いよいよ万博
2025年4月13日、大阪・関西万博が開幕します。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、2820万人が大阪湾の夢洲の会場にお越しになります。戦後、日本経済の2割を占めていた関西経済は、皮肉なことに1970年の大阪万博をピークとして長期に低落しました。私が社会人一年生として運輸省に入省したのははるか40年前になりますが、新人研修で教わったのは、航空ネットワークの「二眼レフ」構造という言葉でした。日本は、羽田と伊丹を拠点として全国に航空ネットワークが形成されていました。関東と関西が並び立ち、就職も、東京採用と大阪採用の2つの窓口がありました。
関西を一つと考えること
今日、関西経済は、日本の1.5割経済です。「関西は一つ」。一丸となって復権しようという取り組みが経済団体を中心に進められています。東京一極集中の是正への挑戦でもあります。他方、「でも、関西は一つ一つ」ともささやかれます。サラダボール、あるいはモザイク、ステンドグラスなどと。経済分野において目標を共有して連携して進もうということだと思うのですが、やはり、それぞれ特色のある地域をまとめていくことは容易ではありません。もっとも、これは関西に限らないことでしょうが。
持てる者の悩み
私ども(一財)関西観光本部は、関西においてインバウンドを促進するために創設された広域連携DMOです。そのエリアは、東は福井・三重から西は鳥取・徳島に至る2府8県に及びます。国際都市として名高い政令市も4つ擁しています。関西は各地に観光資源があふれています。歴史・文化資源のみならず、生活と密着した自然、豊富で多彩で上級の食材、どれもがそろう観光資源の豊穣の地です。2府8県の面積4.5万㎢。スイス・アルプスが4.1万㎢、コートダジュール・プロバンスが3.1万㎢。いかに、関西に観光資源が凝縮されているか想像いただけると思います。問題は、それらをどのように広域観光につなげていくかです。「関西には何があって、訪問する価値がどこに(何に)あるのか。スモールマスマーケットに対し、ストーリーで訴求すべき。」と一昨年、関西のインバウンドについて有識者の方々から鋭い強いご指摘をいただきました。「関西は何でもあります。どうぞいらっしゃい」ではwith/postコロナ時代の競争に勝ち抜けません。
やってみなはれ
これは大変。サラダボールに入っている野菜、モザイク・ステンドグラスを構成する一片一枚を旅行者の眼でつなぎ直してツーリズム化し、それらを"KANSAI”という袋に入れて打って出ていかなければなりません。ONE KANSAIで海外に。
2025年の万博を通過点として2029年頃のIR大阪開業という大きな好機に恵まれる関西では、高級ホテルの整備等の拠点都市の再開発、鉄道・交通インフラの整備等、投資も目に見えて増えています。そして神戸空港の国際化も進められます。この大きな流れに乗って、“KANSAI”を世界のデスティネーションにできるか。ONE KANSAIのチャレンジについて、このコラムを通じて、皆さんに紹介して参ります。
寄稿者:東井 芳隆
【関西観光本部 代表理事/専務理事】1983年運輸省(現国土交通省)入省。以降、航空局をはじめ港湾局、運輸政策局を経験し、1994年外務省在カナダ大使館で3年間の海外勤務。帰国後、2002年北海道運輸局企画振興部長(地域交通、観光担当)ではビジットジャパンを担当。国土交通省鉄道局業務課長、大臣官房審議官(国際、総合政策担当、観光庁併任)、気象庁次長等を歴任し、国土交通省危機管理・運輸安全政策審議官を経て、退官。民間企業を経て、2019年6月より現職。