築地市場は、1935年から2018年まで83年間、この場所で営みを続けた卸売市場です。老朽化などの理由から豊洲市場への移転が決まりました。ただ、移転したのは、俗に「場内」と呼ばれる築地場内市場。隣接する「場外」市場は、現在も営業を続けています。知名度、売上高は日本一の市場と言えました。
かつて、汐留(新橋)駅から市場の中まで、線路が伸びていました。東京市場駅という貨物駅です。1984年に駅が廃止。そして、1987年に最後列車と入線したと記録されています。その名残として、市場を俯瞰すると大きなカーブを見ることができます。貨物列車が40両も停車できる駅でした。
未来を見据えた築地跡地の再開発
一方、場外市場は、主をなくした後も、古くからの海鮮を扱う店舗や立ち喰いのお店も元気に営業しています。そして、最近は、古きものを残したまま今様のバーなどもできています。拡大する訪日外国人にとっても人気のコンテンツ、朝な夕なにたくさんの人の出があります。
東京オリンピックが開催されるにあたり、跡地は、大型バスの駐車場として活用される予定でした。ここを中心に、大会会場を結ぶバスの運行管理する場所となるはずでした。しかし、ご存じのとおり、オリンピックは無観客開催。そのため、お客さまが乗車する貸切バスの発着はありませんでした。
そして、2024年4月、このエリアの再開発事業者が決定しました。5万人収容の全天候型スタジアムやシアター、新たな交通機関システムの拠点ができあがるとあります。また、ホテルや商業施設なども併設されるために、築地周辺は、MICEの一大拠点にもなる予定です。
大川端は、江戸風情
さて、目を北に向けてみよう。
ここを初めて訪れた時には、スカイツリーの雄姿はありませんでした。目の前には、聖路加タワーがそびえ、眼下には隅田川が流れる姿。そして、その先には筑波山も見えました。「江戸風情」を感じる景色、それを俯瞰する姿は、感無量なものでした。
それから数年後、スカイツリーが完成します。この新たな観光コンテンツの出現によって、東京観光は、次なる時代を迎えました。特に城東地区は、縦横に運河が張り巡らされているため、水辺の観光も脚光を浴びました。運河を結び、スカイツリーのお膝元へ。観光船を活用したコースは多岐に渡りました。
また、隅田川の橋梁は、夕暮れになると灯りを発するようになりました。いずれの橋も趣きを異にするため、橋梁巡りも一つの観光コンテンツとなりました。そして、その近隣には、「光を愛でる場所」や「食事を楽しむ場所」も創造されました。望まれる「ナイトタイムエコノミー」の始まりと言えるものです。
まだまだ開発途上と言われる「東京・下町」。テレビドラマのロケ地となったり、古き縄のれんをくぐったりと、楽しみ満載の場所なのです。これから先、どのように魅せていくか、期待したいものです。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181