「観光を学ぶ女子大生から見た日本の観光」
こんにちは。跡見学園女子大学の畠山妃菜です。前回の記事(https://tms-media.jp/posts/74379/)では、天王洲キャナルフェスを通じた都市観光の推進についてお届けしました。
第5弾となる今回は、成田国際空港とその周辺地域を訪問した際の学びをもとに、歴史や魅力、これからの成田空港について紹介致します。
跡見学園女子大学 篠原ゼミは一昨年から成田国際空港様(NAA)と連携を行い、「成田空港で働き、周辺地域暮らす(エアポートライフ)」ライフスタイルを広めるためのプロジェクトに携わっています。本記事ではそんな成田空港とその周辺地域の歴史や魅力をお伝えしていきます。
成田空港建設の歴史と三里塚
成田空港の西側に隣接する三里塚エリアは、人口約1万5千人が暮らす、空港従業員が多い空港に最も近いベットタウンです。かつてこのエリアには、宮内庁の御料牧場が広がっており、その広大な敷地を活用して成田空港の建設計画が進められました。
しかし、住民への十分な説明が行われないまま計画が進行したことで反対運動が起こり、「成田闘争」へと発展します。特に運動の中心となったのが三里塚であったことから、「三里塚闘争」とも呼ばれています。成田空港管制塔占拠事件などさまざまな事件が起こり、数名の死者も出ています。この歴史は、成田空港と周辺地域の関係を考えるうえで、今もなお重要な意味を持っており、語り継いでいくべき空港建設の事実です。
日本の空の玄関口が直面する「人手不足」の現状
観光で外貨を獲得し経済を活性化させる「観光立国」を掲げる日本において、訪日外国人の多くは航空機を利用して来日しており、成田空港は、日本の空の玄関口として重要な役割を担っています。
一方で、コロナウイルスの影響による解雇や離職により、空港では深刻な人手不足が続いています。成田空港では2029年を目標に新滑走路の建設が予定されており、現在約4万人の従業員数は、将来的に約7万人が必要になると予想されています。
なかでも、飛行機の離発着を支えるグランドハンドリング業務は、空港の運用に欠かせない重要な仕事です。しかし、客室乗務員やパイロットと比べて認知度が低いこともあり、人材不足は深刻な状況にあります。
こうした状況を受け、成田国際空港は新滑走路を有効に活用するためにも、人材確保に力を入れる方針を打ち出しています。見学会や説明会の実施に加え、一昨年春(2024年5月)※にはグランドスタッフに焦点を当てた短編映画『空の港のありがとう』も公開されました。
※2024年5月17日 成田HUMAXシネマズにて先行公開。2024年5月31日 ヒューマントラストシネマ渋谷、 京成ローザ10にて ロードショー

(https://www.narita-airport.jp/ja/discover/nrt_future/)
篠原ゼミがこの課題に向き合う理由
空港で働く従業員の多くはシフト制で勤務しており、通勤の利便性から周辺地域に住むことが前提となるケースも少なくありません。そのため、地方出身者のなかには、就職を機に見知らぬ成田空港周辺地域で暮らし始める人もいます。
こうした状況を受け、一昨年の夏、NAA様から篠原ゼミに「空港で働き、周辺で暮らす(エアポートライフ)」といを若者に知ってもらうためのモニターツアーを考案してほしいとの依頼がありました。
ゼミ生に加え、学生団体、成田空港関係者、そして空港に最も近いベットタウンの三里塚エリアの住民の方々と意見交換を重ねながら、理解を深めていきました。
現地訪問で見えてきたこと
私たちは一昨年、三回に分けて成田空港と三里塚エリアを訪問しました。
初回の訪問では、保安検査場や入場ゲート、ランプコントロールタワーなど、空港を支えるさまざまな仕事について説明を受け、現場を見学しました。バスで滑走路すぐそばの道路を走り、飛行機を間近で見た体験は、空港で働く人々の仕事を実感する貴重な機会となりました。

また、三里塚エリアでは訪問した日にお祭りがあり、住民の方々と私たち学生、そして成田空港に関係する方々と一緒に山車を引きました。資料館の見学を通じて、闘争の歴史から現在の関係に至るまで、地域と空港が歩んできた道のりへの理解も深まりました。かつて対立があった地域で、住民と空港関係者が共に山車を担ぐまでに至った背景には、計り知れない地域共生への努力と時間があったのだと感じています。
一昨年秋には「空港で働き、周辺で暮らす」ライフスタイルを伝えるツアー案をグループごとに提案しました。三里塚エリアの住民や企業の方々と相談しながら構想を練り、発表を行い、実際に1泊2日のモニターツアーも関係者内で開催されました。



成田山だけではない、空港周辺の魅力
2025年11月には、再びNAAさまからお声掛けをいただき、空港周辺地域の魅力を改めて考える機会がありました。
人材対策の一環として、「成田空港と周辺地域を知り、興味を持つ機会」を創出することを目的に、地域交通である路線バスを活用したMAP制作(AIRPORTLIFE with BUS)にも取り組みました(参考:https://narita-work.life/area/#airport-life)。
皆さんは成田空港の南東側に位置している横芝光町・芝山町をご存じでしょうか。私たちは、成田空港を発着しする地域交通のひとつである「横芝光号成田便」に乗車しました。バスの終着地にある横芝光町は、空港から約1時間で横芝光町の九十九里浜(屋形海岸)を眺められます。

屋形海岸からは、成田空港に着陸する航空機を眺められたり、町の風景のなかに空港の近くのまちであるという『ここにしかない景色』を存分に味わえました。

次に訪れた芝山町は、「はにわ」が有名な町です。町一帯は遺跡の宝庫で、かつて500基以上の古墳がありました。町のPRとして県道62号線にはにわがたくさん置かれており、バスに揺られ外を眺めているとたくさんのはにわを目にすることができました。また、芝山仁王尊では、座禅体験を行えます。航空機のエンジン音を感じながら行う「航空座禅」は、空港至近のまちならではの体験です。静寂な境内と、迫力ある航空機という、日本の歴史と「日本の空の玄関口」である国際空港へ発着する航空機が同時に視界に入る光景は、強く印象に残ります。

成田空港の人材対策と地域交通のプロモーションに取り組むNAAの経営計画部戦略企画室の渡辺万紀子様は、「成田空港周辺には、まだ十分に知られていない魅力が多くあります。空港で働く従業員の方にも、バスを利用して空港周辺の魅力を知り、『成田空港で働き、周辺地域に住まう(エアポートライフ)』の魅力を、より多くの方に知っていただければ」と話されていました。

最後に これからの成田空港と周辺地域
これまでNAAさまとの活動を1年以上させていただき、見えてきたことは「空港と地域住民は共生している」ということです。筆者は生まれも育ちも千葉県なのですが、成田空港がある成田市付近は成田山などの主要スポットしか訪れたことがありませんでした。
しかしこの活動を通して、今では成田空港、そして空港周辺地域のファンになりました。
「日本の空の玄関口」である「成田空港で働き、その周辺で暮らす(エアポートライフ)」という選択肢が、若い世代にとってより身近なものになること。今回の取り組みが、成田空港と地域の未来を考えるきっかけの一つとなれば幸いです。
次回はJTBガイアレックさま主催の『中山道ウォーキング』に参加した私たちのリポートをお届けします。お楽しみに!
寄稿者 畠山妃菜(はたけやま・ひな)跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 篠原ゼミ 3年