東京スカイツリーが開業したのは2012年5月22日のこと。東京都心部は高層ビルが乱立し、さまざまな電波障害が発生し始めていた。そのため、東京タワーだけでは良好な通信が難しくなった。この状況改善のため、第2のタワー建設が急務となる。高層ビルの少ない城東地区に白羽の矢が立った。
完成したタワーは、東京の旧国名「武蔵」に合わせて高さ634m。日本一高い建造物、さらには、世界一高い電波塔である。航空法の規制緩和が、この高さの電波塔を作り上げた。
前述のように、首都・東京の城東地区には、高い建物がほとんどない。そのため、いずこからもスカイツリーの雄姿が見える。東京を、関東平野を睥睨するような昼間の姿も素晴らしいが、夜ともなると、日替わりのライトアップが、多くのスカイツリーファンの気持ちを高揚させる。
東京タワーのライトアップは、赤からオレンジ色の単色のもの。長い間東京を代表してきた。一方、スカイツリーのライトアップは、LEDのメリットを大きく生かし瞬時に色が変化する。開業時には2種類(「粋」と「雅」)であった。「粋」は隅田川をモチーフ、「雅」は江戸紫をイメージする。しかし、現在では、特別ライトアップを含め、有に100種類を超えている。
そのようなスカイツリーのライトアップを編集部が独断と偏見で選んでみた。
まさしく「額縁画」スカイツリー。
1. 黄色の額縁、東京タワーと競演~葛飾区・東四つ木避難橋~

城東地区を流れる荒川は、1924年に隅田川と分かれ新たな水路となった。下町の水害を避けるために造られたのだ。昨年開削100周年を迎えている。しかし、この開削は、これまで流れていた中川などを分断した。そのため、この辺りの地図を見ると、複数の河川が隣り合わせになっているのがわかる。
その中川の東側は、海抜ゼロメートル地帯。河川の盛土部分に避難誘導する橋が架けられている。黄色に塗装された東四つ木避難橋。真正面にはスカイツリー。そして、目を凝らすと後方には東京タワーの灯りも見える。また、風のない日には、川面に逆さツリーも出現する。
交通至便ではないが、最近はテレビドラマや映画のロケにも使われている。そのため、わざわざこの場所を訪れる人も増えている。

2. 左右対称、安定感のある素敵な姿~墨田区、荒川区・白鬚橋~

スカイツリーは、現代の五重塔とも言われる。また、日本刀の反りをイメージしているため、左右対称の建物ではない。そのため、場所によっては、いびつに見える。
筆者は、個人的に安定感のある姿が好きだ。ちょうど北側から見るとほぼ左右対称となる。
この場所、明治通りが走る白鬚橋は、交通量の多い幹線道路。そのため、スローシャッターにすると、路面にレーザービームも再現される。
隅田川花火の日には特等席になりうるが、残念ながら、制限区域のために立ち止まって撮影することはできない。ただ、橋の真ん中で三脚を建てて撮影していると、通行人はけげんな顔をして通り過ぎていく。

3. 喧騒の中のアーケード~台東区・浅草新仲見世通り~

訪日外国人にとって、浅草は訪問したい観光地の一つ。浅草寺や仲見世通り、雷門などがその中心だが、食べ歩きや土産店巡りなども人気だ。
昨今、SNS全盛の時代となり、彼ら彼女らの活動範囲は点から面へと広がっている。特に「映える」スポット探しには入念である。そして、仲見世通りから少し離れた薬局の前に多くの外国人が群れると話題となった場所がある。
「爆買い」かと思いきや振り返ると、アーケード越しにスカイツリーが見える。狭いアーケードの真ん中で写真を撮る順番を待っているのだ。
ここは、日本人にとって普通のアーケード。何の気なく通り過ぎている場所だ。しかし、今では日本人観光客もこの場所を探して、スマホを構えている姿を見かけるようになった。

冬場こそ、スカイツリーの季節
今回は、額縁のようなスカイツリーを紹介した。鉄道とのコラボや建物の隙間から見える姿など、まだまだ映えるスカイツリーは東京都内にたくさん存在する。
空気の澄んだ冬場は、その姿が輝きを増す。さて、次は、どのようなスカイツリーに人気が集まるのだろうか。
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長