鉄道が移動手段から観光目的に変わりつつある。その先行事例は、JR九州の観光列車「ななつ星」と言っても過言ではない。これまでも北海道のリゾート列車や首都圏・関西圏から温泉地に出発する特急列車などもあった。しかし、自分の守備範囲である九州島内を数日間かけて周遊する列車は、まさしく、「ななつ星」が最初である。
始発駅である博多駅には、専用ラウンジもある。ここにお客様は集合し、数日間の優雅な旅に出発する。そして、周遊する列車は、車内で食事も提供される。また、自分の部屋は、寝室に変わり、シャワーブースも用意されているのだ。
一方、コースに組み込まれた観光地では、改装した駅舎レストランが特別料理を食するステージとなる。そして、専用ラッピングバスに乗り込み、特別感のある観光コンテンツを巡る。
次なる仕掛けが待たれる観光列車
由布院駅に到着した「ななつ星」は、お客さまそれぞれが下車観光に向かう。観光目的は十人十色だ。湯布院の町中が、それを具現化してくれるのだ。提供されるサービスと自らが発見するコンテンツが、うまく絡まり合って、お客さまの満足感を醸成していく。ある意味、このような高額旅行商品が売れる時代に突入したのだ。
今では、全国各地で観光列車が走るようになった。しかし、毎回抽選でお客さまが乗る人気の列車もあれば、集客に苦労しているものもある。高級感のある車両や特別感のある食、体験だけでなく、もう一つのプラスアルファが、観光列車としての勝ち組として生き残っていくのであろう。
(2015.04.17.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長