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25年11月に北前船フォーラムの長野・松本開催、石川・加賀のレセプションで発表

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能登半島地震、豪雨の被災地を激励

 江戸から明治にかけて海運を担っていた北前船をテーマに、寄港地連携、地域間交流での活性化を図る「第35回北前船寄港地フォーラムin 加賀・福井」、 “地域間交流拡大”を強力に推し進め、地域の活性化に向けた課題解決に取り組む「第6回地域連携研究所大会」のレセプションが2024年11月22日、石川県加賀市山代温泉のみやびの宿加賀百万石で開かれた。自治体や企業で構成する北前船交流拡大機構と、兄弟法人である地域連携研究所が主催し、全国から首長をはじめとした自治体や団体・企業など観光関係者ら約280人が出席。2024年元日に発生した能登半島地震や同9月に発生した能登半島豪雨の被災地への激励や、歓迎として石川県の伝統芸能「山代大田楽」の披露などが行われるなど、参加者が北前船を通じた各地の歴史や文化を語り合いながら地域間交流を行った。次回は、長野県松本市で「北前船フォーラムin信州まつもと」が2025年11月20日に開催予定。次回開催地を代表して、長野県松本市の臥雲義尚市長は「海のない山国から参加した。江戸時代までは海岸から内陸の町へ人間に欠かせない塩を送り、内陸からも採れた産物が海岸の町に送られた『塩の道』が盛んに利用された。越後の港町である糸魚川から信濃の城下町である松本までの道は日本で一番長く120kmあったという。海に囲まれた日本での海岸沿いの連携はもちろんだが、内陸からも世界へ物流の流れを活発化し、20世紀半ばから後半にあったような繁栄を作りだしていきたい」と来訪を呼び掛けた。

次回開催地あいさつをする長野県松本市の臥雲義尚市長
次回開催地あいさつをする長野県松本市の臥雲義尚市長

 レセプションの冒頭、歓迎アトラクションとして、石川県加賀市特命かがやき大使であるタレントのグッチ裕三さんが、応援ソング「きまっし加賀」を披露した。グッチ裕三さんは、「北前船の資料館を訪れたことがあるが、歴史に思いをはせるのはすごく楽しい」と仕事で1度訪れながらも、北前船の魅力を感じたことから再度にわたりプライベートでも資料館を訪れたエピソードを話した。

パフォーマンスを披露したグッチ裕三さん
パフォーマンスを披露したグッチ裕三さん

 開会に際しては、北前船日本遺産推進協議会会長で加賀市の宮元陸市長が「多くの皆さまの協力を得て、加賀市でフォーラム、大会を行い、レセプションを迎えられた。能登、輪島では少しずつ復旧が進んでいるが、フォーラムを通じて能登にエールを送り、メッセージが届いたはずだ」とあいさつした。

北前船日本遺産推進協議会会長で加賀市の宮元陸市長
北前船日本遺産推進協議会会長で加賀市の宮元陸市長

 石川県輪島市の坂口茂市長は「北前船の寄港地の一つ、震災を受けた被災地の一つとしてお礼を述べたい。震災では元日の風景が一変し、多くの大切な人をなくした。北前船寄港地フォーラムでつながり、またこの仲間からは温かい言葉をいただいた。改めて復旧、そして創造的復興を成し遂げる」と決意を新たにした。

石川県輪島市の坂口茂市長
石川県輪島市の坂口茂市長

 あいさつ後には、全国から駆け付けた自治体首長11人があいさつした。

11人の首長が登壇
11人の首長が登壇

 ①北海道函館市 大泉潤市長「北陸の復興の機運が高まる今、寄港地フォーラムが北陸で開催される意義に感銘を受けるとともに、過去の震災の経験からも全国の仲間がいかに大切かを痛感している。北前船という歴史と価値の中で、全国の50以上の自治体が横ぐしでつながることは本当に素晴らしい」

北海道函館市 大泉潤市長
北海道函館市 大泉潤市長

 ②北海道釧路町 小松茂町長「私は昆布漁師のせがれで北前船とは縁があり、毎回参加している。輪島市の坂口市長とは同じ茂の名を持つ。共に災害に強い町を作ってまいりましょう」

北海道釧路町 小松茂町長
北海道釧路町 小松茂町長

 ③北海道八雲町 岩村克詔町長「八雲町は明治11年に尾張藩徳川家により開拓された町。同家がスイスから木彫り熊を持ち運び、木彫りの町となった。あと4年で開拓150年になる。また、北前船がもたらした伝統があり、継いでいく」

北海道八雲町 岩村克詔町長
北海道八雲町 岩村克詔町長

 ④秋田県男鹿市 菅原広二市長「昨日は、なまはげが皆さまの積もった厄を払った。北前船の船主のように利他の気持ちで頑張っていく」

秋田県男鹿市 菅原広二市長
秋田県男鹿市 菅原広二市長

 ⑤秋田県由利本荘市 湊貴信市長「北前船にはなくてはならない名を持つ。フォーラムが加賀市で行われたことには大きな意義がある。7月には秋田や山形でも大きな豪雨があったが、能登の皆さんとともに復興に向けて取り組んでまいりたい」

秋田県由利本荘市 湊貴信市長
秋田県由利本荘市 湊貴信市長

 ⑥山形県酒田市 矢口明子市長「観光客に来ていただけることは力になる。坂田には出羽富士と言われる鳥海山や、日本遺産に代表される歴史と文化、おいしい食がある。日本で一番と言える地にお越しいただきたい」

山形県酒田市 矢口明子市長
山形県酒田市 矢口明子市長

 ⑦福井県美浜町 戸嶋秀樹町長「北前船大使であり美浜町出身の五木ひろしさんには、北前船寄港地の認定を受けたことを喜んでもらえた。フォーラムでは皆さまとのつながりができたが、次は美浜が誇る三方五湖の景観を皆さまに楽しんでいただきたい」

福井県美浜町 戸嶋秀樹町長
福井県美浜町 戸嶋秀樹町長

 ⑧長野県松本市 臥雲義尚市長「海のない町だが、フォーラムは沖縄、パリでも開かれた。日本の観光の裾野を広げる役割を担っている。天から降る雨は山から川を流れて海に行く。海の北前船フォーラムが日本全国に広がり、観光立国の礎を作ると信じている」

長野県松本市 臥雲義尚市長
長野県松本市 臥雲義尚市長

 ⑨岡山県瀬戸内市 武久顕也市長「瀬戸内市は、戦国武将である宇喜多直家の故郷であり、子の秀家が八丈島に流された時には石川県の皆さまに大変お世話になっている。瀬戸内市にも能登と縁をいただいている市民がたくさんおり、震災復興を願う気持ちをしっかりと届けていきたい」

岡山県瀬戸内市 武久顕也市長
岡山県瀬戸内市 武久顕也市長

 ⑩岡山県備前市 𠮷村武司市長「備前市は姫路城、法隆寺に次ぐ3つめの国宝でもある閑谷学校、日本六古窯で世界展開を進める備前焼、そして日本遺産が49番目に認定された北前船の3つの日本遺産を持つ。現在は北前船を建造しているが、ふるさと納税などを通じてぜひ皆さまからも支援をいただきたい」

岡山県備前市 𠮷村武司市長
岡山県備前市 𠮷村武司市長

 ⑪鳥取県鳥取市 深澤義彦市長「能登には学生時代にはよく遊びに行き、輪島には皆で泊まった地であり、北陸は第2のふるさとである。フォーラムは年々発展しており、北前船がつなぐ寄港地の発展を祈念している」

鳥取県鳥取市 深澤義彦市長
鳥取県鳥取市 深澤義彦市長

 来賓からは、小泉進次郎衆議院議員が「私の選挙区である三浦市では、港町が漁業だけでは食ってはいけないことから、農業、観光業、商工業ともつながり、海業として盛り上げなければならないと訴え続けてきた。そして、水産庁には計画・海業政策課ができるところまで至った。北前船の縁を通じて寄港地が海業の政策でも元気になるよう自民党の水産総合調査会長として頑張っていく」とあいさつした。

小泉進次郎衆議院議員
小泉進次郎衆議院議員

 浮島智子衆議院議員は、「フォーラムに参加をすると元気をいただける。ブエノス・アイレスでオリ・パラ招致が決まった時に当時の安倍晋三総理に提案して実現した日本遺産だが、進められているのは皆さまの努力のおかげだ。日本遺産オフィシャルパートナーシッププログラムも新たにスタートしたが、国内外に発信してさらに盛り上げていく」と日本遺産の展望を述べた。

浮島智子衆議院議員
浮島智子衆議院議員
第2次石破内閣で財務副大臣に就任した横山信一参議院議員に花束を贈呈
第2次石破内閣で財務副大臣に就任した横山信一参議院議員には花束を贈呈

 全日本空輸の矢澤潤子取締役常務執行役員は、「エリアには、福井県と石川県の玄関口である小松空港、道の駅と空港が一体型となったのと里山空港の2つがある。のと里山空港は防災道の駅として、簡易宿泊所として力を注いてきた。12月25日からは複便を果たすが、人流拡大、復興の加速が進むようにつなげていく」と話した。

全日本空輸の矢澤潤子取締役常務執行役員
全日本空輸の矢澤潤子取締役常務執行役員

 日本航空ソリューション営業本部の西原口香織副本部長・東京支社長は、「かつて海運の大動脈を担った北前船だが、人々の生活が豊かになる文化、産業を運び、育んだ。地域と地域を結ぶ取り組み、国内外を問わない人流の活性化、双方向の事業の活性化をさらに強力に推進していく」と対話や交流から人や物が自由に行き交う心が弾む社会、未来を目指すこと誓った。

日本航空ソリューション営業本部の西原口香織副本部長・東京支社長
日本航空ソリューション営業本部の西原口香織副本部長・東京支社長

 ペニンシュラ(半島)応援大使で女優の黒谷友香さんは、「北前船出発地である大阪が出身地だが、デビューしてまもなく房総半島にも家を持ち、二拠点居住をしており、コロナが明けてからは二拠点での暮らしをテーマに取材を受けることも多くなった。また、地方に呼んでいただくことで日本がコロナから回復していることを感じている。フォーラムは、多くの地域の人と交流を深められる貴重な機会だ」と北前船を契機とした新たな出会いに感謝した。

ペニンシュラ(半島)応援大使で女優の黒谷友香さん
ペニンシュラ(半島)応援大使で女優の黒谷友香さん

 乾杯のあいさつでは、北前船交流拡大機構理事長代行でジェイアール東日本企画の赤石良治社長が「昨日、今日と多くの学び、感動の話があり、つながりを感じた。北前船は本当に大きなプラットフォームである。素晴らしい北前文化を世界に発信していこう。そして、このパワーで北陸の災害復興を進めていこう」と乾杯の発声をした。

北前船交流拡大機構理事長代行でジェイアール東日本企画の赤石良治社長
北前船交流拡大機構理事長代行でジェイアール東日本企画の赤石良治社長
会場には約290人が参集
会場には約290人が参集

 歓談中には、大会の開催に尽力した20人に花束の贈呈が行われるほか、地元や参加地域、団体、企業らがあいさつ。

 北海道からのあいさつでは、約50人の参加者が登壇。代表して北前船交流拡大機構の浜名正勝参与が「6月に釧路を拠点にひがし北海道で開いた大会に来場いただき感謝している。本日からは石川、能登の皆さまと一緒に改めて復興を誓う」と述べるとともに、50人がアイヌ語で「アリキキ(頑張れ)」と石川、能登にエールを送った。

北海道からは約50人が参加
北海道からは約50人が参加

 JR西日本グループ(JR西日本、日本旅行)は、代表して西日本旅客鉄道の岡田学理事・マーケティング本部鉄道マーケティング部長が「寄港地には伝統工芸品など魅力的なコンテンツが多数あり、ポテンシャルも高い。寄港地を北前船というテーマで結ぶことはもちろん、各地域が持つコンテンツを新しいテーマやストーリーでつなぎ、新しいルートも提案していく」と寄港地への誘客を誓った。また、2025年4月に開幕する大阪・関西万博の来場者を北陸へ送り込むことを約束した。

西日本旅客鉄道の岡田学理事・マーケティング本部鉄道マーケティング部長
西日本旅客鉄道の岡田学理事・マーケティング本部鉄道マーケティング部長

 元国土交通省事務次官で北前船交流拡大機構の岩村敬会長は「北前船の大会は35回となった。第1回から年々大会は大きくなり感無量だ」と振り返った。

元国土交通省事務次官で北前船交流拡大機構の岩村敬会長
元国土交通省事務次官で北前船交流拡大機構の岩村敬会長

 続いて、浅見専務理事が欧州連合日本政府代表部の二宮悦郎参事官、イタリアの伝統的なマジョリカ陶芸の中心地であるファエンツァにアトリエを構えて日伊を拠点に活躍する陶芸家の平井智一氏、正木靖駐インドネシア特命全権大使の令嬢である正木琳氏、イタリアの伝統が誇る最高級食材を輸入し、料理にこだわる日本のシェフを応援する佐勇の佐藤広志社長の4人を紹介。

北前船交流拡大機構の浅見専務理事
北前船交流拡大機構の浅見専務理事

 代表して二宮参事官が「私は2022年10月のパリ大会で北前船の方々と出会った。出会いが広がる中で、今年4月にはミラノサローネで日本の伝統工芸品である備前市の備前焼と大館市の曲げわっぱを出展するに至った。来年のミラノサローネでも伝統工芸品を発表する予定だが、日本を元気にするために活動していく」と伝統工芸品の海外展開におけるさらなる自治体の参画を呼び掛けた。

欧州連合日本政府代表部の二宮悦郎参事官
欧州連合日本政府代表部の二宮悦郎参事官

 大会記念オブジェである金の「復興のフェニックス」を披露したSGCの土屋豊会長は、輪島市へフェニックスの寄贈を発表した。輪島市の坂口市長は「パワーをいただいた」と能登の新たなシンボルの寄贈に謝意を述べた。

 坂越のまち並みを創る会の矢竹孝司氏は「坂越の町並みは、2017年5月に兵庫県淡路で開かれた北前船寄港地フォーラムで日本遺産の登録について相談し、翌年には追加認定を受けた。今後も参加しながら皆さんを応援していく」と話した。

坂越のまち並みを創る会の矢竹孝司氏
坂越のまち並みを創る会の矢竹孝司氏

 松右衛門ファウンデーションの工楽隆造代表は「高田屋嘉兵衛は兵庫から北国、蝦夷地まで行き、ロシアとの外交を成功させた。一方、同じく船主だった工楽松右衛門は公益に尽くした。今こそこのような人物が必要な時期にある。北前船の貿易が盛んになることは重要だが、公益を尽くした松右衛門は教科書には出てこない。北前船の絵で見られる帆を改良した人物でもあり、記憶にとどめてほしい」と会場に訴えた。

松右衛門ファウンデーションの工楽隆造代表
松右衛門ファウンデーションの工楽隆造代表

 西日本旅客鉄道の竹澤徹鉄道マーケティング部担当部長兼九州営業部長は「盛大なフォーラムであることが能登の地元の皆さまに伝わり、力になると感じている。JRグループでは、10~12月に『Japanese Beauty Hokuriku ~日本の美は、北陸にあり。~』をテーマにデスティネーションキャンペーン(DC)を展開している。また終了後にもキャンペーンを開催する。北陸の良さや現状の大変さを改めて認識してもらいながら、多くの人に訪れてもらいたい」と来訪を呼び掛けた。

西日本旅客鉄道の竹澤徹鉄道マーケティング部担当部長兼九州営業部長
西日本旅客鉄道の竹澤徹鉄道マーケティング部担当部長兼九州営業部長

 岡山県瀬戸内市の武久市長は、毎回恒例となっているオペラを披露。「歌で復興を応援したい」と述べながら熱唱した。

岡山県瀬戸内市の武久市長
熱唱する岡山県瀬戸内市の武久市長

 北前船交流拡大機構と地域連携研究所の理事長代行でANA総合研究所の森健明副社長は「実家が松本だが、まさか海のないところで大会が開かれることになるとは思っていなかった。決意を新たに頑張る」と語った。

北前船交流拡大機構と地域連携研究所の理事長代行でANA総合研究所の森健明副社長
北前船交流拡大機構と地域連携研究所の理事長代行でANA総合研究所の森健明副社長

 閉会のあいさつでは、加賀市議会の今津和喜夫議長が「たくさんの人に集まっていただいた。また、加賀での開催は無事終えることができた。今後において交流がますます深まることを願っている。」と述べてレセプションを締めた。

加賀市議会の今津和喜夫議長
加賀市議会の今津和喜夫議長
会を締める今津議長
レセプションを締める今津議長

 

 

 

 

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