観光地域づくり法人として登録された一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会が、天王洲アイルの観光を推進する地域DMOとしてどのように活動していくのか。そのプロセスやミッションについて紹介する、第9回目の連載になります。前回は、天王洲アイルの平日、夜間、休日のにぎわいを創出と地域連携を強くすることで持続可能な観光都市として成長することを書きました。今回は、天王洲アイルの交通の利便性に注目し、観光DMOのミッションについて述べます。
天王洲アイルのロケーション
かつての天王洲アイルは、駅のないまちでした。1985年より市街地再開発組合である天王洲総合開発協議会が発足されました。東京のウォーターフロント都市として再開発が行われた天王洲アイルは、オフィス街だけでなく、居住空間やレストラン、劇場、ホテルまで完備した複合施設が建ち並ぶ最先端都市として「トレンディスポット」となりました。バブルの余波を受けたこの都市は、時代の波に乗り大きな変貌を遂げました。
1992年には、東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅が開業し、2001年においては、りんかい線天王洲アイル駅が開業。2路線が交差する地点となりました。羽田空港から渋谷、新宿、お台場、浦安への乗換駅となり、ターミナル駅である品川駅へ徒歩圏のアクセスの良さを持つ天王洲アイルは、交通の要所となりました。
観光アクセス拠点となる天王洲アイル
天王洲アイルは、複合的な施設が存在するオフィス街であり、国内外の観光客を魅了する観光資源はありませんが、羽田空港や品川駅をはじめ東京の主要な都市からのアクセスの良さは、観光客の訪問意欲に大きな影響を与え、来街者を増加させる可能性があります。
実際に天王洲アイル駅から主要な観光都市への標準所要時間は、東京モノレールを利用して、羽田空港第3ターミナル(国際線)駅15分、東京駅15分、浅草駅30分、りんかい線を利用して、渋谷駅16分、新宿駅21分、お台場最寄りの東京テレポート駅3分、東京ディズニーランドに隣接する舞浜駅20分、品川駅まで徒歩15分。羽田空港やターミナル駅、人気の観光スポットまで30分程度でアクセス可能です。観光客にとって、天王洲アイルは、旅のスケジュールに合わせて、スムーズに目的地へアクセスできるプラチナスポットになります。
観光客のニーズに応える観光拠点づくり
天王洲アイルは、観光客にとって交通の利便性が高いターミナルスポットでありながら、立ち寄るためのきっかけが必要です。もちろん、集客力のある観光コンテンツを開発することも重要なテーマですが、交通の利便性を活かし観光客のニーズに合わせた仕掛けを創ることが必須となります。そのために、さまざまな観光客の動向調査や観光商品の実証実験を重ねています。
ターゲットとなるのは、東京モノレールで天王洲アイルを通過する観光客(羽田空港を往来する観光客)、りんかい線で往来する観光客、またはモノレールとりんかい線間で乗り換える観光客です。さらに、観光客から天王洲アイルに滞在するニーズをヒアリングした結果、次のような要望が挙がりました。フライト時間に遅れないように空港近くで待機する場としての滞在や、主要な観光地を巡る途中での休憩スポットとしての滞在が期待されています。
これらのニーズを踏まえた結果として、天王洲アイルを「リラックスして旅の疲れを癒やす場」や「次の観光スポットを考える場」として整備することが望ましいと分かりました。そして、CRM(顧客関係性マネジメント)の構築にも挑戦し、観光客を単に「着地」させるだけでなく、回遊を促進することによって滞在時間を増加させる仕組みを検討しています。
旅のプランニングスポット天王洲アイル
天王洲アイルは、ウォーターフロントの運河に囲まれた美しい景観が魅力のエリアです。都心にありながら、静かな環境の中で自然やアートを存分に体感できる場所として親しまれています。水辺の散策や屋外アートの鑑賞、洗練されたレストランやカフェでのひとときが楽しめるため、リラックスした時間を過ごしたい方にとって理想的なスポットです。
また、美術館やギャラリー、ワークショップなど、アートに興味がある観光客のニーズにも応えており、既に多くの訪問者にその魅力を伝えています。今後はさらに、旅の思い出を創る場所としての役割を強化し、短い時間を有効に活用できる観光クルーズやワークショップの提供を進めていきます。また、次の観光スポットを探るための観光案内機能の充実も図り、観光客がより多くの体験を楽しめるような整備を行っていきます。このように、天王洲アイルは単なる観光地ではなく、訪れる人々に新たな発見と充実した時間を提供する旅のプランニングスポットとして進化を続けています。
都市型観光拠点としての天王洲アイル
天王洲アイルの交通利便性が観光拠点としての魅力に大きな影響を与えることは明らかです。天王洲アイルは、都心にありながら「水辺とアートのまち」として自然と文化が共創された魅力的なスポットが点在しています。この特長を活かすためには、観光商品や店舗、サービス、ワークショップなど、訪れる観光客のニーズとまちの特性をうまく融合させることが求められます。
また、観光による地域ブランディングの確立と、地域の支援と協力を得ることが、観光地域づくりの推進に不可欠です。さらに、当協会は観光地域づくり法人(DMO)として、観光資源の多角化を図り、観光客のみならず、地域住民やオフィスワーカーも楽しめる持続可能なまちづくりを目指してまいります。地域の魅力を最大限に引き出し、訪れるすべての人々に愛される場所を創り上げることを私たちの使命としています。
寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 理事長