阪急交通社は5月14日、2024年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)の決算を発表した。売上高は、前年比20.4%増の2611億400万円、営業利益は同6.6%増の52億9800万円。増収増益で、売上高は2年連続での増収となった。今後は各事業の強化で事業構造の安定を図る一方で、デジタル技術を活用し、業務体制の効率化と顧客データ分析による募集効率の向上を図ることで、さらなる競争力を保持するべくDX化を推進する。
2024年度は、スピードを重視した商品企画と販売を通じて市場の変化に対応し、顧客ニーズに合致した商品を提供。新規顧客を獲得するほか、顧客との関係性を深化させることで市場開拓に取り組んだ。また、企画性の高い周遊型商品を国内外で強化し、日本全国から発着する商品バリエーションの増加、テレビを利用した販売を推進した。このほか、事業領域の拡大に向けて、ソリューション事業を通じて、行政や自治体との連携強化を図った。
国内旅行:グレード高い商品販売で増収
国内旅行は、売上高は前年を上回った。物価上昇に伴い、消費者の節約志向が見られる中、四季折々の祭りやイベントを組み込んだ付加価値の高い商品の開発を進めたほか、日本各地の旬の食材を活用したグルメツアーやオールインクルーシブのリゾートホテルに宿泊するツアーなど、消費者の需要を喚起する商品を開発。さらに、全国各地から発着するグレードの高いホテルを利用した魅力的な商品を、テレビ通販を通じて積極的に販売した。加えて、閑散期には、地域と連携した誘客イベントを実施し、需要促進や地域活性化に取り組んだ。
海外旅行:宣伝強化で大幅増収
海外旅行は、売上高がコロナ禍前の水準には至らずも、前年を大きく上回った。同社では、円安や燃油の高止まり、海外各地の物価上昇で、市場の本格的な回復は途上だが、今後も取り組みが必要な市場として捉えている。一方で、訪日外国人の増加や中国の査証免除措置再開で、日本各地の空港で国際線の復便が進む中、需要回復が進むアジアや、円安の影響が比較的軽微なトルコ、エジプトの販売を強化するとともに、周遊型旅行の需要が高い欧州や北米についても募集告知を継続的に行った。また、復便の進む地方空港から発着するアジアや中国の販売を全国で推進するとともに、テレビ通販ではグレードの高いホテルを利用した企画性の高い商品の販売を強化した。
訪日旅行:欧米豪の取り込み強化で増収
訪日旅行は、前年を上回った。円安を背景に訪日旅行の人気が高まる中、当社では桜の時期や秋の行楽シーズンを中心に、主に欧米や豪州からの訪日客の取り込みを推進。訪日外国人向けの自社サイト「Travel to Japan」の商品ラインナップを充実させることで、BtoCおよびBtoBtoCによる販売強化を図った。
その他事業:減収も事業多角化を推進
その他事業は、売上高は前年を下回るも、事業多角化への動きを推進。事業領域の拡大により、経営基盤のさらなる安定化を目指す取組みであるソリューション事業では、旅行事業で構築した自治体や地域との関係性を背景に、災害時における緊急支援を行うDHAT(Disaster Hankyu Assistance Team)を2024年4月に発足。ソリューション事業全体では、新型コロナウイルス関連業務の反動減となった。
今後:強みである募集型企画旅行を一層強化
今後においては、強みである添乗員が同行する募集型企画旅行の一層の強化を図る。新しい需要に応える商品の研鑽と開発に加え、品質管理の徹底と顧客満足度のさらなる向上に取り組む。
国内旅行では、季節の風物詩や自然、食を素材としたツアーや、消費者の興味やニーズに応じて特別な体験を提供するテーマ型商品の販売拡大を一層進める。
海外旅行では、円安や燃油高の動向が懸念されるが、地方空港での復便による航空座席の供給数が回復傾向から、需要の活性化に期待。全国各地から手軽で便利に参加できる海外旅行の充実を図るとともに、海外旅行リピーター向けに絶景や秘境の商品開発も一層強化する。
訪日旅行は、桜や紅葉の繁忙期のみならず、年間を通じて好調に推移。引き続き欧米豪を中心とした商品開発に努めるとともに、BtoCおよびBtoBtoCの販売を強化する。
ソリューション事業では、これまで培ったノウハウやネットワークを生かして、DHAT(Disaster Hankyu Assistance Team)の活動により、社会に貢献する事業領域での拡大を目指す。