“地域間交流拡大”を強力に推し進め、地域の活性化に向けた課題解決に取り組む地域連携研究所(濵田健一郎理事長)は11月22日、「第6回地域連携研究所大会 in 加賀」を石川県加賀市山代温泉のみやびの宿加賀百万石で開いた。全国から国・自治体や観光関係者ら約260人が出席。備前焼と大館曲げわっぱといった伝統的工芸品を携えて出展した、4月15~28日にイタリア・ミラノで開かれた世界的デザイン展示会「ミラノ・フォーリサローネ」への出展報告や、今後の伝統的工芸品の海外展開に向けた議論を行うほか、会員企業・団体の報告から地域振興の取り組みを学んだ。
同大会では冒頭、地域連携研究所の浅見茂専務理事が参加者を紹介。主催者あいさつでは、地域連携研究所理事長代行でジェイアール東日本企画の赤石良治社長が「加賀で大会を行うことに2つの意義がある。1つは災害復興。厳しさが続く能登の震災だが、大会では創造的な復興、未来を検討するに当たり伝統的工芸品に焦点を当てる。単に工芸品を販売するのではなく、横に展開することで国内地域や、ミラノといった国際的な広がりが生まれる。伝統工芸品に食や観光を結んだKOGEIツーリズムといった新たな可能性もある。伝統工芸品にスポットライトを当てながら能登の未来へとつなげていきたい。2つ目は、物ごとを伝えていく、互いを補っていく力が加賀で大会を行う意義としてある。大会を輪島では開けないが加賀ではできることを見せられた。一方で、今後は事業承継がビジネスでの大きな課題として突きつけられるが、さまざまな発表の中にヒントがあるはずだ。さまざまな人の思いがあるが、このメンバーで新たな形を創出していきたい」と未来を見据えた。
地域連携研究所自治体会員会長である福原淳嗣衆議院議員(前秋田県大館市長)は、「自然災害は私たち人間を試す。1人1人の人間性が試練ではより赤裸々に感じ取れる。今の能登は、まさに私たち人間性が試されており、好機ともなる。日本が誇る歴史や物語をそれぞれの自治体がたくさん持っている。それらをつむぎ、つなぎ合わせることで、必ず未来を切り開いていけると確信している」とさらなる連携、行動を呼び掛けた。
地域連携研究所自治体会員共同会長である岡山県岡山市の大森雅夫市長は「先日にテレビで北前船が特集されていた。なぜ今、北前船を応援するのか。数年前には、北前船、高田屋嘉兵衛がテレビでも取り上げられていたが、再度取り上げられたのは北前船寄港地フォーラムが大きな要因となっているはずだ」と北前船の盛り上がりの波及に言及。大会、フォーラムに向けては、「いろいろな話や成果を聞けるとともに、新たにネットワークが広がる場である。地方創生へとつなげられる絶好の機会を生かして頑張ってもらいたい」と語った。
来賓あいさつでは、財務副大臣を務める横山信一参議院議員が「国会での質問など、伝統的工芸品の取り組みを支援する中で進展していることがある。経済産業省では伝統的工芸品を支援する伝統的工芸品産業支援補助金(伝産補助金)があるが、国内市場が縮小、売り上げが伸び悩む中で従来の対象は産地組合に絞られて広がりが見えなかった。岡山県備前市と秋田県大館市はミラノサローネに出展したが、市町村、都道府県といった自治体、個人事業主や法人なども交付対象へとする流れとなっている。これは、大きな流れを生む」と伝統的工芸品を取り巻く新たな環境を紹介。今後の取り組みに向けては、「ベルギーで盆栽センターを訪れたが、同センターの所長は日本に盆栽を入れる鉢を仕入れに来ているという。日本では農林水産省が盆栽輸出を積極的に取り組んでいるが、鉢と盆栽は別だ。和食も料理と皿が別で展開しているが、本来は一体的に取り組めばより効果がでる。国会の中でも取り上げ、伝産補助金の項目の中に和食文化を担う伝統工芸品の1文を入れてもらった。一体的な取り組みの一角を取り崩したぐらいだが、伝統工芸品が周りのものと一緒に発信、展開される取り組みは支援していく」と縦割り行政の壁を崩した一体的な取り組みの支援の必要性を説いた。北前船交流拡大機構、地域連携研究所に向けては、日本の各地域が海外へ打って出る際のプラットフォームに成り得る組織であると今後の取り組みへ期待を示した。
観光庁参与(元観光庁長官)で地域連携研究所の田端浩特別顧問は「地域には抱える課題がたくさんある。最近は、地域都市においてはモビリティ関係が大きく遅れており、この改善をいろいろな手法で取り組んでいかなければならない。利用者目線で言えば、マイカーを持っている住民は良いが、観光客を含めて内外から訪れる人の移動が不便となっている。まさにこのような問題を取り組みの意見交換、アイデア交換をするなど地域が連携して進めていくことが必要になる」とさまざまな分野での地域連携を呼び掛けた。また、タッチ決済やふるさと納税などデジタル通貨の活用が進んでいることに触れ、購買・分析データの活用が新たな観光政策の立案につながることを説いた。
新潟県の花角英世知事(代読:新潟県観光文化スポーツ部の前川翔副部長)は「北前船の寄港地間の交流のみならず、地域間の交流促進や地域活性化、国内外からの観光誘客拡大に向け、さまざまな関係機関と連携しながら取り組まれておりますこと、深く感謝する。新潟県では佐渡の金山について、今年7月に世界遺産委員会において、普遍的な価値が認められ世界文化遺産として登録された。今後もさらなる交流人口の拡大に向けて、国内外の地域と連携を深めていく。大会では、地域連携の最新の取り組みを共有し、新たなエリアが創出される場となることを期待している」とメッセージを寄せた。
木下グループの木下直哉社長兼グループCEO(代読:木下工務店の田中耕三郎社長)は「皆さまと地域振興や持続可能な社会の実現に向けた議論ができる機会をいただき感謝している。能登半島地震、豪雨災害で被害を受けた皆さまに心からお見舞い申し上げる。地域の発展には経済的支援だけでなく、環境保全や社会的責任を担うことが求められる。地域住民、企業、行政が一丸となり、持続可能な社会を支えるための取り組みを強化し、次世代に向けた責任を果たしていかなければならない。木下グループも地域との連携を強化し、ともに学び、ともに成長していくことで、よりよい地域社会の実現を目指して努力していく」と思いを伝えた。
KOUGEIツーリズムの本格展開など、伝統的工芸品の価値を打ち出して販路へつなげる
大会は2部で構成。第1部では「伝統的工芸品の海外展開等~これまでとこれから~」をテーマに、岡山県備前市の𠮷村武司市長と秋田県大館市の石田健佑市長、ミラノデザインウィーク出展コーディネーターを務める渋谷区観光協会の小池ひろよ理事・事務局長、欧州連合日本政府代表部の二宮悦郎参事官、観光庁観光地域振興部の竹内大一郎観光資源課長の5人が登壇。それぞれが各立場での取り組みや、支援の在り方などを説明した。
𠮷村市長は、備前市の魅力として、①1000年の歴史を持つ無釉薬の唯一無二の焼き物である「備前焼」②日本最古の庶民のための教育施設である「旧閑谷学校」③江戸から明治時代にかけての重要な貿易拠点だった「北前船寄港地」―の3つの日本遺産や、カキ・フルーツ・水餃子といったグルメを披露。備前焼については、伊勢﨑淳氏など国指定重要無形文化財保持者など人の魅力や、伊部の街を舞台に約6万5千人が来場した「第40回備前焼まつり」、海外から41点を含む321点の作品応募があった「備前・現代陶芸ビエンナーレ2024」などを紹介した。また、ミラノ・フォーリサローネの出展について報告。会場のデザインはプロダクトデザイナーである喜多俊之氏が務め、大館市の曲げわっぱと共同で展示を行った。会場には約37万人もの人が来場した。5月18日~6月17日にはフランス・ドイツで海外展覧会を開いている。今後は、フランス・ドイツ・モナコなどヨーロッパ各地で海外展覧会を開く予定だ。目指すべきものについては、国内外へのブランディングと販路の開拓を挙げ、「世界に誇れるアート作品が備前にはある。世界に誇れる伝統工芸、北前船精神を世界へと広める」と語った。2025年年春には今様北前船として「備前丸」の運航が開始される予定。
石田市長は、大館曲げわっぱを世界に披露したミラノフォーリサローネでの出展など、海外での伝統工芸品を生かした取り組みを報告。喜多俊之氏によるセミナーや、ミラノ大学学生と作家との交流、秋田犬セミナーを行ったことなど、成果を披露した。「世界中で愛される『秋田犬』だが、ヨーロッパでの人気も高い。秋田犬保存会ヨーロッパクラブとの交流も行ったが、秋田犬が世界との懸け橋になる」と秋田犬のポテンシャルの高さを示した。また、7月12~27日には、ミラノで「日本の伝統技術を現代の生活に進化させる」をコンセプトに、永く使い続けられる、素材が持つ手触りを大切にしたものづくりを追求するショールーム「Time & Style」で特別展示を行ったことを紹介した。オープニングレセプションには、小野敏明ミラノ在日本国総領事やJETROなどが列席。「大館曲げわっぱのぐい呑みによる地酒の提供は大盛況だった」と述べた。10月12~20日には陶芸家の平井智一氏を迎え、イタリア・フィレンツェで十月日本祭にも参加した。今後は、忠犬ハチ公が暮らした東京・渋谷との連携するなど、国外からの人流の構築を図る。
小池理事・事務局長は、北前船交流拡大機構・北陸復興支援プロジェクトとして進められるミラノデザインウィーク出展について説明した。イタリア・ミラノで開かれる世界的なデザインの祭典「ミラノデザインウイーク」は、毎年ミラノで開かれる世界最大規模のデザイン見本市「ミラノ・サローネ」および周辺イベント「フォーリ・サローネ」を総称したもので、2025年4月8~13日に開かれる。2024年は約37万人が来場し、1950社以上が出展している。「日本の伝統工芸品を単なる工芸品ではなく、デザインを掛け合わせたアートとして見せていく切り口としたい」と戦略を述べた。また、欧州において日本企業である佐勇が運営する日本文化発信拠点「TENOHA MILANO」、福井県の越前焼、越前漆器など工芸品を東京・六本木に店を構えるセレクトショップ「g KEYAKIZAKA」でのPOP-UPについて紹介。「北陸地方や東北地方の伝統工芸品をしっかりアートとして、また売りにつながる販路としてギャラリーとつながるなど、接点づくりを強化していく。丁寧なアプローチの積み重ねで規模と持続性のある取り組みとしながら、北陸の創造的復興にもつなげていきたい」と語った。
二宮参事官は、「伝統的工芸品の欧州展開について(ミラノ・フォーリサローネ後の展開)」をテーマに発表。伝統工芸品が売れなくなった原因として、日本人がアートを買わないこと、抑制的な値付け(民藝運動)、ライフスタイルの変化、購買力の低下を挙げ、地方経済の衰退や自信喪失につながっていることに言及。「伝統工芸品を取り巻く外部環境は変わり、大量生産など『量』からユニークや持続可能性(グリーン)など『質』へと変わっている。伝統は革新の連続であり、伝統工芸品はまさにイノベーションを起こさんとしている」と時代の変化に対応することが急務であることを説いた。世界のアート市場については、富裕層が資産の5%をアートに振り分けるなど、巨大な現代アート市場が形成されていることを紹介した。「日本には存在しない領域だが、欧州や米国ではアート市場が経済をけん引している。欧州では、歴史や背後にあるストーリーに価値を見出す傾向が強い」と、成功を収めるためのヒントを伝えた。一方で、欧州ではまだ陶磁器を芸術としては捉えられていないことの原因として、歴史文化や技術の厚みに裏付けられた伝統工芸品の競争力が顕在化されていないことを挙げた。目指すべき方向として、富裕層ビジネスを視野に入れたアートフェアの活用、欧州のデザイナーとのコラボレーションを試みるなど、世界のアート市場で勝負できる世界戦略の必要性を訴えた。また、やるべきこととして、①意欲ある者同士での力の結集②スター選手によるけん引で希望、持続可能性の確保③全員野球④制度改正に向けた運動―を挙げ、「文化がビジネスになる」と強調した。
竹内観光資源課長は、伝統工芸品や食文化を目的としたインバウンドを受け入れるための地域の取り組みや支援について発表した。インバウンドの消費傾向の変化として、モノ消費からより本物を追求する消費者が明確になっていることに加え、コンテンツとして「自然」「文化」「飲食」のほか、「職人」が注目されていることを紹介。世界の富裕層から「職人の技」が注目されており、JNTOが今秋に海外のラグジュアリートラベルのコンソーシアムに加盟する旅行会社を招聘し、北陸、瀬戸内内地域へ「職人技とアート」をテーマに福井県の和紙工場などを見学したこと、観光庁によるビジネスフォーラムと視察を合わせて北陸で支援事業として行ったことを報告した。また、各地域の伝統的工芸品を使った観光コンテンツづくりとして越前や燕三条、高岡、佐世保などで職人とのふれあいや製作体験、ECサイトの構築などの支援を行っていることを説明した。伝統的工芸品は241品目ある中、北前船関連の会員は81自治体あり、伝統工芸品を持つ自治体は19あることを示しながら、「大きなうねりを作る枠組みとして19全ての自治体で『KOUGEIツーリズム』の商品化を進めてはどうか」と工芸品コミュニティの機運醸成を提案した。食文化については、気候風土が生んだ食材・週間・伝統・歴史などで育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的とした「ガストロノミーツーリズム」における福井県・三方五湖などでの取り組み事例を披露した。「食は食べるだけでなく、背景を掘り下げながらストーリーづくりもしてほしい」とコンテンツ造成のポイントを示すとともに引き続き支援をしていくことを述べた。
第1部を総括して、内閣府地域活性化伝道師で跡見学園女子大学の篠原靖准教授が「備前市、大館市が先んじて世界に対して伝統的工芸品の価値を打ち出した。次は販路をしっかりとつなげていくことが課題となっているが、今回の大会でその難しいステージにチャレンジしていくことが明確となった。KOUGEIツーリズムは1年前からの岡山大会からも観光庁にお願いしてきたが、いよいよ本格的な展開が国を挙げて動き出す状況となってきた。現政権では地方こそ成長の主役と述べ、地方創生交付金を倍増するほか、新しい地方創生生活環境創生本部といった動きが発表されるなど、地方創生が本格的に動き出す」と、地方の時代を迎え、今が好機であることを呼び掛けた。北前船交流拡大機構や地域連携研究所の活動については、「15~17世紀には大航海時代があったが、北前船も地方から世界への交易を担っていた。新たな時代を迎える中、支援や連携を広げ、大きな流れを生んでほしい」と話した。
地方が直世界に打って出ることの価値を認識・共有
第2部では、自治体や団体・企業から7人が登壇し、地域振興などの取り組みを紹介した。秋田県大仙市の老松博行市長は「大曲の花火 世界への挑戦」をテーマに、北前船による地域発展と全国花火競技大会である大曲の花火の取り組みや構想を披露。老松市長は大曲の花火の起源として、北前船交易による繁栄を背景に諏訪神社の祭典の余興として「奥羽六県煙火共進会」が開催されたことを紹介。「大曲の花火は今年で第96回を数え、日本一を目指す競技大会として日本最高峰の花火大会である」と強調した。花火を核とする地方創生策「花火産業構想」を2014年に策定し、大曲の花火ブランドを生かして観光、商工業、農業などの活性化を図っている。今年はモントリオール国際花火競技大会に出場し、初出場で銅賞と特別賞(環境配慮)を受賞するなど世界への発信にも取り組んでいる。今後に向けては、「皆さまに感動を届け、日本の観光振興に貢献する。『伝統と革新』の意識でさらなる高みを目指す」と挑戦し続ける姿勢を示した。
秋田県仙北市の田口知明市長は「仙北市の観光とグリーンツーリズム」をテーマに、ディープな観光の実現として農泊の取り組みを披露した。観光客数、宿泊者数とも最盛期まで戻っていないが、2024年のインバウンド数は増加傾向にあり、特に農家民宿宿泊者数は2024年には2023年の343人を大きく超える3283人(全体も1万7771人と増加)に達していることを紹介。農家民宿数は35軒となっている。飛躍の要因として、2008年からグリーンツーリズムの窓口となり旅行業を展開する仙北市農山村体験推進協議会が立ち上がるほか、仙北市役所内には農泊と国際観光の専門部署「交流デザイン課」があり、官民一体で農泊を柱に誘客展開していることを挙げた。「2012年からは台湾教育旅行の誘致を始めるなど、農家民宿への宿泊を伴う国際教育旅行で実績を上げてきた」と成果を示し、国内での農泊の取り組みが評価されて総理官邸から評価をもらうなど、各賞を受賞していることを明らかにした。また、仙北市の伝統的工芸品として、「秋田県を代表する角館の革製品がある。武士の内職で発展した技術であり、世界に発信したい」と新たな展開も述べた。
長崎国際観光コンベンション協会の股張一男常務理事は、「長崎市の食と観光の高付加価値化への挑戦~選ばれる21世紀の交流都市を目指して~」をテーマに発表。長崎が江戸時代に西洋に開かれた唯一の窓口であったことを挙げ、「21世紀の選ばれる交流都市」を標ぼうする長崎市が、世界へ食材・食文化の魅力を発信していく価値と使命を果たすために行動していること語った。また、新幹線やMICE施設の開業、長崎スタジアムシティが開業するなど、100年に一度のまちの変革期が好機であると説き、「世界文化遺産である和食を中心とした長崎の食と観光の高付加価値化、長年の課題であった地場産業の発展・地域活性化、世界へ向けた観光の強力な魅力を発信する」と強調した。今後は、①長崎の食材・食のブランド化と価値創造②食と観光による富裕層の顧客創造③オール長崎での「食と観光」推進④長崎の食材・食の消費拡大、ふるさと納税の増加―を通じて世界に選ばれる長﨑の食と観光の実現を目指す。また、2025年度から3カ年での卓袱料理(料亭)や和食・中華・洋食を通じた計画を練っている。「食文化と観光資源を観光と交流の文化で最大限生かしてストーリー化するとともに、量より質の取り組みを進めて旅行消費額を拡大するなど、地域の経済再生を図っていく」と先を見据えた。
アミナコレクションの進藤さわと社長は、「地域産業との商品開発の取り組み、呼子での地域活性化の取り組み」をテーマに発表した。同社は、佐賀・呼子で「呼子プロジェクト~鯨の町おこし」を展開。創業者である進藤幸彦氏が展開した「よみがえらせよう!『幻の曳山』プロジェクト」を引き継ぎ、2025年秋には、かつては捕鯨の頭領であった「中尾甚六」にちなんだ古民家を組み込んだ分散型ホテル「中尾甚六HOTEL呼子港町」を開業することを紹介。館内には、地域の歴史や特性を、サウナのコンテンツに盛り込んだ唯一無二の施設として「甚六SAUNA」を設ける。また、唐津や呼子の季節の果物が堪能できる空間として「呼子 甚六果実店」を2025年4月、呼子の鮮魚と旬の食材が楽しめる食堂として「魚と出汁 呼子甚六食堂」を同7月に展開する。「私もおもしろいことをやってみたい、地元の自分たちが立ち上がろうというムーブメントの『火付け役』となり地元主体の活性化と好循環につなげる」と呼子らしくカッコよい店舗群を開発し、呼子観光の活性化を図ることを約束した。
日本スポーツ政策推進機構の河野一郎理事長は「スポーツの現在地を考える」を題に、日本スポーツ百年の歴史や、2011年に制定され、スポーツ庁創設とオリンピック・パラリンピックの東京大会開催が意図的に書き込まれた「スポーツ基本法」などを解説した。河野理事長は100年を振り返りながら「スポーツが驚異的に発展したと同時に、政治的、経済的、文化的にも大きな影響を与えるようになった」と伝えた。また、スポーツの現在地を考える上で変化する社会課題を捉えたスポーツ政策の必要性について言及。かつては肥満が問題だったが、現在はやせている女性が増えていることや、eスポーツの立ち位置などを例に挙げ、「スポーツ界が課題を捉え、他の団体も交えながら議論し、一緒に社会課題の解決に取り組んでいかなけらばならない。これが社会開発や市場創造につながり、見過ごせば日本のスポーツがガラパゴスかとなってしまう」と訴えた。
フォーシーズの光岡健世取締役専務執行役員は、「ピザーラ地産地消プロジェクトによる地域振興」をテーマに、飲食ブランド59業態を展開するフォーシーズやピザーラの歩みのほか、「地産地消ピザプロジェクト」について紹介した。地産地消プロジェクトは、地域の資源・特性を活かしたピザ開発・プロモーションを行い地域経済に貢献する活動。地方自治体・団体を含め32道府県で活動が行われている。プロジェクトは、①地元食材の消費促進(フードロス防止含む)②地域振興への貢献③地域間交流とネットワーク構築—の3つを目的として掲げている。取り組みの事例として、能登半島地震の復興活動第1弾となった輪島ふぐを使ったビザの開発や、徳島県で産学連携で行った阿波尾鶏を使ったビザの開発など高校生との地産地消の取り組み、福島県浅川町で地域おこし協力隊と浅川町産ブロッコリーとトマトのピザを開発した町おこしでの地産地消の取り組みなどを披露した。光岡専務は「自治体の皆さまに何かをプラスした三位一体の取り組みを進め、一過性でなく継続性ある仕組みを作っていきたい」と話した。
ANA総合研究所の森健明副社長は「London Business School(LBS)との取り組み~世界が注目する北陸の魅力~」をテーマに発表。LBSはロンドン大学に所属する世界トップクラスのビジネススクールとして、経営学や戦略を学ぶ学生に最適な環境を提供するなど、日本からは起業が人材を派遣している。日本人の生徒を中心とした「ジャパンクラブ」の活動があり、海外に日本の情報を発信する役割を担っている。2023年度には「将来の富裕層となるZ世代が考える訪日旅行の魅力発信」をテーマとなり、企画コンペティションが開催された。1位には、「東北の魅力」を提案したチームが優勝し、優勝チームが今年2月に研究地域である秋田、観光庁を訪問。ANAグループでは研究発表ウェビナーが開かれた。今年は、企画提案対象地域として北陸が選ばれ、北陸への訪日誘客策の提案が題として課された。取り組みに共鳴した他のビジネススクールを含めた合計3校35チームが参加している。「100人以上が北陸の情報をあらゆるツールを使って調べている。当然震災のことを調べているが、世界から見た北陸の魅力というものが見えたらいい。観光はまだまだというところもあるが、新しい復興の中に観光基準の復興も当然あっていいはずだ」と呼び掛けた。
閉会あいさつでは、地域連携研究所企業会員共同代表で日本航空の柏頼之取締役専務執行役員が「中身の濃い力強い発表をいただいた。多くの気付き、そしてエネルギーに勇気をもらえたはずだ。地方が直接世界に打って出ることの価値を改めて認識させられた。この大きな流れが今後の地域活性化のキーワードになってくる。インバウンドは絶好調だが、アウトバウンドは約7割と回復のまだ道半ば。アウトバウンドが増えることは、日本人が日本の魅力を発信することにつながる。そのような流れも作っていきたい」と総括した。