「あべのハルカス」が開業したのは2014年3月のことだ。今では、浪速路の南、阿倍野の地のランドマークとなった。そして、開業から昨年までの10年間、その高さは、日本一を誇っていた。
この平成・令和の最先端を行く観光コンテンツのお膝元を堺市まで阪堺電車は走っている。地元では親しみを持って「チン電」と呼ばれている。開業は1900年まで遡る。徐々に延伸を続け、現在の浜寺公園まで路線が完成するのは、1912年のことだ。
さて、沿線は、全国の住吉社の総本社である「住吉大社」や「帝塚山古墳」のある住宅街を通り抜ける。専用軌道を通る場所も多い。しかし、道路の真ん中を貫く姿も頼もしい限りだ。
現在、約40両の車両が走る。しかし、統一性はなく、新旧まちまちの形だ。また、冷房が搭載されていない車両も現役で運行されている。昭和を彷彿する姿は、大阪の下町とマッチして、日々、数多くの鉄道ファンがその雄姿を観にやって来る。
一方、2013年からは、超低床連接型の新型車両「堺トラム」も運行開始した。昨今、路面電車が全国各地で、その存在意義を見直されている。阪堺電車のコーポレート・スローガン「暮らしがある。未来がある。ずっと息づく軌道がある」にもあるように、未来につながる電車であるよう、切に願いたい。

(2022.11.22.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長