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データでインバウンドや国内旅行をひも解く、じゃらんリサーチセンターが観光振興セミナーを開催

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 リクルートの観光に関する調査・研究、地域振興機関であるじゃらんリサーチセンター(JRC)はこのほど、地域の未来を拓く観光戦略などを伝える「観光振興セミナー2024 地域Meeting~地域でつくる、地域のミライ~」を全国7会場で開催している。自治体関係者や観光振興に関わる人が対象。「じゃらん観光国内宿泊旅行調査2024」からひもとく国内の旅行実態、「インバウンド都道府県ポジショニング研究2024」に基づく地域ごとのインバウンド主要周遊ルートについてなど、データを活用しながら持続可能な観光に向けて研究員が解説する。

 同セミナーは、北海道から沖縄まで全7カ所で開催。プログラムは、沢登次彦JRCセンター長が「コロナ禍を乗り越えた地域の未来を拓く「観光戦略」について」を紹介するほか、JRC独自調査データの共有として「国内編:じゃらん観光国内宿泊旅行調査」「インバウンド編:インバウンド都道府県ポジショニング研究」を披露する。また、事前に集めた質問にJRCが答える地域戦略推進のためのQ&Aセッションを設けている。

 今後は、8月27日に沖縄Meeting、8月28日に九州Meeting、9月2日に関東・甲信越Meeting(2回目)の開催を予定している。申し込みは、https://jrc.jalan.net/seminar/4983/から。北海道、東北、東海、関西・北陸、中国・四国での募集は締め切っている。

おう盛となるインバウンドや堅調な国内旅行に対しての戦略を披露

 7月26日に開かれた関東・甲信越Meetingでは冒頭、大野雅矢旅行Division VicePresidentが、「観光需要は急回復している一方、観光DXや人材不足など新たに向き合わなければならない課題が出ている。地域の観光産業の発展の道筋を一緒に考えていきたい」とあいさつした。

大野雅矢旅行Division VicePresident
大野旅行Division VicePresident

 後援する観光庁からは、河田敦弥観光戦略課長が登壇し、「インバウンドが周辺にあふれる状況が戻ってきたが、コロナ禍を経て質が変わ2024年の上半期ではインバウンドの消費額が3.9兆円と過去最高となった。加えて、国内旅行においてもコロナ禍前の消費額は22兆円だったが、昨年の時点で同様まで戻り、今年はこれを更新することを期待している」と現況を紹介。今後に向けては、「オーバーツーリズムや人手不足、三大都市圏への観光客の集中といった課題に対して、地方への観光客の分散といった取り組みを進めていきたい」と話した。

観光庁の河田敦弥観光戦略課長
観光庁の河田観光戦略課長

 沢登JRCセンター長は「コロナ禍を乗り越えた地域の未来を拓く『観光戦略』について」と題して、国内・インバウンドに関する観光の状況と、地域誘客視点での持続可能な観光戦略について解説。地方誘客を成功に導くためには「誰が、何を、何のためにやるのか」の3つの視点を挙げ、「圧倒的な当事者意識を持った民間のリーダーシップ」「観光事業者と地域住民の、生活水準と誇りの向上に向けたウェルビーイング」などの必要性を説いた。また、地方誘客につながる7つのポイントとして、①独創性を生かす②地域住民の観光理解を高める③高付加価値を起点とした稼ぐ好循環サイクル④伝える力を身に付ける⑤テクノロジー導入&データ利活用⑥2次交通網を整える⑦地域の観光人材の確保・育成・定着―を挙げた。

沢登JRCセンター長
沢登JRCセンター長

 森戸香奈子主席研究員は、じゃらん観光国内宿泊旅行調査2024の結果に基づいた日本人の旅行実態を解説。国内宿泊旅行の傾向として、「ひとり旅」は世代を問わず男性が多く、18~29歳の女性は「友人との旅行」が4分の1を占めていること、「夫婦2人での旅行」においては60~70代男性で4割以上となっていることなどをデータで示した。国内宿泊旅行の目的については、「テーマパーク」は18歳~40代、「スポーツ観戦や芸能鑑賞」は18~29歳女性、「温泉や露天風呂」「名所、旧跡」まちあるき」自然鑑賞はシニア層に人気があることを明かした。また、かけられた費用については、18~29歳男性の現地消費額が最も高い一方で宿泊・交通費は抑え目であること、年代が上がるほど宿泊・交通費が高くなる傾向を示した。このほか、都道府県におけるテーマ別ランキングや、宿泊先都道府県の顧客ロイヤルティ指標「Net Promoter Score」(NPS)に関する調査、宿泊旅行目的によって都道府県をタイプ別に分けるクラスター分析の結果などを披露した。クラスター分析においては、「『宿+温泉+α』『名所観光地方都市』の2クラスターにおいては、差別化が難しい」と結果を報告した。

 松本百加里研究員は、インバウンド都道府県ポジショニング研究2024について解説。都道府県ごとのエリア特性や都道府県ごとの主要周遊ルートについて紹介するほか、インバウンドマーケティングデータを活用した事例を共有した。松本研究員は、インバウンド10市場エリアルート戦略タイプ分類や市場別の全国主要周遊ルート概要MAPなどを披露しながら、「全国主要周遊ルートに入っているか」など周遊ルートからの距離から見た戦略立案、ターゲットの選定の必要性を説いた。検討ルートの見せ方のコツについては、主要駅から人気スポットへの具体的なアクセス手法や時刻表、荷物置き場などの明確な表示、プラスワンスポットを用意した3スポット以上での周遊促進を挙げた。また、ルート注力ポイントとして、マップで可視化するなど主要周遊ルートをつなげてのPR、旅程全体ルートを意識して他スポットとの異なる魅力をPRすることを提案した。このほか、「箱根フリーパス」の活用事例、福岡県で行ったインバウンドマーケティング戦略検討の実証事例などを示した。

 研究発表後には、沢登センター長、森戸首席研究員、松本研究員に髙橋佑司地域創造部部長を加えてQ&Aセッションを実施。「高付加価値化」「観光人材」「ウェルビーイング」「国内観光旅行」「観光客の分散」「差別化」「他地域との連携」の7つのキーワードについて、事例や知見による課題解決手法などを紹介した。

Q&Aセッションの様子

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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