観光庁は2025年1月29日、2024年度に推進する「地域観光新発見事業」の成果発表会を東京都港区のTKPガーデンシティPREMIUM品川HEARTで開いた。同事業を活用し造成した7つの事業者が登壇。開発された観光コンテンツを披露するなど、好事例を紹介した。豊重室長は「それぞれが個性的な取り組みであり、これから観光コンテンツを開発する人にも参考となる機会となった。今回の例を踏まえながら、今後につなげてほしい」と語った。
地域観光新発見事業は、地域の観光資源を活用した地方誘客に資する観光コンテンツについて、十分なマーケティングデータを生かした磨き上げから適時適切な誘客につながる販路開拓及び情報発信の一貫した支援を行うことを目的として実施されている。
成果発表会の冒頭、主催者を代表して観光庁観光資源課の豊重巨之新コンテンツ開発推進室長が観光の動向について、れ、2024年の訪日外国人旅行消費額は過去最高となる8兆円を超えたことや訪日外国人旅行者数も過去最多となる3600万人を突破するなど、観光を取り巻く環境が大きく前進していることを説明。また、「宿泊先は都市部へと偏在傾向にあり、今後は地方への誘客を強力に推進していく必要がある」と強調した。
観光庁では、来年度からは地域観光新発見事業の後継事業にあたる「地域観光魅力向上事業」を展開。地域観光魅力向上事業では、地域資源を活用した、収益性が高く、独自性・新規性のある観光コンテンツの開発から適切な販路開拓や情報発信の総合的な支援を行なう。説明会は事前申し込み制で、2月14日にウェビナー形式で開かれる。公募期間は3月3日~4月18日。補助対象は地方公共団体、DMO、民間事業者などで、補助額は400万円まで定額、超える部分については補助率50%、補助上限は1250万円で最低事業費は600万円となっている。
成果発表では、①「津和野町(島根県・津和野町)」津和野町観光協会/津和野体験Yu-naの岡野優衣代表②「瀬戸内ウェルネス・フェスタ実行委員会(香川県丸亀市)」トレーニングレース・ジャパンの浅野徳一代表③「摂田屋・宮内エリア観光まちづくり協議会(新潟県長岡市)」長岡市観光企画課の小島由妃子氏④「大望閣(佐賀県唐津市)」デジタルスマートシティ推進財団の真鳥喜章氏⑤「出羽庄内地域デザイン」(山形県鶴岡市)出羽庄内地域デザインの小林好雄社長⑥「WasshoiLab(宮城県白石市)」Wasshoi Labの後藤 永行氏⑦「OUGI(大分県宇佐市)」OUGIの鈴木雅己氏―が登壇。各事業者が好事例となる成果や課題、今後の展望を発表した。
その後、デスティネーションマーケティングやインバウンド富裕層旅行業を手掛け、観光インバウンド関連の賞を多数受賞しているwondertrunk & co.の岡本岳大CEOをモデレーターに、「観光コンテンツの販売戦略」と題したパネルディスカッションが行われ、主にインバウンドに向けた販売における工夫や手法などを議論した。発表者から3人が登壇。登壇者からは、「単にSNSに情報を挙げるだけでは、じっくりと情報を見てもらえない。ターゲットへの直接的なプロモーションが大事」「フランス人リピーターのさらに1%を取りにいく販売戦略を取った。高額商品を展開したことから、自社ホームページや海外OTAで売れるとは当初から思っておらず、フランスに本社をおく旅行会社に営業を特化した。一方、ロットが少ない商品には旅行会社が関心を示さないという事案もあり、受け入れ側の整備も大切になる」「侍の体験を昨年の4月から始め、認知拡大を目標に事業を推進したところ、前年度は0件だったが今年度は団体受け入れ依頼は8組152人の参加につながった」「カスタマージャーニーの考え方を忠実に突き詰めていった」といった声が上がった。岡本CEOは、富裕層といってもタイプや使う金が異なることを指摘するなど、ターゲットを理解しながら販売の戦略方針を考える必要性を説いた。
ターゲットによって効果的な手法は異なり、精緻に取り組みを
発表会を終えた後のインタビューに答えた岡本CEOは、「商品を作ったが、売るまでにたどり着いていない事業者は多くいる。これは支援の共通の課題であるが、今後の事業においては売れるための支援を中心的に行うことも考えていかなければならない」と振り返った。全国の事業者に向けては、「ターゲットによって効果的な手法は異なる。個人旅行だとインスタグラムや動画とは相性が良く、富裕層が相手だと富裕層を顧客に持つ旅行会社を捕まえた方が良い。また、団体旅行だと商談会でネットワークを広げることが有効となる。このあたりを精緻にしていってほしい」と呼び掛けた。
同事業のアーカイブは、地域観光新発見事業サイト(https://shinhakken.go.jp/)で配信されている。
成果発表を行った7事業者
1、島根県津和野町
事業名: 築城700年・津和野城を中心にストーリーテラーが案内する、インバウンド向け”津和野風土没入型”ナイトツアー
登壇者: 津和野町観光協会 津和野体験Yu-na 岡野優衣氏
参考URL: Spirit of Tsuwano:A Deep Dive into Our History and Culture
2、香川県丸亀市
事業名: 塩飽諸島の日本遺産や瀬戸内の食を観光資源とした今昔を体験する魅力発見事業
登壇者: トレーニングレース・ジャパン 浅野徳一氏
参考URL: 塩飽本島マイペースミッケ大会
3、新潟県長岡市
事業名: 「冬も来いてぇ」〜持続可能な通年型観光まちづくり事業
登壇者: 長岡市観光企画課 小島由妃子氏
事業内容: 長岡観光ナビ
4、佐賀県唐津市
事業名: 風光明媚な景観や豊かな海の幸と食文化、国の伝統的工芸品に指定されている「唐津焼」などを活用した誘客推進事業
登壇者: デジタルスマートシティ推進財団 真鳥喜章
5、山形県鶴岡市
事業名: 地域文化あふれる出羽庄内のインバウンド向け観光コンテンツ造成、情報発信、集客事業 ―三つの文化の潮目の地―
登壇者: 出羽庄内地域デザイン 小林好雄氏
参考URL: The Northern Heart of Japan
6、宮城県白石市
事業名: お客様をお殿様に!歴史の主人公を演じ体感する東北唯一の観光 コンテンツ造成・販売事業 〜白石城で本格甲冑を纏い唯一無二の映像作品制作体験! 世界中に遊び心を持って白石文化を発信!〜
登壇者: Wasshioi Lab 後藤永行氏
参考URL: Be a SAMURAI
7、大分県宇佐市
事業名: 宇佐で出会う「和」の源流 神楽(所作・演目習得稽古6日間と奉納の舞)&宇佐(おもと古道)トレイル体験
登壇者: OUGI 鈴木雅己氏
参考URL: The Folklore of KAGURA 神楽伝承体験プログラム
取材 ツーリズムメディアサービス編集部