和歌山県の南端に位置する那智勝浦町は生マグロの水揚げ日本一、源泉数177を誇る有数の温泉地だ。ただ、多くの人は勝浦と聞くと千葉の勝浦を思い浮かべる。生マグロと温泉を堪能できる那智勝浦を訪れた。(写真は右上から、生マグロへの思いを語る仲買の木下水産物木下社長。右下はマグロの解体体験。勝浦港に水揚げされた過去最大の重量450㌔のマグロと過去最長2㍍82㌢のマグロ。)
南紀白浜空港から車で約1時間半、海岸沿いに南下すると那智勝浦町に着く。今回はお隣の串本町からカイロスロケット3号機の打ち上げ日にぶつかり、ロケットが轟音とともに上昇する場面に遭遇する幸運にも恵まれた。発射時には大きな歓声が上がったが、あいにくロケットは飛行中断になってしまった。

さて、生マグロを全国にもっと広めて、食べてもらいたいという那智勝浦町では、早朝の競りを一般公開している。訪れた日は、天候の関係で50本と少なかったが、午前7時からクロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロが水揚げされ、活発な取引が行われていた。仲買人は他のライバルに入札金額が分からないように入札札に書き込み、一発入札で競り落とすのが特徴。
ここに水揚げされるのは、延縄漁で獲ってきたマグロが大半で、冷凍ものはない。売買が成立すると、すぐに氷漬けにされ、東京、大阪、名古屋市場や全国の量販店などに出荷される。延縄漁法のマグロにこだわるのは、この漁法がマグロに与えるストレスが少なく、旨味成分が減らないためという。ほんのり甘みがあり、上品なモチモチ感がある赤身は口にするととろけるよう。家庭や飲食店で食べているマグロとは、ひと味もふた味も違ううまさだ。
勝浦魚商協同組合の代表理事組合長で、大正元年創業の木下水産物の4代目社長、木下勝之さんに生マグロにかける思いを聞いた。木下社長は那智勝浦で生まれ育って大学卒業後、築地市場で修行をした後、家業を継いだ。生マグロ一筋37年という。
「水産業界では那智勝浦が生マグロの水揚げナンバーワンであるのは知られているし、日本一の相場をつけることも有名だ。ここの仲買人はマグロの目利きのプロ集団。ただ、これは業界の話。一般の消費者にもっと生マグロのおいしさを知ってもらいたい。そのために地域と気持ちを1つにして、生マグロの消費拡大を図り、マグロを通じて観光振興を図りたい」と抱負を披露してくれた。