの方々の歓待ぶりに接しながら、私たちは思いのほかサントリーニ島の住人になってしまう。

(2017年現地取材並びに2024年現地情報に依る)

 寄稿者  旅行作家  山田恒一郎 ( やまだ・こういちろう )

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