昔、焼き物に興味を持っていた頃、大分県日田市の小鹿田焼(おんたやき)の里を訪ねたことがある。山あいの集落に近づいていくと、どこからともなく「トーン、トン」と、素朴で心地よい音が聞こえてきた。水の力で唐臼を動かし、焼き物に使う陶土を砕く音だった。村に近づくにつれて、その響きが少しずつ大きくなっていくのが印象に残っている。唐臼は、かつて日本各地で使われていたというが、今ではその姿を見ることも少なくなった。水の流れと木の道具が生み出すゆったりとしたリズムには、昔の暮らしの時間がそのまま残っているように感じられた。
民藝運動を牽引した柳宗悦が、バーナード・リーチらとともにこの地を訪ねたことがあると知り、小鹿田焼への興味はいっそう深まった。焼き物だけでなく、水の音、唐臼の響き、山里の風景までが一つになって、今も懐かしい記憶として残っている。