九州は、5世紀から7世紀の古墳が残されている地域が多い。ここ山鹿市もその一つだ。熊本県北部に位置し福岡県に接する。それ故、山鹿灯籠まつりは、景行天皇の御代から続くものと言われている。
山鹿は、豊前街道の要衝の町。12世紀に温泉が発見されると大きな宿場町として発展した。そして、明治期に温泉は大改装され、温泉を訪れるお客さまの利便性を高めるために山鹿鉄道が開業した。また、温泉客の娯楽の一つとして芝居小屋の建築も進められた。その結果、街道沿いの宿場町は隆盛を極める。
さて、温泉街の中心に芝居小屋・八千代座は立地する。1910年に地元の旦那衆が組合を作り、立ち上げたものだ。当時の粋を集めた建物は、国内に現存する芝居小屋の中でも優れたものと言われている。民間主導で建てられたため、大きなコンサートから地元の学芸会までも執り行われた。しかし、地元密着の劇場は、1973年に経営不振から閉館し山鹿市に寄贈される。老朽化した建物を徐々に改築し続け、1989年に一般公開されるように至った。
町を潤す幽玄な祭り
また、第二次世界大戦の戦火から免れた山鹿市は、大正・昭和の時代の色合いを残した町でもある。特にお盆の時期に行われる山鹿灯籠まつりは、民謡「よへほ節」のメロディーに浴衣姿の女性が、金・銀の和紙で作られた金灯籠(かなとうろう)を頭にのせて町中を踊り歩く。幽玄な踊りは、この八千代座とともに、将来に向けて残したい文化財である。
(2016.11.30.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長