【New!トップページ新着コメント欄追加】 学び・つながる観光産業メディア

JTB2025年3月期決算、2年連続で売上高1兆円超えも攻めの投資で減収減益

コメント

JTBは5月23日、2025年3月期連結決算(2024年4月1日~2025年3月31日)の決算を発表した。売上高は前期比1%減の1兆733億円、売上総利益が同2%減の2637億円、営業利益が同51%減の149億円(計画値116億円で計画比28%増)、当期純利益が同61%減の86億円。売上高は2年連続で1兆円を突破し、営業利益が計画値から大きく上振れするも、旅行需要の減少に伴い削減していた人件費の大幅増や海外投資に対する為替差損、特別損失を約40億円計上したシステム投資など、成長投資を加速する「攻め」の経費を増やしたことが影響して減収減益となった。

決算発表を行う山北社長(中央)

伸びが鈍い

同日に開かれた記者会見では、山北栄二郎社長が2024年度を振り返り、「グローバルでの事業が大きく成長した」と成果を強調。24年度の業績ハイライトとして、海外・訪日・第三国間旅行の取り扱いが拡大したほか、パリ2024オリンピック・パラリンピックや大阪・関西万博関連事業など国内外の国際イベントでの取り扱いの拡大、商事・決済領域といった旅行外事業が好調、システム刷新やDX推進・イノベーション創出プロジェクトの運営・高度専門人材やグローバル人材の採用など中長期の成長に向けて幅広い分野に積極的な投資を行ったことを説明した。「グループの未来を築く上で不可欠な投資であり、成長の原動力になると確信している」と述べた。

旅行セグメントでは、国内旅行が物価高による購買の慎重化の影響や、コロナ対策関連の受託事業の減少が影響して前期比3.8%減の927億円と減益に。一方で、グローバルにおける事業は好調で、海外旅行が同47%増の626億円、訪日旅行が19.0%増の163億円、第三国間旅行は29.6%増の233億円と全て増益となった。第三国間旅行においては、欧州、北南米、アジアパシフィックの全ての地域が増益となった。国内の不調については、「ビジネスは動いているが、航空運賃として宿泊も高くなっている現状からファミリー層が鈍くなっている。パッケージ旅行は再評価されており、全国約60カ所にあるツアーデスクなどを生かしながら、情報提供を通じて需要を喚起する」と山北社長。

旅行外領域では、宿泊施設向けの商事・決済領域が好調で、クレジット決済や宿泊オンライン決済は過去最高額となった。MICE事業の売上高は国内が537億円、海外が243億円と4年連続の増収となる780億円だった。旅行外ビジネス全体での収益比率は、19年度の18%(旅行が2312億円、旅行が509億円)から26%(旅行が1948億円、旅行外が689億円)まで上昇している。

攻めの投資を行う一方で、構造改革による固定費削減効果についても説明。固定費は2019年度比で286億円の削減を達成。営業利益は19年度が14億円だったが、24年度では約10倍となる149億円と利益が出る体質へと変わった。自己資本比率は20年度比14.2ポイント増の21.1%まで回復している。

25年度は、シートインコーチなどグローバル3事業に注力

2025年度通期は、売上高が24年度比21%増の1兆2980億円、営業利益が同20%減の120億円を見込んでいる。山北社長は、「アジアなど近距離のほか、ヨーロッパやハワイといったJTBが得意とするロングでの旅行が市況以上の伸びを見せている」と話す。中期経営計画におけるフェーズ3(成長・飛躍)の初年度になる25年度は、「未来から現在を創る~ビジネスモデル変革の加速~」をテーマに、ビジネスモデルの抜本的な変革と共に、経営基盤の強化、事業の持続的な拡大を推進する。

グローバル領域では、①シートインコーチ(周遊バス事業)②グローバルDMC(世界初、世界着)③ホスピタリティーの3つの事業に注力する。

シートインコーチ事業では、乗り降り自由なFIT向けの商品で多様なツアーの商品を設ける。欧州では、2014年に取得したヨーロッパムンドバケーションズが年間約17万人を扱い、2019年に取得したカナダのカルガリーツアーズは、ロッキー地域で高いシェアを占めている。欧州・カナダで利用者数ナンバーワンを目指す。

グローバルDMC事業では、海外拠点のクオニイツムラーレやツアーイースト社と、日本のJTBグローバルマーケティング&トラベル(GMT)の3社を連携させ、欧米豪発アジア着といった世界規模の取り扱いを展開する。

ホスピタリティ事業では、ハワイに拠点を置き米国の法人向けの企画・運営事業を行うMC&Aのノウハウを生かしながら米国での取り扱いトップ3を目指す。

山北社長は「グローバル事業においては、3つの主要戦略を持って、圧倒的なポジショニングを作りながら、グローバルのみで営業利益の半分を目指す。急速に変化する市場環境や多様化するニーズに柔軟に対応しながら、革新的なサービスの創出と提供に努めていきたい。サステナビリティの取り組みの提供も行い、社会的な責任を果たしながら企業価値を高めていく」と語った。

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/