お江戸の郊外、桜の名所「飛鳥山」、ここは、渋沢栄一が終の棲家とした場所です。徳川吉宗の時代に桜の植樹を行い、新たな行楽地として、発展しました。
その飛鳥山周辺を俯瞰する建物が、1990年に完成します。北とぴあ(ほくとぴあ)と名付けられた北区役所も入居する複合文化施設です。
その目的は、「北区の産業発展と区民の文化水準の高揚」とされました。王子駅東側貨物駅ヤード跡地に建設されたものです。そして、最上階は17階、展望ロビーになっています。
マニアにも好まれる景色
さて、展望ロビーには、三方向に窓が設えてあります。そのため、関東平野の眺めは格別です。南側は、眼下の飛鳥山公園から東京スカイツリーを見渡すことができます。一方、北側は、さいたま新都心から秩父連山、赤城山などが一望にできます。そして、東側は、筑波山をはじめとする関東平野の景色です。
また、新幹線を上から見下ろすことができる場所として、鉄道ファンにも人気のある展望スポットです。
東京は、丘と谷の連続地形と、これまで何度となく、書き記してきました。この展望台から俯瞰すると、その姿を理解することができます。飛鳥山は、上野から続く大地の終端地です。そこから西に目を向けると都心の摩天楼が見えます。しかし、そこにつながる町は、アップダウンしているのがわかります。
子供たちの学びにつながる
東京都内の役所の建物は、老朽化で移転建築が進みつつあります。既に、巨大で高層化されたビルに移転した役所も少なくありません。そのため、「税金の無駄遣いだ」などと反対される方は数多く見受けられます。
しかし、上層階に展望台を持つことは、地域住民へのサービス機能が向上し、さまざまな意味で、プラスに働くものと考えます。
その理由は、地域住民や次世代を担う児童生徒などが、そこから見る景色に触れることよって、地元愛が深まる可能性もあります。また、地域の歴史や文化に興味を持ち、地域を学ぶこともできるはずです。
このように考えると、「北とぴあ」から俯瞰するニッポンは、渋沢栄一の時代にはなかったものです。今の時代に生きていたら、先見性のある老翁も、さぞ、びっくりしていたことでしょう。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181