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訪日客4,268万人時代へ、市場の多様化と地方誘客を加速させるJNTOの戦略

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日本政府観光局(JNTO)は1月29日、メディア向けブリーフィングを開催し、訪日旅行の最新動向と、2025年に展開した主なプロモーション施策について説明した。2025年の年間訪日外国人旅行者数は4,268万人となり、前年を大きく上回って過去最高を更新。インバウンド市場は量・質ともに新たな局面を迎えている。

欧米豪・中東が牽引、市場構造は「多極化」へ

冒頭、JNTO理事の出口まきゆ氏は、訪日客数が2024年2月以降、23か月連続で同月過去最高を記録している点を強調。特に欧米豪・中東市場の伸びが顕著で、2019年比で200%を超える市場も複数見られるとした。

市場構成比を見ると、東アジア市場の比率は依然高いものの、欧米豪・中東のシェアは2019年の14%から18%へと拡大。JNTOはこれを「市場の多様化が着実に進んでいる証左」と位置づけている。

また、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円と過去最高を更新。一人当たり旅行支出も22万8,809円に達し、高付加価値化の進展が数字からも読み取れる。

地方部宿泊が回復、鍵は「小都市」

注目されるのが地方部への波及だ。JNTOの分析によると、地方部の延べ宿泊者数は2024年8月以降、2019年水準を上回って推移。特に台湾、韓国、欧米市場からの地方部宿泊が増加している。

こうした動きを後押ししているのが、日韓国交正常化60周年を契機に実施した「日本のおすすめ小都市60選」プロモーションだ。韓国市場向けに特設サイトを開設し、インフルエンサー招請や現地イベントを通じて、大都市以外の地域の魅力を訴求。結果として、地方部宿泊率・宿泊人数ともに増加につながった。

文化×観光で高付加価値市場を開拓

欧州市場では、大相撲ロンドン公演を契機とした文化プロモーションが成果を上げた。相撲の精神性や文化的背景を訴求するトークイベントやネットワーキングを実施し、旅行会社による高価格帯ツアー造成や主要紙での特集掲載につながったという。

JNTOはこうした事例を通じ、「日本ならではの文化コンテンツが、オーバーツーリズム回避や地方誘客、高付加価値化の有力なフックになる」と強調した。

広域連携で点を面へ

さらに2025年度からは、地方運輸局や広域DMOと連携した「広域連携プロモーション事業」を開始。メディアや旅行会社、インフルエンサーを招請し、地域横断での情報発信と、その後の受入体制強化までを見据えた取り組みを進めている。

出口氏は、「誘客だけで終わらせず、地域に知見を還元することが重要」と述べ、持続可能なインバウンド成長への姿勢を示した。

分散・高付加価値化はどこまで進むのか

ブリーフィング後半では、訪日客数の急増を受け、今後の課題やJNTOの重点施策について記者から質問が相次いだ。

訪日外国人旅行者数が過去最高を更新する中、オーバーツーリズムへの対応については、出口氏は、「JNTOとしては一貫して地方分散と需要の平準化を重視している」と回答。市場ごとに異なる休暇シーズンや旅行動機を踏まえたプロモーションを行うことで、特定の地域・時期への集中を避ける考えを示した。

韓国市場を中心に進めている「日本のおすすめ小都市」プロモーションについての継については、JNTO側が「小都市への関心はコロナ後に突然生まれたものではなく、2019年以前から継続して取り組んできた流れ」と説明。大都市とは異なる体験価値を求める動きは、韓国に加え欧米市場でも広がっており、地方誘客の有効な軸になるとの認識を示した。

高付加価値旅行の進展について問われると、出口氏は「欧米豪市場で顕著」と回答。文化的背景やストーリー性を重視する層に向けたプロモーションが奏功し、長期滞在や高単価ツアーの造成につながっていると説明した。

今後の重点施策については、「市場の多様化と地方誘客を同時に進めることが重要」と強調。単なる誘客にとどまらず、広域連携プロモーションなどを通じて、地域側にノウハウを残す仕組みづくりに力を入れる方針を示した。出口氏は最後に、「数を追うフェーズから、分散と価値を高めるフェーズへ移行している」と述べ、日本観光の次の成長段階を見据えた取り組みを進めていく考えを示した。

訪日客数の拡大が続く中、JNTOの戦略は量の追求から、市場の多様化、地方分散、価値創出へと軸足を移している。次の成長フェーズに向け、日本観光の構造転換が静かに進みつつある。

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