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誰もが俄かカメラマン~東海道新幹線「車窓」からの三大「富士山」~編集部が独断と偏見で選定する隠れた名所探しの旅<三大あるある・第3回>

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明けましておめでとうございます

 本年も引き続き、ツーリズムメディアサービスをご愛顧いただき、お読みいただけますよう、お願い申し上げます。

富士山は、縁起物

 さて、「一富士二鷹三茄子」と、初夢を見ると縁起が良いと言われる富士は日本一の山です。

 東海道新幹線の指定席は、圧倒的に「E席」が好まれるとも言います。それは、富士山が見える方向だからでしょう。そのため、車窓に富士山が映し出されると、車内は歓声や拍手が必ず起こると言っても過言ではありません。また、シャッター音の嵐などという時もしばしば・・・。

 訪日外国人が日本にやって来る最大の理由が「富士山を見たい」と言われています。それ故、河口湖や箱根に宿泊する方が大多数です。

 一方、日本人も例外がないほど、富士山が好きと言えます。SNSには、必ずと言っていいほど、富士山の画像がアップされています。

 そのような万人に好まれる富士山、車窓から見ることができる三大富士山を編集部が独断と偏見で選んでみました。

「カラフルな一戸建てが目印」

~丘に建並ぶ平塚日向岡住宅越しの富士山~

 (東京駅出発から約28分)

「カラフルな一戸建てが目印」~丘の斜面に並ぶ平塚日向岡のビバリーヒルズ
「カラフルな一戸建てが目印」~丘の斜面に並ぶ平塚日向岡のビバリーヒルズ

 新横浜と小田原駅の駅間は、かなり長く、相模川橋梁辺りに新駅を作りたいと周辺自治体である藤沢市と平塚市は、JR東海と交渉していますが、なかなか実現に至りません。のぞみ号は、この辺りでスピードアップをします。乗客もひと段落したのか、眠りにつく人も少なくありません。

 相模川を渡った辺りから右手前方に富士山が見えてきます。東側ではありますが、積雪は早い時期から多く、綺麗な姿を見せてくれます。

 ほどなく、丘の傾斜面にカラフルな色合いの分譲住宅が見えてきます。同じ形の住宅がひな壇のように並び、誰が言い出したかわかりませんが、「平塚のビバリーヒルズ」と呼ばれています。1979年に東急電鉄が造成を開始し、1985年から分譲が始まりました。

 目を引く三角屋根が並ぶ姿は、畏怖を感じる方もいらっしゃるとか・・・。

 約1,000世帯2,500人弱の人々が住まう日向岡(ひなたおか)住宅、新幹線から見られることを意識した町づくりの成果と言えます。

「カラフルな一戸建てが目印」~丘の斜面に並ぶ平塚日向岡のビバリーヒルズ
「カラフルな一戸建てが目印」~丘の斜面に並ぶ平塚日向岡のビバリーヒルズ(GoogleMapより転載)

「白と青の煙突が目印」

~誰もがカメラマン・岳南定番スポットの富士山~

 (東京駅出発から約46分)

 (冒頭の写真は「富士川鉄橋」付近、東京駅出発から約48分)

「白と青の煙突が目印」~誰もがカメラマンになれる岳南の定番スポット
「白と青の煙突が目印」~誰もがカメラマンになれる岳南の定番スポット

 のぞみ号が熱海駅を通過し、新丹那トンネルを抜けると心がワクワクしてきます。ほどなく、三島駅を通過しますが、既に進行方向右側には、その雄姿が見えています。しかし、引込線やビル群によって、遮られてしまううちに、富士山は、また、姿を消します。

 再び、見えてくるのは、山の中腹に東名高速の高架道が見えてくる辺りです。

定番スポットたる理由は・・・

 そして、裾野が広がりを見せる辺りを、勝手ながら「定番スポット」と名付けています。目印は、先端に青色を配した白い煙突です。この辺りは、電柱の間隔も長いように感じます。なおかつ、電線が車窓の上方にあるため、誰が撮ってもうまく撮れるスポットです。しかし、下り列車の手前には、4分間隔で上り列車がすれ違います。不幸にも、この場所で列車とすれ違がった場合は、不運を嘆くしかありません。

 ここを過ぎると、富士山は徐々に車窓の後方に移動していくので、写真を撮るにも無理な態勢になります。また、線路沿いには、紙パルプ工場などが迫って来るので、思ったような写真を撮ることができません。

 そして、新富士駅を通過すると、まもなく、富士川鉄橋を越えていきます。時間にして、定番スポットから2分ほど。体を思いっきりひねって、最後の1枚を撮影しましょう。鉄橋を渡るとすぐにトンネルに入ります。次に富士山の姿が見えるのは、静岡駅の手前で、真後ろになります。

「白と青の煙突が目印」~誰もがカメラマンになれる岳南の定番スポット
「白と青の煙突が目印」~誰もがカメラマンになれる岳南の定番スポット(GoogleMapより転載)

「安倍川が目印」

~ほんの一瞬・A席から見える富士山~

 (東京駅出発から約56分)

「安倍川が目印」~ほんの一瞬、A席から見える駿河富士
「安倍川が目印」~ほんの一瞬、A席から見える駿河富士

 のぞみ号は、静岡駅を通過します。その手前、在来線の草薙から東静岡駅では、真後ろに富士山を愛でることができます。しかし、ほとんどのお客さまは、その姿に気付くことはありません。ほどなく、安倍川を渡ります。富士山は、進行方向右側と思っていると、この辺りは唯一「A席」側に見えてくるのです。

 この区間は、静岡の市街地であるため、線路脇の防音壁が、高く長く続いています。そのため、富士山も見え隠れしながら、トンネルに吸い込まれてしまいます。

江戸時代には、既に・・・

 歌川広重が東海道を描いた浮世絵に「由比」宿というものがあります。由比は、街道を挟んで右側に富士山が見えるところ。「右富士」とも言われています。また、由比と興津宿の間には、薩多峠(さったとうげ)という山が太平洋に迫っている場所があります。現在でも展望台があり、眼下には東名高速と在来線、そして、その先に富士山という絶景でもあります。新幹線は、この峠をトンネルで抜けるために、見ることができません。

 では、上り列車の場合は、どのような感じでしょうか。焼津のとある旅館が山上に見えた後、トンネルを2つ抜けたところで、右手前方にかなり長い時間、その雄姿を見ることができます。体をひねることは必要ないですが、トンネルを出た直後ですので、注意が必要です。

「安倍川が目印」~ほんの一瞬、A席から見える駿河富士
「安倍川が目印」~ほんの一瞬、A席から見える駿河富士(GoogleMapより転載)

観光には、正解がない

 人間は固定概念を払拭することが困難な動物です。「こう、見える」「ああ、できる」ということが正論のように感じてしまいます。しかし、観光には、ある意味、正解がありません。

 訪日外国人が2,000万人を超えた時も「こんなに早く目標は達成できない」などといった否定的な論調も多数ありました。

 正解がないからこそ、独自の正解を生むことができるのではないでしょうか。日本中にそのような観光地はたくさん埋もれています。そう考えると、チャレンジすることが、観光の未来に一石を投じることができるよう感じます。

おまけ

「東京外環道が目印」

~北に向かう新幹線・戸田東IC越しの富士山~

 (東京駅出発から約18分)

「東京外環道が目印」~北に向かう新幹線から見える戸田東IC越しの富士山
「外環道が目印」~北に向かう新幹線から見える戸田東IC越しの富士山

 車窓の富士山は、東海道新幹線の専売特許のように思われがちです。しかし、これも固定概念の一つです。そう、北に向かう新幹線も、その雄姿を見せてくれる場所があります。王子付近を過ぎると本郷台地は途切れ、関東平野の中に入っていきます。線路沿いのビルの間にちらほらと、その雄姿が見えてきますが、少しばかり距離は遠く、気をつけていないと気が付きません。また、朝の時間帯は、逆光となるため、霞んで見えることが少なくありません。

 しかし、荒川を渡った辺りから、視野が広がると、優雅な姿が出没します。その絶好の場所は、東京外環道と新幹線が交差するところです。朝は渋滞の車の向こうに、また、夕方は富士山の方角に日も沈みます。タイミングが合えば、ダイヤモンド富士も車窓から見ることができます。

 写真は12月、上越新幹線で新潟に向かう際に、朝と夕方、双方の姿を撮影してみました。残念ながら、ダイヤモンド富士には、なりませんでしたが・・・。

「東京外環道が目印」~北に向かう新幹線から見える戸田東IC越しの富士山
「外環道が目印」~北に向かう新幹線から見える戸田東IC越しの富士山(GoogleMapより転載)

富士山への憧れ

 歴史上の偉人たちは、富士山の雄姿を自分たちの姿とダブらせていたのではないか。などと思ってしまうことが多々あります。

 例えば、平将門、自らを新皇と称し、関東平野を駆け巡っていました。そして、東国の新たな国を作ることを夢見ていたのでしょうか。

 また、徳川家康も、その亡骸を駿府の東照宮に祀り、一年後に日光に東照宮を作らせました。不思議なことに、二つの東照宮と富士山は一直線上に並んでいるとも言われています。その当時は、ほとんど遮蔽する建物はかった時代です。ゆえに、富士山を自らの分身だと思っていたのかもしれません。

 富士山はその形をコニーデ火山と言います。そのため、フォルムがとても素敵です。その結果、万人から好まれる景観なのでしょう。また、日本中に「〇〇富士」と名付けられた山々がたくさんあることも、その理由と言えます。富士山と同じ姿をイメージして、その山を敬うことが行われてきたのです。まさしく、世界文化遺産たる由縁ですね。

 空の上から俯瞰しても、地上から見上げても、やはり、富士は日本一の山です。特に、空気が澄んだ冬場は、絶好のチャンスです。是非、車窓からの富士山撮影、チャレンジしてみてください!

おまけのおまけ

 俯瞰するニッポン(その12)は、航空機から見る富士山です。

 よろしければ、こちらもお読みくださいませ。

(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8

取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

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