世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は4月4日、経済的な逆風にもかかわらず世界の旅行・観光産業が力強い成長を続けているとする最新の経済影響調査(EIR)を発表した。
2025年の国際旅行者による消費額は過去最高となる2兆1000億ドルに達する見通しで、2019年の1兆9000億ドルを1640億ドル上回る。
旅行・観光産業の世界経済への寄与額は11兆7000億ドルと過去最高を更新し、世界GDPの10.3%を占める見込み。雇用面では、前年より1400万人増加して、米国の人口を上回る3億7100万人が同産業に従事することになる。全世界の10人に1人が観光関連の仕事に従事している計算となる。
2024年の実績では、世界の旅行・観光産業の経済寄与額は10.9兆ドルだった。国際旅行者の支出は1兆8700億ドル、国内旅行者の支出は5兆3000億ドルだった。雇用者数は3億5700万人だった。
WTTCのジュリア・シンプソン会長兼CEOは「人々は引き続き旅行を優先しており、これは観光産業への強い信頼と、その持続的な強さを示している」と述べた。
一方で、回復の度合いには地域差があると指摘し、「一部の国や地域では記録的な成長を遂げる一方で、主要経済圏の中には成長が停滞しているところもある」とした。
米国では2024年の米国への国際旅行者による支出が2019年水準を大きく下回り、2025年も完全な回復は見込まれていない。中国も2024年にはコロナ前の水準を上回ったが、今年は成長の鈍化が予想されている。
これに対し、2030年までに8000億ドルの投資を計画するサウジアラビアは新たな成長モデルを提示しており、フランスやスペインといった欧州の観光先進国も、巧みな投資と国際的な魅力により地域全体の回復をけん引している。
WTTCは2035年には旅行・観光産業が世界経済に16兆5000億ドルをもたらし、世界GDPの11.5%を占めると予測している。今後10年間の年間平均成長率は3.5%で、世界経済全体の2.5%を上回る。
雇用は4億6000万人に達し、世界の8人に1人が同分野で働く見通し。国際旅行支出は2兆9000億ドル、国内旅行支出は7兆7000億ドルに拡大するとしている。
調査はオックスフォード・エコノミクスとの共同研究に基づき、184カ国を対象に毎年行われている。
旅行・観光産業の環境・社会面での影響に関する調査も毎年実施しており、2023年時点で同分野の温室効果ガス排出量は全体の6.5%を占めるとして、持続可能な取り組みの必要性を強調している。
WTTCは、世界の主要な観光関連企業で構成される国際的な非営利団体で、観光業の経済的貢献を可視化し、持続可能な成長を促進することを目的としている。各国政府や国際機関と連携し、政策提言や調査レポートの発表、業界の発展を支える活動を行っている。