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DMO旅日記-観光地域づくりの視点で歩く世界-#7 地域の未来と観光の魅力を探る 「祈りと歴史、そして観光の原点を歩く」沖縄南部編 その①

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DMO旅日記として、観光地域づくりの視点で各地を歩く本連載は、三浦半島、カンボジア・シェムリアップとDMOの視点で旅をしてきました。今回からは、沖縄を舞台に、地域に息づく歴史、文化、自然、そして観光の未来について全3回にわたり考察していきます。

今回は、ひめゆりの塔、斎場御嶽、久高島と、いずれも沖縄を語るうえで欠かすことのできない沖縄本島南部を訪ねました。沖縄南部を歩いて感じたのは、観光とは単に「見る」「訪れる」だけの行為ではないということでした。その土地に残された記憶に向き合い、受け継がれてきた祈りを感じ、地域の価値を未来へつなぐ。その一連の体験こそが、観光地域づくりにおける重要な資源になるのだと感じています。

糸満市・ひめゆりの塔の入口
糸満市・ひめゆりの塔の入口

平和を学ぶことから始まる旅

沖縄南部の旅は、糸満市のひめゆりの塔から始まりました。ひめゆりの塔は、1945年の沖縄戦で亡くなった沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒や教師のための慰霊碑であり、沖縄戦の翌年に建てられました。隣接するひめゆり平和祈念資料館は、ひめゆり学徒隊の沖縄戦体験を伝える平和ミュージアムとして位置づけられています。

ここでの体験は、一般的な旅で得られる気持ちの高まりとは異なります。静かに足を止め、資料を読み、証言に触れ、過去に起きた出来事を自分の中で受け止める時間となります。地域が背負ってきた歴史を次世代に伝えるための場であり、訪問者が平和の意味を考えるための入口です。観光において重要なことは、その場所で何を感じ、何を学び、どのような意識の変化を持ち帰るのか。ひめゆりの塔での体験は、「学び」から「継承」へとつなげていくことを示唆していました。

南城市・斎場御嶽の入口
南城市・斎場御嶽の入口

聖地としての斎場御嶽

次に訪れたのは、斎場御嶽(せーふぁうたき)です。斎場御嶽は、琉球開闢伝説にもあらわれる琉球王国最高の聖地とされ、琉球国王や聞得大君の聖地巡拝の行事を今に伝える「東御廻り」の参拝地としても崇拝されてきました。また、2000年には「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして世界遺産リストに登録されています。

御嶽へ向かう道を歩いていると、観光地に来たというより、祈りの場に入っていく感覚があります。木々に囲まれた参道、石畳、岩の間を抜ける空間。その一つひとつが、琉球の精神文化を今に伝えています。しかし、聖地であるからこそ、観光地としての扱いには慎重さが求められます。斎場御嶽の公式サイトでも、神聖な祈りの場所であることや、服装、歩行、自然物の持ち出しなどに関する来訪時の配慮が示されています。

DMOの視点では、ここに「文化遺産の保全」と「来訪者満足度」の両立という大きなテーマがあります。訪問者にとって分かりやすい案内や解説を整えることは必要です。一方で、過度な演出や消費的な見せ方によって、聖地としての本質が損なわれてはなりません。観光地として多くの人を受け入れることと、祈りの場として守り続けること。その緊張関係の中に、沖縄南部の観光地域づくりの難しさと可能性があります。

聖地斎場御嶽から望む神の島久高島
聖地斎場御嶽から望む神の島久高島

久高島へつながる琉球の物語

斎場御嶽を訪れると、自然とその先にある久高島の存在が意識されます。久高島は、琉球王国時代から数々の神事が行われてきた島であり、「神の島」と呼ばれています。斎場御嶽の説明でも、琉球王国時代の国家的な祭事において、聖なる白砂が久高島から運び入れられたことが紹介されています。

この二つの場所をつなげて考えると、沖縄南部の観光は単なるスポット巡りではなくなります。斎場御嶽で祈りの空間に触れ、久高島で琉球の精神文化の深層を感じる。そこには、点ではなく線で地域を理解する体験があります。

沖縄固有の琉球文化は、海やリゾートだけでは語り尽くせない深い魅力を持っています。

聖地、神話、王国の歴史、祈りの文化。それらを丁寧に結び直すことで、訪問者の心と知性を豊かにする「質の高い観光」へと発展させることができます。DMOに求められるのは、地域に残る文化や歴史を読み解き、それぞれの場所が持つ意味をストーリーとして編集し、来訪者に伝わる形で設計することです。

知念安座真港と久高島を結ぶフェリー
知念安座真港と久高島を結ぶフェリー

「質」の観光とは何か

沖縄観光というと、美しい海、リゾートホテル、食、エンターテインメントを思い浮かべる人も多いかもしれません。もちろん、それらは沖縄の大きな魅力です。しかし、沖縄南部を歩くと、それだけではない観光の価値が見えてきます。ひめゆりの塔では、戦争の記憶と平和への祈りに向き合います。斎場御嶽では、琉球王国から続く祈りの文化を感じます。久高島では、島の暮らしと信仰が今も結びついていることを実感します。

これらの場所に共通しているのは、訪問者に「考える時間」を与えることです。写真を撮る観光ではなく、地域の背景を知り、自分自身の感覚と結びつける。そこには、これまでとは異なる角度から沖縄に触れる「質の高い観光」があるように思います。地域の文化を尊重し、その成り立ちを理解し、訪問者自身の学びや気づきにつなげる観光です。

沖縄南部の旅は、観光の原点を考える時間でもありました。観光は、地域の魅力を外から来た人に届ける営みです。しかし同時に、地域の記憶や文化を守り、次の世代へつないでいく営みでもあります。学び、祈り、文化を継承する。この流れが、地域の本質に触れる「質の高い観光」につながります。

この旅の第一歩は、「何を見せるか」ではなく、「何を守り、どう伝えるか」を考える機会となりました。観光が、地域の記憶を未来へつなぐ力になることを、静かに、そして深く教えてくれる場所でした。

※サムネイルは、国営沖縄記念公園から望むオーシャンビュー

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長

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