文化庁が認定する日本遺産は現在104件ありますが、「鎮守府~横須賀・呉・佐世保・舞鶴~」は、2016年に認定された日本遺産です。明治期に軍港が設置された同じ歴史をもつ4市の近代日本の歩みを支えた物語、そして現在のまちの姿を一体として伝えるストーリーは、日本遺産にふさわしいものです。
そして、日本遺産の構成文化財の情報を軸に、4市の魅力を継続的に発信するために開設されたのが、公式Facebookページ「日本遺産 鎮守府~横須賀・呉・佐世保・舞鶴~」 です。
▶日本遺産 鎮守府~横須賀・呉・佐世保・舞鶴~
https://www.facebook.com/JapanHeritageHistoricNavalStation/
■ 旧軍港4市のFacebookページの紹介
このFacebookページは、2022年1月(令和3年度)に、日本遺産の構成文化財を軸として旧軍港4市、横須賀市、呉市、佐世保市、舞鶴市の魅力を総合的に発信し、観光誘客につなげることを目的として開設されました。旧軍港4市は、日本遺産の中で35番目に認定されましたが、制度上、認定後も継続的な情報発信活動が求められています。
開設から約48カ月(4年)が経過し、現在のフォロワーは8,500人超。平均すると月約178人のペースでフォロワーが増えてきたことになります。テーマに関心を持つ方々が、短期的なブームではなく、時間をかけて積み重なってきている点は、このページの大きな特徴と言えるでしょう。
投稿内容は、日本遺産の構成文化財に関するものを中心に、その地ならではの食やイベント、季節の風物詩など幅広く構成されています。日本遺産の基本情報だけでなく、各市の日常や現在の姿を重ねることで、「歴史」だけではなく「今も続く地域の物語」としてその魅力を伝えています。
■ Facebookユーザーとはどんな人たちか?
ここで、Facebookユーザー層について少し整理してみたいと思います。各種公開調査(総務省「情報通信白書」等)や、Meta社が提供する広告配信データからも、日本国内のFacebook利用者は30代以上の比率が高い傾向が確認できます。男女比では男性がやや高く、約55.8%が男性、約43.6%が女性という構成です。
また、総務省などが示すSNS利用率データでも、FacebookはLINEやInstagramと比べると利用率が低いものの、他のSNSと比べて年齢層が高めであり、社会的・地域情報系のコンテンツを好む層に根強い支持があるようです。時間的・経済的余裕を持つ中高年層こそ、実際に地域を訪れる可能性が高い層でもあります。
Facebookでは、一般的に、閲覧者数より閲覧数の方が多くなります。Facebookのアルゴリズムでは、ユーザーの「見ている時間が長い」など、そのコンテンツに関心があると思われる動きを察知して、時間をかけて繰り返し提示される傾向があり、中高年Facebookユーザーの「情報を今すぐ使う必要がない」「旅行はそのうち行く」「判断までの時間が長い」という行動傾向ともあってきます。旧軍港4市のFacebookでは閲覧数が閲覧者数の倍以上になるケースも見られ、同一ユーザーのタイムラインに複数回表示されている可能性も考えられます。
つまり、ユネスコの世界遺産や日本遺産といった、歴史や文化に軸を置くテーマは、「歴史的文脈がある」「一過性ではなく、長い時間軸で語れる」「現地を訪れる動機になりやすい」などの特徴があり、旧軍港4市の日本遺産ストーリーは、まさにFacebook向きの題材だと言えるでしょう。また、日本遺産は、地域型・ネットワーク型を問わず、構成文化財が複数存在するため、SNS上で連載的に発信しやすいコンテンツだということもできます。
例えば、2025年12月8日に投稿されたこの記事は、広告を運用することでフォロワー以外を含めて9,682人にリーチし、合計20,391回閲覧されています。いいね!、コメント、シェアの総数(エンゲージメント数)は1,978。対リーチ数エンゲージメント率は20.42%です。

一般的には、Facebookのリーチ数に対するエンゲージメント率の平均は、業界や調査時期によりますが、おおむね0.5%〜2%前後が目安とされています。SNS広告の専門業の中では、一般的に1%前後を目指すと聞きますので、このエンゲージメント率は一般的な指標を大きく上回る数値になります。
ご存知のように、広告費を大量に投下すれば、リーチ数を増やすことができるのがSNS広告ですので、リーチ数は「テーマとターゲット層の相性」の指標としては合っていません。相性に関してはエンゲージメント率が重要な指標になります。
■いろんな見せ方ができる地域の情報
ところで、さまざまな情報を扱う媒体社などの公式Facebookと違い、テーマや地域が固定されたFacebookページでは、紹介する情報が一巡してしまうと、記事の題材がなくなり、担当者を悩ますことが多いようです。
しかし逆に言えば、「何のFacebookページなのか」が明確であればあるほど、紹介する「人」や「切り口」を変えることで、無限に表現の幅を広げることができます。
旧軍港4市のFacebookでも、そうした考え方のもと、さまざまな見せ方を実践してきました。ここでは、その中から2つの取り組みを紹介します。
■「食」を丁寧に説明した管理栄養士たち
旧軍港4市のFacebookでは、管理栄養士が横須賀市・呉市・佐世保市・舞鶴市、それぞれの地域ならではの「食」にフォーカスした記事を制作し、投稿する取り組みを、これまで多く行ってきています。
たとえば、佐世保市の「九十九島かき」を取り上げた投稿では、地域食材としての魅力に加え、栄養面や健康面の解説が丁寧に盛り込まれています。書き手は食や栄養の専門知識を有する専門家である管理栄養士ですが、語り口は親しみやすく、「専門知識を持ちながらも、インフルエンサーではなく、“普通の人”」という立ち位置です。

また、舞鶴市の丹後ぐじ(甘鯛)は、京都・丹後地方で古くから珍重されてきた高級魚で、淡泊で繊細な旨味が特長です。身質は柔らかく、脂肪分が少ないものの不飽和脂肪酸(DHA・EPA)やビタミンB12といった栄養素を含んでおり、生活習慣病予防にも寄与することが知られています。こうした背景を丁寧に解説しながら、地域の季節食材として「ご飯 de リゾット」といったアプローチで紹介することで、単なるメニュー紹介を超えて、地域の食文化への理解を促すコンテンツになっています。

SNSで人物を起用する際、議論を重ねると「フォロワー数の多いインフルエンサーを起用した方がよい」という結論になりがちです。しかし、それは必ずしも地域ファンの獲得につながりません。
インフルエンサーが影響を与えられるのは、基本的に「インフルエンサーとそのフォロワー」という関係の中です。記事のリーチ数が増え、いいね!が集まったとしても、そのFacebookページ自体をフォローするとは限らず、むしろフォローされない方が自然でしょう。
その点、専門知識を有する「普通の管理栄養士」が解説する食の記事は、最後まで「食」そのものへの関心を保ったまま読まれます。これは、インフルエンサーの拡散力ではなく、コンテンツ自体の魅力とFacebookという媒体が持つ拡散力を適切に活用している例だと言えます。
結果として、「この人が紹介しているから読む」のではなく、「この地域の食が気になるから読む」という関係が生まれ、記事のエンゲージメントやページのフォローにつながりやすい構造になっています。
■ 構成文化財を伝えるイラストの活用
もう一つの取り組み例が、目を引く昭和タッチのイラストの活用です。日本全国の地域には、プロモーション用の写真が数多く存在しますが、長期間Facebookを運用していると、どうしても季節ごとに毎年同じ写真が繰り返し使われがちになります。
そこで旧軍港4市では、見た瞬間に「これは何だろう?」と感じさせる、少し懐かしさのある昭和タッチのイラストを描くイラストレーターに絵を描いてもらい、それを記事に使ってきました。
たとえば、佐世保市の戸尾市場は、太平洋戦争中に掘られた防空壕を活用した店舗が残り、「とんねる横丁」の名で親しまれています。戦災からの復興と人々の暮らしの記憶を今に伝える場所ですが、イラストによって賑わいや生活感が視覚的に伝わる構成になっています。

Facebookに限らずSNSではファーストビューが大事だと言われます。目を引く昭和タッチのイラストは、タイムラインで見た人のアテンションを取るのに役立ち、「もっと見る」のタップへとつながっていったと考えられます。記事本文で背景を丁寧に説明し、さらに実写真を組み合わせることで、「イラストと写真を見比べてみる」という興味までも喚起。目を引くイラストを活用して高いエンゲージメントにつながった好例だと言えるでしょう。
■ 世界遺産や日本遺産のプロモーションにはFacebookを活用しましょう!
歴史や文化、地域に根差した食や暮らし、風景といったコンテンツは、日本のSNSの中では、Facebookユーザーにもっとも響きやすい分野です。地方自治体の観光プロモーションの実行フェーズにおいては、例えばバズを狙うような取り組みは向いていません。Facebookユーザーの関心軸に合わせて、それらを丁寧に届け続け、その積み重ねの成果としてファンとしてのフォロワー増加につなげていくことが、恐らく正解であり、有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
Facebookは、その特性を理解して適正に使うことで、地域の魅力を「そのまま」伝えられる、非常に相性の良いメディア。ぜひ、活用してみてください。
寄稿者 菅原豊(すがはら・ゆたか)クロスボーダー㈱ 戦略PRプロデューサー