二地域居住の先進地域として注目を集める北海道厚真町に、2026年1月24日から25日にかけて、国土交通省およびANAの施策担当者が視察に訪れた。
本視察は、二地域居住施策の検討にあたり、先進地域がどのような取り組みを行っているのかを現地で確認するとともに、今後の制度設計や補助金活用の可能性、ニーズを探ることを目的としたものだ。
住まいや拠点といったハード整備の確認に加え、地域にどのような人のつながりやコミュニティが育まれているのか。
厚真町における二地域居住の「実装の現場」を多面的に捉える2日間となった。

ハード整備と、その先にある地域の受け皿
視察では、二地域居住者が実際に利用できるように整備されている「マルチハビテーション住宅」や「サテライト型のシェアオフィス」を確認した。あわせて、今後は国の制度を活用して、旧公営住宅を改修する計画も示された。こうした住まいや仕事の拠点など、二地域居住を支える施設が、段階的に整えられている状況が紹介された。


一方で、厚真町側が特に重視していたのは、制度や建物そのものではなく、そこに集う「人」や「コミュニティ」を体感してもらうことだった。
二地域居住を受け入れる土壌として、どのような関係性が地域に根づいているのか。その空気感を現場で感じてもらうことが、視察全体の軸となっていた。
居酒屋マナビィと3本引き大会が映す厚真の日常
初日の夜に案内されたのは、豊丘地区の公民館で開催された「居酒屋マナビィ」。
飲食店の少ない厚真町で、地元有志が自主的に開催している移動居酒屋で、開催時には町内外から100人以上が集まることもある。
この日も、地元住民に加え、二地域居住のモニターツアーで滞在中の町外参加者が加わり、会場は大きなにぎわいを見せていた。
思い思いに食事やお酒を楽しみ、自然と会話が生まれ、初対面同士でも無理なく打ち解けていく。
過度に近すぎず、かといってよそよそしくもない、心地よい距離感のコミュニティがそこにはあった。

翌日は、厚真町発祥のウィンタースポーツ「3本引き」の大会、「あつま国際雪上3本引き大会」を視察。
町内外から多くのチームが集まり、モニターツアー参加者と地元プレイヤーが即席チームを組んで競技に参加する姿も見られた。
競技を通じて自然と交流が生まれ、人と人との距離が縮まっていく様子が印象的だった。


視察から見えた厚真町の強みと、次のフェーズ
視察を通じて、国交省担当者からは
「厚真町には心強いプレイヤーが揃っている」
「人が面白く、程よい距離感のコミュニティができている」
といった声が聞かれた。
また、これまで行政が先導して二地域居住施策を進めてきた点を評価しつつも、
「これから事業としてドライブしていくには、民間の力が不可欠。厚真にはその担い手がすでにいる」
という指摘もあった。
今回の視察と並行して、厚真町では「デュアルステイあつま」として、二地域居住を検討する人向けのモニターツアーも実施されている。
家族連れを含む12名が全国各地から滞在し、居酒屋マナビィや3本引き大会にも参加するなど、地域の日常に自然に溶け込む形で約1週間厚真町に滞在した。

ハード整備や制度設計は、二地域居住を進める上で欠かせない要素である。
しかし、厚真町の事例が示しているのは、それ以上に「人が集い、関係が育つ土壌」が、すでに地域に存在しているという事実だ。
行政が道筋をつくり、民間や地域プレイヤーがその上で挑戦を重ねてきた結果として、今の厚真町がある。
それは、公共が基盤とルールを整え、民間の創意工夫と投資を引き出しながら地域の成長を実装していく、まさに「官民連携による成長投資」モデルにつながる進め方でもある。
二地域居住を「人を増やす施策」ではなく、「関わり続ける人を増やす実装」としてどう育てていくのか。
今回の視察は、その問いに対する一つのヒントを、現場から示す機会となった。
こうした流れの中で、厚真町では民間主導の動きとして、観光を軸に地域の価値を編集・実装していく北海道厚真DMCも本格的に動き始めている。(参考記事「北海道厚真DMCが挑む、日本一の二地域居住推進地」
行政施策と現場の実装、そして民間の推進力が重なり合うことで、厚真町の二地域居住は、次のフェーズへと進みつつある。
投稿者:今廣 佐和子(いまひろ・さわこ)北海道厚真DMC