杵築市という城下町は、大分空港と別府市の中間、国東半島への入口とも言える。そして、大分空港は、国東半島の南端部に位置する。
かつて、2009年まで空港と大分市内とのアクセスルートとして、水陸両用のホバークラフトが就航していた。これは、別府や大分市内からの道路状況が芳しくなかったためだ。リーマンショックの影響で乗船効率が悪化し、運航休止となった。しかし、船舶は、交通渋滞に無縁な交通手段だ。そのため、状況が変化し、2024年に復活することとなった。
周辺自治体は、ホバークラフトの復活が地域振興のマイナスになると頭を悩ませている。中間地点である杵築市や日出町は、古い城下町や城下かれいなどの「食」を打ち出し、観光誘客を進めている。その成果は、徐々に数字に表れるようになった。しかし、空港から観光客は、別府や大分という県内の代表的観光地に直行し、通過されるという危惧が生じているのだ。
広域連携による観光コンテンツ作りを

さて、杵築は坂の町、石畳の坂道が絵になる風景だ。お城から続く崖下に商人の町が広がる。そして、その両側の崖上に武家屋敷が建ち並んでいる。特に代表的な「酢屋の坂」は、江戸時代の町並みを彷彿させる。そのため、杵築を訪れる観光客のほとんどが、坂の途中で記念撮影をしている。また、「城下町を着物で散策」する取り組みが人気を得ている。町中、着物姿で記念撮影している若者たちが多い。しかし、話し言葉を聞いてみると、九州の方言が少なくない。まだまだ、遠方からの観光客への認知度は低く、全国区の観光地まで育っていないのであろう。
東京・浅草などでも訪日外国人相手に着物を貸し出すサービスが好調である。既に50社以上の会社が参入している。そして、雑居ビルの一室を拠点として、周辺観光施設との連携も深めている。浅草では、一日中滞在してもらうアイテムとしても、着物が活用されているのだ。
単独の自治体では解決できない長期間滞在、それを可能とするのは、周辺自治体の連携強化だ。空港から大分市までの市町村がタッグを組み、わざわざ立ち寄る魅力づくりこそ、通過されない観光地づくりの肝だと考える。
(2015.04.18.撮影)
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長