記憶の片隅に海上橋を疾走するクルマのCMを思い出す場所、山口県下関市の角島だ。巷では、日本一美しい海と言われる。本土側からこの島を結んでいるのが角島大橋。まっすぐ伸びた優雅な姿を見せる。その先端に総御影石造り無塗装の角島灯台はある。このような造りの灯台は、日本には2つしかない。
ここ角島には、数々の「鬼」伝説が存在する。その伝説は、一夜にして島を陸続きにしようというものだ。鬼たちは一生懸命、岩を海に投げ入れる。しかし、神様が鶏の鳴き声を真似て、それを阻止したという。それ故、島内にはそのような岩が、多数残っている。
さて、その伝説を物語にして、このイベントは灯台前広場に地上絵のイルミネーションを施した。また、灯台の小屋壁面にプロジェクションマッピングも映し出した。2017年に開催された山口県ディスティネーションキャンペーンで実施された。三日間のイベントは、安定的な天候の10月下旬でありながら雨が続いた。鉛色の空が恨めしかったが、地元の方々にも協力を仰ぎ、無事に終了した。
大型キャンペーンも過渡期に
ディスティネーションキャンペーンは、一年前に全国宣伝会議という新たな観光コンテンツの発表の場が提供される。そして、多くの旅行会社が会議と視察に参加する。キャンペーン時に旅行商品化を進めるためだ。しかし、輸送手段を鉄道に求めるため、大きな後背経済圏を持たない地域は、キャンペーン誘致に手を挙げるのが難しい。また、自治体財政も厳しいため、資金を集めることも困難になっている。実集客を見込むが、なかなか費用対効果が伴わない。
鉄道輸送は、4時間が限度であると言われている。それ故、大都市から遠い地域のキャンペーンは、航空機が必須となってくる。JR単独キャンペーンではなく、航空機や船舶などとの共存も含め、集客拡大につながる方法を考える時代となったのかもしれない。
(2017.10.28.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長