東京の都心部は、超高層ビルの建設ラッシュで、電波障害が起きる場所が増えていた。そのため、21世紀初頭から新たな電波塔の建設が計画されるようになった。
その結果、2012年に東武鉄道の旧業平橋駅に隣接する貨物ヤード跡地に東京スカイツリーは完成する。高さは634m。タワーとしては、現在世界一位である。江戸の旧国名、武蔵国に語呂合わせしたことでも有名だ。
そして、そのデザインは、日本の伝統美と近未来を融合されることと意図している。まさしく、現代の五重塔。地上面は正三角形。しかし、上層部に向かうと日本刀のような反りを持っている。このことによって、見る場所によって、その形が変わってくる。また、スカイツリーに登ると、タワーが巨大な日時計となり、時間ごとに、その影を落とす。
開業当初は、2つの定番イルミネーション(「粋」と「雅」)であった。しかし、今では100種類以上になっている。LEDライトの進化がそれを後押ししているのだ。
そして、単なる電波塔だけではなく、観光・商業施設として、開業年5月22日にグランドオープンする。東京スカイツリータウンという一大レジャーランドだ。展望台をはじめ、水族館などが入居している。スカイツリーの開業によって、お膝元である業平・押上地区は、東京の新たな観光コンテンツとして変貌していく。
鈍感さこそ、普段着の姿
さて、東京の下町、特に城東地区には高い建造物がなかった。そのため、スカイツリーの完成は、そこに住む人々にとっても、日々の生活環境が一転したと言っても過言ではない。
人は、日々の生活の中で、常に見えるものに対して、ある時は敏感であり、また、ある時は鈍感となる。近くにあった建物が取り壊され更地になると、「ここ、何があったっけ?」などと思うことしばしば・・・。しかし、スカイツリーほどの巨大建造物は、そのような鈍感さは出没せず、いつもの生活に溶け込んでいるのである。
今回は、その普段着のスカイツリーの姿をご覧いただくこととする。
有名な観光地から見ることができるものではなく、これは、生活感満載の場所に見える姿である。まさしく、このシリーズ東京再発見のテーマ、「脇役探しの旅」に合致するものである。
普段着のスカイツリー、すべてを探し出すことは難しい。そのため、一定のルールを作って、探してみることにする。
それは、
・観光客が数多く来訪する場所は除外する
・スカイツリーの建つ墨田区と隣接する区に限定する
・夜景ではなく、昼間の姿に特化する
勝手なルールを設定しているので、ご容赦いただくとして、今回は、墨田・台東・荒川の3区の「普段着」を紹介していこう。
墨田区の風景
台東区の風景
荒川区の風景
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長