旧宇和町(現在の西予市)の卯之町は、重点伝統的建造物群保存地区の一つ。山形、東京、神奈川、熊本を除き、全国で43道府県106市町村129地区が選定されている。(2024年8月現在)
文化財保護法でいう城下町・宿場町・門前町・寺内町・港町・農村・漁村などの伝統的建造物群と一体となる歴史的風致環境を保存する市町村が定める地区を指す。この制度は、文化財を「面(群)」で保存しようとするものだ。そのため、保存地区内では「建築物」や「工作物」、庭園・生垣・樹木・水路などを特定し保存することが必須だ。
さて、卯之町は、藤原北家の流れを組む伊予西園寺氏の支配下にあった松葉城の城下町。中近世からの古き町並みは、近代になると鉄道路線や国道敷設の際に住民等の反対運動が起きた。そのため、時代に取り残される場合が多い。ここも予讃線や国道56号線の開通により町の中心が南に移動する。その結果、伝統的建造物の数々が残った。2009年に86番目の選定を受けている。
ゆっくりと流れる時間に、白壁やうだつ、出格子が建ち並ぶ宇和島街道が貫く。また、国の重要文化財・開明学校や廊下が優に100mを超える旧宇和町小学校の校舎なども町全体の一体感を生み出している。
地域住民の気持ちを理解すること
町並み保存には、地域住民の協力が一番大切なことだ。そして、残すことを決めた意思を訪れる観光客もしっかりと理解することが必要だ。住む人々と訪れる人たちの融合、先人たちの歩みは将来につなげていきたい。
(2021.04.16.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長