山形市の蔵王に向かう斜面に広大な西蔵王公園は位置する。山形盆地は、東側に奥羽山脈や蔵王山地、西側に霊峰月山を望む。山々に囲まれているため、盆地の夕暮れは早い。初冬、飯豊連峰に落ちる夕陽が、山々を真っ赤に染めていく。そして、町にはひとつ、また一つと明かりが灯る。
西蔵王公園は、1999年5月の全面開業。名前の通り、蔵王連山の西側に、山形の町並みを俯瞰する。人と自然の調和したリクリエーションの場として、キャンプ場や自然に触れる遊具を設置し、近隣の子供たちが訪れる。そして、77.5haの大きさ。展望デッキからの景色は、夕暮れ時に最高潮となる。日本夜景遺産にも登録された山形市を代表する夜景観賞スポットだ。
日本有数の温泉地「蔵王」復権のために
さて、蔵王温泉は、西暦110年の開湯と言われる。併設される蔵王スキー場とともに、東北6県を代表する温泉地だ。1962年に蔵王エコーラインが開通し、翌年、蔵王連峰が蔵王国定公園に指定される。そして、1964年、日本百名山の1つに蔵王山は選ばれた。また、観光振興を意図し、1963年に「蔵王夏まつり」を開催。後に「山形花笠まつり」が独立する。これによって、蔵王温泉は飛躍的に発展する。そして、1990年前後には、高速道路や新幹線の開通によって、温泉やスキー場は、華やかな時代を迎えた。
しかし、昨今スキーなどのレジャー環境が変化し、温泉街の老舗旅館も廃業するところが増えてきた。一方、ビッグモンスターと言われる蔵王の樹氷や硫黄分の強い温泉など、大自然に触れる観光コンテンツは豊富だ。樹氷や温泉だけに依存せず、蔵王復権のために、近隣観光地との共存を含め、新たなコンテンツ開発が求められている。
(2019.11.21.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長