かつて、上杉謙信が城を置き、領有していた直江津の地は、上杉家が米沢に移封されて後、江戸時代初期に徳川家康の六男・忠輝が高田に城を築いた。そして、市街地には、今でも総延長16kmにも及ぶ雁木が張り巡らされている。また、繁栄の象徴である高田城の掘割には、春の桜、夏の蓮が壮観な姿を見せる。特に、城と桜のコラボレーションは、新潟県民にとって、待ち侘びた北国の春の姿だ。
さて、城下町・高田と北前船の港町・直江津は、現在市町村合併が行われ、2005年に上越市が誕生した。江戸時代に最盛期を迎えていたと言われる佐渡島の金・銀山は、当時世界一の産出量を誇っていた。上越高田は、越佐海峡をはさんだ場所に位置する。江戸幕府は、佐渡島を天領としてその統治を進める。そのために、玄関口である高田に新しいお城を建てた。そして、親藩・譜代の大名に高田を統治させたことも「金・銀の島への要」を抑えるという当然の施政だと納得する。
今では、城址公園に咲く桜花は、日本三大夜桜に数えられ、4月中旬には満開を迎える。雪国・新潟の春を告げる景色は、遠く新潟市内からも多くの花見客がやって来るほどである。
そして、佐渡島は、2024年7月にユネスコ世界遺産に登録が決定した。直江津港からは佐渡島の小木港まで、航路でつながっている。佐渡島民の悲願、輝ける未来は、高田の桜とともに後世に残っていく印象風景である。
(2010.04.18.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長