WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)は4月23日、英国が2023年に国際観光客による支出の落ち込みにより、2019年比で22億ポンド(約4300億円)超の輸出収入を失ったと警告した。政府が課税強化や規制強化を進める一方、観光誘致を担う公的機関「ビジット・ブリテン」の予算を大幅に削減したことが背景にあるという。
WTTCが発表した「2025年版経済影響調査(EIR)」によると、2023年における英観光業の経済貢献は2,860億ポンドに達し、2019年比で3.9%増となった。これは主に国内旅行の回復や、一部都市での高額消費の増加が下支えしたとみられる。
一方で、国際観光客の支出は403億ポンドにとどまり、パンデミック前の水準を5.3%下回った。これは英国経済にとって22億ポンドの損失に相当している。
WTTCは、英国が欧州の中でも特に旅行先として高額であることを指摘。さらに、電子渡航認証制度(ETA)の導入、免税ショッピングの廃止、航空旅客税の増税、ビジット・ブリテン予算の40%超の削減といった政策が、2025年以降の観光成長を妨げる要因になると警告した。
ジュリア・シンプソン会長兼CEOは「他の欧州諸国が観光業の経済的価値を重視して積極的に支援しているのに対し、英国ではその価値が軽んじられ、政府はむしろ成長を阻害する政策をとっている」と述べている。
WTTCはスターマー首相に対し、観光業の成長力と雇用創出力を真に評価し、ビジット・ブリテンへの予算回復、国際観光客向けの免税制度の復活、過剰な旅行課税の見直しを直ちに実施するよう呼びかけている。