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令和7年度に農泊による700万人泊を達成し、農山漁村の所得向上の実現へ

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 農泊は、農山漁村に宿泊し、滞在中に豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」です。農泊の狙いは、古民家・ジビエ・棚田など農山漁村ならではの地域資源を活用したさまざまな観光コンテンツを提供し、農山漁村への長時間の滞在と消費を促すことにより、農山漁村に「しごと」を作り出し、持続的な収益の確保、地域の雇用創出、関係人口の拡大・深化を図ることです。令和5年度までに全国で計656の農泊地域を創出しており、令和5年3月31日に閣議決定した「観光立国推進基本計画」では、令和7年度までに農泊地域の延べ宿泊者数を700万人泊とすることを目指しています。令和4年度の延べ宿泊者数は610.8万人泊となり、コロナ禍前の令和元年度の589.2万人泊を少し上回るぐらいまで増えています。

 一方、延べ宿泊者数に対するインバウンドの割合は、令和元年度の6.4%に対して、令和4年度は2.2%となっており、まだ十分に回復していません。令和5年6月に策定された「農泊推進実行計画」では、令和7年度までにインバウンドの割合を10%へ引き上げることを目指しています。

高付加価値化の実現で農山漁村の所得向上を図る

 延べ宿泊者数700万人泊の場合、関連消費は約1,060億円、所得創出は約420億円になると試算しています。今後、単価向上の取組(宿泊施設の改修、食事の見直し等)やFAX・電話による予約からオンラインによる宿泊予約への改善など、高付加価値な農泊モデルを創出し、農山漁村における関連消費や所得創出のさらなる引き上げに取り組んでまいります。

 例えば、福井県小浜市の内外海地区活性化プロジェクト推進協議会は、昔ながらの民宿を、外部人材の指導を受けて建物・食事を完全にリニューアルしています。従前のいわゆる民宿旅館からベッドスタイルに変更するとともに、食事も豪華にして「海のオーベルジュ」として展開しています。令和2年のリニューアル後は、宿泊単価が1人当たり1万円から2万5千円へと向上し、都市部からの誘客によって宿泊者数は年間700人から1,200人へ増加しています。また、民宿時代は家族経営でしたが、正社員として6人の雇用を新たに確保しています。このような個別事業者の好事例を地域全体に裨益するモデルとし、全国に横展開を図ってまいります。

リニューアルした部屋(小浜市)
リニューアルした部屋(小浜市)

インバウンド誘客をきっかけとした新たな「しごと」を創出

 世界15の国・地域を対象とした「ジャパンブランド調査2024」によると、今後の来日時にお金を払って体験・利用したいものは、「庶民的な和食レストラン」(41.4%)に次いで「農泊体験」(40.0%)となっており、「農泊」への関心が高まっています。

 本年6月には「農泊インバウンド受入促進重点地域」を40地域選定し、ソフト・ハード両面の優先的な環境整備、日本政府観光局と連携した海外プロモーションの展開、観光庁事業との連携を実施し、農山漁村へインバウンド需要を取り込むこととしています。重点地域以外の農泊地域においても、インバウンド誘客をきっかけに新たな「しごと」を作り出し、農山漁村の持続的な収益の確保や農山漁村の関係人口の拡大を実現したいと考えています。

UNWTOベスト・ツーリズム・ビレッジ2021に選ばれた京都府南丹市美山町
UNWTOベスト・ツーリズム・ビレッジ2021に選ばれた京都府南丹市美山町

寄稿者 髙橋宏輝(たかはし・ひろき)農林水産省 農村振興局 都市農村交流課 農泊推進室 課長補佐

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